2024.7 臨時号NO.211  アッタ  VSアッタ 
 2024年度の米女子プロゴルフツアー(以下「米女子ツアー」)では、昨季鳴りを潜めていた女王たちが、今季初戦から逆襲している。開幕戦はリディア・コ選手、2戦目はネリ―・コルダ選手が優勝した。
 ネリー選手は6、7戦目も勝ち、世界ランク1位に返り咲いている。さらに、4月初めのマッチープレーでも勝ち、余勢を駆ってメジャー初戦も制し出場試合5連続優勝を成し遂げた。早くもネリー1強の様相を呈している。ただ、大本命で迎えた世界最高峰の全米女子オープンでまさかの初日+10で予選落ち。五輪金メダルは東京五輪で獲得済。全米女子オープン制覇が女王の最大のモチベーションとなるに違いない。
 昨季2023年度は、長らく韓国勢に席巻されてきた米女子ツアーにおいて米国勢が復権を果たしたと言える。国別の(複数)勝利数を挙げると、米国11勝、韓国4勝、仏国4勝(セリーヌ・ビュティエ選手一人)、泰国3勝、豪国3勝、中国2勝で、米国が圧倒する。
 初優勝者を見ても、12人の内7人が米国勢。早い順に、リリア・ブ選手(4勝)、ローズ・チャン(ザングとも)選手、アリセン・コープス選手、エリザベス・ゾコル選手(ペア戦)、アレクサ・パノ選手、メーガン・カン選手、エンジェル・イン選手(ペア戦で上記ゾコル選手と組んだシャイアン・ナイト選手以外、ネリ―・コルダ選手を初め既優勝者の優勝はなかった)。
 年代別に優勝者を見ると、「30歳以上」2人、「30歳未満25歳以上」16人、「25歳未満20歳以上」7人、「20歳未満」2人(19歳)。女子プロは25歳からが旬期と言えるが、「20歳未満」も後半から優勝者が増えてきた。
 今季2024年度も、30歳代は、全英チャンピオンのポポフ選手が産休明けで復帰したが、現役最多メジャーチャンピオンの朴仁妃選手は引き続き産休。ビュティエ選手やチョン・インジ選手も30代に入ってくる。来年30歳になるレキシー・トンプソン選手は今季限りで引退を公表した。

 今季既に消化した15試合のうち優勝は20代後半12回(7人)、20代前半3回(3人)。20代後半選手に20代前半選手がどれだけ食い込むかというところか。

 私にとって孫のような2001年生まれの新世紀世代の優勝ヒロインを年上順にみると、「長女」にあたる2001年生まれのヒロインは2人いる。一人は後述笹生優花選手(2001.6.20生まれ)。二人目は韓国のユ・ヘラン選手(2001.3.23生まれ)。2022年晩秋プロテストをトップ合格し、翌ルーキー・オブ・ザイアー・レースを期初から独走の上栄冠。
 「次女」にあたる2002年生まれとしては、中国のイン・ルオニン選手(2002.9.28生まれ)。前季2勝を挙げその内1勝はメジャーの全米女子プロ選手権で、世界ランク1位にも輝き。引退したフォン・シャンシャンの後継者となった。
 三女の2003年生れは、二人いる。一人は後述天才アッタヤ・ティティクン(ンはルとも)選手(2003.2.20生まれ)。もうひとりはローズ・チャン選手(2003.5.24生まれ)。アマチュア世界ランク1位141週の実績をひっさげプロデビューしたトーナメントで優勝。72年振りの快挙。ローズ選手の身長は、レジェンドのソレンタム選手、オチョア選手、カリー・ウエブ選手、朴仁妃選手らと同じ168㎝。今季も5月のファウンダーズカップを制した。勝負強く、勝ち方を知っている。本物だ。レジェンドの仲間入りする活躍が期待される。
 4女の2004年生れも二人いる。一人は後述アレクサ・パノ選手(2004.8.20生まれ)。もう一人は、タイのチャネティ・ワナセン選手(2004.4.16生まれ)。4か月後に生まれたアレクサ選手に先を越されたが、8月末からのポートランドクラシックで初優勝。キャディを務めたのが、アレクサ選手が11歳で日本の2016年ヨネックスレディス出場(最下位で予選落ち)したときに優勝したポラニ・チュティチャイプロ。何かしら縁を感じる。
 この新世紀世代の優勝者の中で、私は下記3名をファンとして応援している。
 一番手は笹生選手。本ブログを載せるべく「2021年史上最年少19歳11ヶ月17日(2008年優勝した朴仁妃選手と同じ) で
全米女子オープンを制する。その後まだ未勝利ながら、前季2023年度は賞金ランク9位で1,822千ドル(145円換算で2億6千万円)を稼いでいる。高額なメジャーの全米女子プロ2位とエビアン選手権3位に入ったのが大きい。笹生選手は飛距離と深いラフももろともしないパワーがとくにすぐれており、2度目のメジャー制覇も近い」と下書きしていた。が、なんと今年の全米女子オープンに優勝した。優勝賞金は別格の2,400,000ドル(3億7千百万円)。ネリー選手が今季6度の優勝で得た賞金2,550,000ドルと変わらない(賞金ランク50位の笹生選手はいきなり2位にジャンプアップした)。
 ひと昔ダボを叩いてはメジャーには勝てないと言われたが、笹生選手は初回も今回も最終日にダボを叩くも粘り強く戦い抜いた。今回3日目17番のグリーン横のバンカー越えラフからのロブショット、最終日16番のパー4のミドルでワンオンせたティーショットなど、そんな神業的な技術面だけではなく、精神面も大人になったと解説の岡本綾子さんが評していた。
 世界最高峰の大会で3年後最年少(22歳)2度目優勝者として名を刻むこととなった(現役選手で全米女子オープンを2度優勝したのは2013年にも勝った朴仁妃選手と2人だけ)。

