2012.10 NO.16 アントキノイノチ と アントキノイノキ
アントキノイノチは、歌手で、作曲家で、作詞家で、しかも作家という天才さだまさしさんが書いた小説である。遺品整理業を題材とし、昨年映画化された。題名のアントキノイノチは偶然ではない。主人公の二人が海に向かって元気ですか!?と叫んでいる。アントニオ猪木→アントキの猪木→アントキノイノチとつながる。
さださんがフォークデュオ「グレープ」としてデビューし最初に出したシングル『雪の朝』は昭和48年銀行に入行して初めて給料で買ったレコード(ちなみにLPでは井上陽水さんの『氷の世界』)。私は好きだったのだが、あまり売れなかったらしい。
2時間ぐらい続けて歌えるほどレパートリーが増えた現在と違い、30歳から50歳までの私は、宴会では『無縁坂』1曲でほぼ切り抜けてきた。たいへんお世話になった。
『精霊流し』とか哀調のある歌のほうが、ユーモアのある『関白宣言』などより私は好きだ。某裁判官が極めて異例だが歌の題名を挙げて被告を諭したことで話題を呼んだ『償い』はとても素人では唄えない。初めて聞いた時のアントキノオノノキは尋常ではなかった。
アントニオ猪木さん(190cm)をものまねする芸人には、春一番さん、アントニオ小猪木さんなど数多くいるが、アントキの猪木さんは背も高く(183cm)、見た目では私は一番似ているのではと思う。
アントキの猪木さんは芸人になる前公務員だったことは有名な話だ。千代田町役場(現かすみがうら市)に勤めていた。役場を辞めて芸人になると親御さんに告げたときはさぞかし親御さんも心配したに違いない。
脱サラするためには今の給料の3倍の収入が見込めないと失敗すると言われる。
人気商売のアナウンサーも局アナからフリーになる場合もリスクを負う。女子アナでは大きく収入を減らした人もいるとか。
自営業になった場合、年金も厚生年金から国民年金に変わり、国民年金だけでは最高でも月7万円にも満たない。老後まで考えて転職する人はまずいない。若くして脱サラし蕎麦屋などなにをするのも勝手だが、絶対に成功しないと惨めな老後が待っている。
アントキの猪木さんは、明治記念館で結婚披露宴を行ったとき1,750万円も費用をかけたとTVに出ていた。芸能人としての見得もあろうが、転身が成功したと言えるだろう。
大企業でくすぶり、中小企業に転職する人もいる。大企業で我慢、我慢の人生を送らざるを得ないとしても居座り続ければ、老後は企業年金もある3階建ての年金生活。家庭も平穏だ(世の奥方たちは変化を嫌う)。中小企業なら年金は大企業のようには期待できないので、頑張って出世して自分で貯蓄を増やし、老後資金を蓄えるのが正解だ。
43歳での私自身の転職は、収入面から見れば成功したとは言えない。もっとも、転職の目的は、もうひと花咲かせたいということではなかった。井の中の蛙として足掻くより、広く公益に資する仕事がしてみたい。自身調査はできないとしてもアカデミックな世界に身を置いてみたいということであった。銀行員では無縁の人たちと会うことも出来てよかったと思っている。ただ、銀行員と結婚し生涯楽チンと思っていた妻は、兼業主婦に変更を余儀なくされ、いい迷惑だと思っている。
身勝手な亭主は、職業人生からリタイアするときはどんな目に遭うだろうか?
財産があれば、退職祝にと離婚届をもらうかもしれない。蓄えもなく、年金もさほど期待できない亭主を持つ妻は何を考えるか? そして、その亭主はどんな運命を辿るのであろうか?
話を分かりやすく、夫婦は同い年とする。仮に65歳から貰える年金が夫は月16万円(老齢厚生年金10万円、老齢基礎年金6万円)、妻は月8万円(老齢厚生年金2.5万円、老齢基礎年金5.5万円)とする。
毎日呪いをかけて夫が首尾よく早く逝った場合、妻は自身の年金を選択するとか3つの選択肢があるが、当然一番多い方法を選択する。その場合の遺族年金は13万円(夫の老齢厚生年金10万円×0.75+妻の老齢基礎年金5.5万円)となる。
死ぬまで待てないと熟年離婚を選択した場合、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録の夫婦の合計(夫婦それぞれの標準報酬の総額)を算出し、標準報酬総額の多い方から少ない方へ移される。分りづらいが結局のところ妻の取り分は夫婦合算の年金24万円の半分12万円にも満たないかもしれない。遺族年金の権利も当然なくなる。それなら離婚するより死んでもらった方がましということになる(自営業のみの夫と結婚した妻は、夫は国民年金だけなので、離婚しても一銭も貰えない)。
一番良い方法は、別れないで夫婦合算の24万円を一人占めすることだと妻は気がつく。
生かさず殺さず夫を座敷牢のごとく蟄居させる。夫が文句の一つでも言おうものなら、子供達を味方につけた妻から「アンタも遺品整理業の方のお世話になりたいの!?」と脅される。
かくして、粗大ゴミ寸前の夫は、ひとり寂しく窓から叫ぶ。「元気ですかぁ~!?」