ことばの物語
<己ーおのれ・つちのと・キ・コ>
「巳=み」は上につき、「己=おのれ・つちのと」
下につき(己)、「已=すでに・のみ」半ばなりけり。
と覚えるといいそうです。
己の欲せざる所は人に施すこと勿(なか)れ
これは、論語の中にある言葉。
孔子の弟子の子貢が尋ねます。
「何か一言で一生涯守るに足るようなことばはない
でしょうか。」
孔子は答えます、
「それは思いやりという言葉ではないだろうか。
自分が人にしてもらいたくないことは、人にも仕
向けないようにしなけなければいけない。」と。
同じような言葉が、新約聖書のルカ伝にも有ります。
「人々にして欲しいとあなた方の望むことを、人々
にもその通りにせよ。」
微妙に違ってますが。
洋の東西における考え方の違いが、ここにもあるそ
うです。
いずれにしても、いい人間でありたいものです。
第一の辞書
<「己」は、人のひざまずく形に似た三本の線の平
行線を持ち、
その両端に糸を巻き中の横線を支点とする糸巻の
象形。
紀の原字で、糸筋を分ける器具の意味を表したが、
借りて、おのれ、つちのとの意味を表す。>
何とも、説明が厄介ですね。ようは、糸巻の象形なん
ですね。
第二の辞書
<「己」は、古代の土器の模様の一部で、屈曲して
目立つ目印の形を描いたもの。はっきりと注意をよ
びおこす意を含む。
人から呼ばれてはっと起立する者の意から、おのを
意味することになった。>
なんとも、想像力豊かですね。土器の模様から「おの
れ」を導き出すのに苦労の跡が見えますね。
もう一つの字典によると、
「成り立ちには諸説あるが、糸を巻き取る道具をさ
すとする説が優勢。
自分を意味する言葉と発音が似ていたところから。」
まさしくこれですね。特に意味深いものが隠されて
いるわけではなさそうですね。
カタカナの「コ」、ひらがなの「こ」の元字であり
ます。
【成句】
己達せんと欲して人を達せしむ
自分が望みを達しようと思うなら、先に他人の望み
を達せさせるように。
(論語)
己の長を伐(ほこ)らず
他人を貶めて自分の能力を誇るようなことはしては
なりません。
己を知って他を知らぬ
自分の狭い見聞のみで、物事を判断して、世間に対
して広い視野を持たないことの例え。
己を官(す)てて人に従う
たとえそれが子供であっても、良い所があおれば従
うべきですね。
己を以て人を量る
人間という者は自分を基準にして他人の考えや力量を
おしはかるものだ。
己を忘れて人を恨む
我が身の過失や欠点は反省せず、すべて他人のせい
にして逆恨みする。
還暦を過ぎた己が有ります。
手元に同年出版の岩波文庫『エリア随筆』があります。
紙面の1センチ四方は、蝋燭の火でであぶったような
酸化した茶色の縁が侵食してきています。
表面はガサガサで、もろくなってきていて、文字もか
すみ始めています。これが今の己の姿の象徴でもあ
ります。
価格は160円。現在は700円程度でしょうか。
ちなみに、昔の岩波は背表紙の星の数で、価格がわか
りました。
今日一日 幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
2015.1掲載再考