  女王のネリー選手、ビュティエ選手、チョン・インジ選手、ミンジー・リー選手、渋野選手など一流選手が彼女の実力と性格を認め、妹のように可愛がる。我ら直接の接点のないゴルフファンの評価もこれを機に笹生選手の真価にようやく追いつくのだろう。

 笹生選手が優勝争いでブーイングされてるかと思ったら名前の優花からの「ユ・・・・!」という声援だった(ジョーダン・スピース選手が優勝した2017年の全英オープンでも2位となったマット・クーチャー選手がブーイングされるとの騒動が起きた。声援の「クゥ・・・・・イ!」が勘違いされた)。米ツアーでの笹生選手の人気は我々が想像している以上に高い。
 なお、2位には渋野日向子選手が入った。渋野選手もメジャーに強い。勝った全英女子オープンと全米女子オープンには優勝争いできる。メジャー以外はよく予選落ちするのに。天性を感じさせるその不思議さは我々凡人の理解を超える。
 他の日本選手も上位に食い込んだ結果、高額賞金に加え円安下、出場しなかった日本選手たちも私もやれると思い米女子ツアーに参戦する選手がさらに増えるのでは。逆に日本にスポットでも参戦する外国選手がますますいなくなり、日本女子ツアーはますますガラパゴス化するとともに米女子ツアーの二部ツアーとなってしまう。 
 渋野選手の日本女子ツアーへの復帰が遠のいたと見られるが(本人から技術的な説明があれば復活を実感できるのだが)、私自身は本人のみならず日本女子ツアーの為人気の高い渋野選手が仲の良い(全米女子オープンチャンピオンながら不振の)イジョンウン6選手を連れて日本女子ツアーに戻り、力を発揮するメジャーだけ海外参戦すればと思うのだが(渋野選手のメジャー優勝も笹生選手のメジャー初優勝も、米女子ツアーで揉まれて得たものでなく、日本からスポット参戦して勝ちとったもの)。
 韓国選手なのに勝った笹生選手を18番グリーンそばで真っ先に出迎え、控室では自らを憧れの存在と慕ってくれる西村優菜選手と一緒に笹生選手に水掛けした、チョン・インジ選手も日本人ファンも多くぜひ日本女子ツアーへ。

