ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖刮目〗
かつもく
士別れて三日ならば則ち刮目して相待つべし
士である者は別れて三日たったならば、
必ず進歩しているから、目をこすって
見直さなければならない。
「刮目」は目をこすってよく見ることで、先入観を捨て
て新しい目で相手を見直さなければならないというこ
とであります。
刮目して之を視るともいいます。
<『三国志ー呉書(呂蒙伝)』にあるお話し。
後漢末、有能で名が知れた武将・呂蒙は努力家で
あったが、家が貧しく学問に触れる機会がなかった。
出世しても、自分で書類を作成することができず、
部下に口述して書類を作成していました。それを
からかって仲間は「阿蒙(もうちゃん)」と呼んで、から
からかっていました。これを見かねた孫権が学問を
すすめ、呂蒙は努力を重ね見違えるようになりまし
た。昔なじみの武将・魯粛がその教養に驚くと、
それにこたえていてった言葉が、これであります。>
書は以って姓名を記するに足るのみ
これは項羽の言葉で、学問をするよりも兵法を覚える
が英雄になる道だと。
呂蒙も若いころはこのような考えであったのかもしれ
ませんね。強いだけの英雄は一時的には尊敬されて
も、治世の英雄にはなれないものでありますね。
≪仏教語≫
〖油断〗
ゆだん
「油断」というと、気をゆるして注意を怠ること。
不注意ということですが、これがなぜ「油断」と書く
のでしょうか?
数説ありました。
<代表格は仏典『涅槃経』にあるお話し。
インドの王が油の入った鉢を持ち運ぶ家臣に
「一滴でもこぼしたら、首を刎ねる」といって、別の
家臣に刀を持たせ、後ろにつけて歩かせたと。
仏典ですから、これが意味することは、このように
気を緩めることなく本尊の常夜灯を絶やしてはなら
ないということでありますね。現在も、数百年以上
にわたり燈明をつけ続けている寺があるそうです。>
[他説]
・「寛(ゆた)に」の音転で、「ゆたに」は古語で「ゆった
り・のんびり」の意味だそうです。
・行燈などの油の準備を怠って、夜間に油が切れて
敵に襲われ命をおとしたところから。
いずれの説も疑わしいとのことですが、
油断大敵落とし穴であることには間違いありませんね。
油断は慣れてきたころに起るものであります。
≪漢字の勉強≫
刮ーけずる・こする・カツ
「舌=えぐる」に「刂=かたな」で、刀でかきとるの意。
油ーあぶら・エ
「氵=水・液体」に「由=底の深い壺」で、深い壺の中から
ゆったり出る液体、あぶらの意味。
「油」は液体のあぶらで、「脂」は個体のあぶらで、
たとえとして用いる場合は、多く脂を用いる。
(脂がのってきた・脂っこい性格など)
断ーたつ・ダン
旧字は齭。
「つながる糸」に「斤=おの」で、つながりをたつ意味。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