 JLPGA(以下「協会」)はQTへの参戦をプロテスト合格者に限定にしたが、それは改悪と言える。海外の選手、とくに韓国強豪選手の参戦を阻止し、日本の若手が台頭する機会も阻害している(協会は、ファンが日本人同士で優勝争いしているのを喜んでいるから、何の問題もないと思っているのであろうか。協会主催問題もありファンより先にスポンサー企業が離れて行きそうな雲行でもあるが)。
 ファンとしての2番手は、アッタヤ選手。昨年2/1にアップした2023年3月号NO.186「かつみなみVSかつみこみ」)にて、アッタヤ選手と笹生選手が昨年(日本時間)9/24~26に開催されたアーカンソー選手権で優勝を争った時「私は両者ともファンであるが、直接対決なら日本人笹生選手を応援する」と書いている。 
 昨年19歳で世界ランク1位となった(現在11位)。10月末のマレーシアの新規トーナメントにてビュティエ選手とのすごいショットの競演となったプレーオフで敗れた。アッタヤ選手は、優勝争い、ブーレオフでも笑いリラックスして本来の実力を発揮できる。天才といえ、ほほ笑みの国タイの選手といえども他にはいない。脳科学者中野信子女史によれば「日本人は世界で最も『不安遺伝子』を持つ民族」らしい。緊張してしまう日本人の国民性からすればマネは出来ない。苦節の時を経て前季花開いたビュティエ選手の試合でのポーカーフェイスを学ぶべきだろう。
 米ツアーでは、昨季優勝はなかったが、アッタヤ選手は前々季1位と同様前季もベストテン(内)回数が13回と1位(2位は9回)。初日出遅れても最終日にはベストテン内に上がってくる修正力、安定感は群を抜く。それで、平均スコア(69.533)も全体1位となり、メジャー勝利、年間女王と並んでプロが目標とするベアトロフィーという勲章も手に入れた。
  今季アッタヤ選手は、開幕から8戦出場がなく心配されたが、左手首付け根の故障からの復帰戦となるメジャー開幕戦シェブロン選手権で3日目に11アンダーでトップに立った直後雷雨で中断。まさに水を差された。直ぐの再開があったらと思うが、最終日残りの6ホール併せ24ホールを回ることになり、+7も叩いてしまい優勝を逃した。復帰明けではメジャー勝利はきつかったか。
 最後はアレクサ選手。2011年からの「USキッズ世界選手権」4連覇ほか、米国で同世代の女子ジュニアタイトルを総ナメにしており、子供の頃から世界に名を馳せ、11歳で日本にも来日している。
 プロデビューした前季はアレクサ選手は予選落ちが多く苦しんだ。Amazonのアレクサは指示されたことは何でもすぐできるが、人間のアレクサ選手は、そんな訳にはいかない。が、友人からの誕生日優勝を求められ、19歳の誕生日にそれを果たした。
 日本が好きなのだが、スケジュールがタイトになる為昨年の日米両ツアー共同開催のTOTOジャパンクラシック(以下TOTO)は出場できなかった。今季TOTOの後はハワイで試合があり移動が楽なので、アッタヤ選手とともにアレクサ選手も出場してくれるだろう。私が好きな女優アナ・デ・アルマスさん似の美人でもあり、私が贔屓する選手となった。
 日本も若手の成長が著しいが、世界の新世紀世代の天才ゴルフ少女たちがその名に恥じず頭角を現してきている。

 今年の8月(7日~10日)にはパリ五輪女子ゴルフがある。ゴルフ競技の出場資格は今(6/20)深夜から始まるKPMG全米女子プロ選手権(以下「全米女子プロ」) 終了時点の世界ランクに基づく五輪ランク(直前の13週の成績がより重視される。各国2名、15位以内なら4名まで)で決まる。
 日本は、4番手で出場が危ぶまれていた笹生選手が全米女子オープン優勝により決まったのも同然(世界ランク6位。4.70ポイント。今週のメジャーで他の日本人が優勝して抜かれても2番手は確保できるし15位からはみ出ることもない)。

 あと1人は、3人での僅差の大混戦。2番手と下がった畑岡選手が全米女子オープンの翌試合で競技委員がいたのにタイムオーバーで翌日失格とされた試合で3番手の古江彩佳選手が2位タイとなり、逆転。現在古江選手20位(3.44ポイント)、畑岡選手21位(3.38ポイント)となる。
 今季が始まる前においては、2番手争いは現4番手(22位、3.31ポイント)山下美夢有選手が有利と思われたが、今季日本で1勝もないのはやや誤算か(13戦で2位が4回。平均ストロークも69.8。優勝3回の竹田麗央選手69.5に次いで2位)。

 前回の東京五輪では古江選手を逆転した稲見萌寧選手が出場し銀メダルに輝いた。今回古江選手が一番思い入れが強いのであろうが、果たしてこのまま逃げ切れるか。
 5大メジャーに目を向けると、前季米国勢が3勝(リリア・ブ選手:シェブロン選手権、全英女子オープン、コープス選手:全米女子オープン)している。韓国勢のメジャー優勝はない。今季はネリー選手と笹生選手が優勝。メジャー大会であれば、笹生選手は女王ネリー選手に対抗できる。
 全英女子オープンがメジャー入りした2001年からのメジャーチャンピオンを見ると、60数名の既メジャーチャンピオンの中、「160㎝未満」でのメジャーチャンピオンは2人しかいない。それも全英女子オープンだけ。158㎝の韓国張晶選手(2005年)、155㎝の同申ジエ選手(2008、2012)。申ジエ選手は史上最低身長、いわゆる「最小」のメジャーチャンピオンして君臨する。
 160㎝未満でもっともメジャーチャンピオンに近いと言えるのは、158㎝の畑岡奈紗選手。過去2018年全米女子プロでプレーオフで敗退。2021年全米女子オープンで笹生優花選手とプレーオフで惜敗。前季2023年の全米女子オープン(4位)、エビアン選手権(3位)とあと一歩だった。
 畑岡選手に必要なのはあと2㎝の身長ではなく、メンタル面の改善だろう。昨季メジャー2試合で最終日最終組で戦ったが、全米女子オープンの覇者アリセン・コープス選手もエビアン選手権覇者ビュティエ選手も、よいショットも悪いショットも顔色を一つ変えない。ポーカーフェイスだ。畑岡さんは、顔に出る、口に出る。渋野日向子選手や西村優菜選手にも同じことが言えるが。
 男子の松山英樹選手もサンデーバックナインで優勝を意識した緊張からか崩れていくことを散見されたが、それを克服してマスターズで優勝した。レジェンドのカリー・ウエブさんも好意的に「優勝に固執せず一打一打に集中して」と畑岡選手のメンタル面の成長を課題に挙げる。
 畑岡選手は25歳になった。前季メジャーを制したリリア・ブ選手もコープス選手も25歳。なかなかメジャーに勝てなかったミンジ―・リー選手も初のメジャー優勝のエビアン選手権に勝ったのは25歳の時。旬はこれからだ。焦ることはない。

 それにしても、最近の日本の女子プロで、優勝争いの常連は、背が高くないプロが多くないか。畑岡選手以外にも、古江彩佳選手(153㎝)、山下美夢有(150㎝)、勝みなみ選手(157㎝)、西郷真央選手(158㎝)、西村優菜選手(150㎝)など。新人では、昨秋のプロテストで1位合格した清本美波選手も153㎝。政田夢乃選手も可愛いと人気急上昇だが154㎝。もっとも、同2位の馬場咲希選手は175㎝もあるが。
 史上初のジュニアゴルフ世界4大メジャーのグランドスラムを達成した天才ゴルフ少女須藤弥勒(12歳)さんはやっと150㎝を超えたという。何とか160㎝台に乗せてもらいたいものだ。
 隣国韓国は、全米女子オープンチャンピオンの、チョン・インジ選手、キム・アリム選手が175㎝、イ・ジョンウン6選手は171㎝。昨季ルーキー・オブ・ザイアーに輝いたユ・ヘラン選手も175㎝。BMW女子選手権2022で優勝争いした、アマで“国家代表エース”と目されるキム・ミンソル選手は178㎝(この6/18で18歳となりプロ転向の予定)。2023年同大会ではアマで15歳のパク・ソジンさん(身長?)は280ヤードのドライバーを放っている。
 日本女子の公式戦「サロンパスカップ」では7打差を逆転して、勝みなみ選手の記録を更新し、JLPGA史上最年少(15歳176日) 優勝したリ・ヒョソンさんは164㎝ながら最終ホールを2打目235ヤードを2オンさせイーグルを決めている。

 最近メジャーの優勝者が出ていない。今全米女子オープンでベスト10にすら韓国選手が1人も入っていない。

 韓国勢の凋落と見る向きがあるが、そうではなく世代交代の挟間と見るべきではないか。
 昨年10/10付けのmanekatsu.comの情報によれば、日本女性の平均身長は158.6㎝で韓国女性163.3㎝、中国女性160.6㎝と北欧に比べて低いアジアの中でも低い。
 ゴルフに限らず、人気若手女優を見ても、1980年代後半に生まれた、北川景子さん(1986年8月生まれ)は160㎝、長澤まさみさん(1987年6月生まれ)は168㎝、佐々木希さんは(1988年2月生まれ)も168㎝、新垣結衣さん(1988年6月生まれ)は169㎝。
 それに対して、10年前後あとに生まれたZ世代では、伊藤沙莉さん(1994年5月生まれ)は151㎝、今田美桜さん(1997年3月生まれ)は157㎝、杉咲花さん(1997年3月生まれ)は153㎝、広瀬すずさん(1998年6月生まれ)は158㎝、橋本環奈さん(1999年2月生まれ)は152㎝、浜辺美波さん(2000年8月生まれ)は156㎝、福本莉子さん(2000年11月生まれ)は156㎝、森七菜さん(2001年8月生まれ)は154㎝。

 もちろん165㎝の広瀬アリスさん(1994年12月生まれ)もいるが。そのアリスさんが「女子全員が欲しい骨格を持ってる人。スタイル最強な人」と称賛するのが同じく女優の森カンナさんで奇しくもゴルフのレジェンドと同じ168㎝。
 100年以上前に生まれた故原節子は165㎝。今より食料事情がよくない80年前に生を受けた故星由里子も164㎝、同世代でご健在の、岸恵子さん、司葉子さん、小山明子さんも160㎝以上だというのに。
 最近日本女性の平均身長が伸び悩んでいるという。ダイエットが影響しているとの意見もあるが、世界の男達からのNO.1としての日本女性への評価に影響しないだろうとはいえ、国として対策するか検討する必要があるのではないか(韓国・李御寧氏の『「縮み」志向の日本人』はベストセラーになったが、文化・社会面であって肉体面での話ではないのだが)。
 (次回212号は7/10アップ予定)