ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖折檻〗せっかん
叩いたり、つねったりの体罰を与えること言います
が、これは日本語の「せがみ」を「折檻(せっかん)」と
誤用したものであります。
※「せがみ」は責める、しかるということ。
「せがむ」というと、ねだるということですね。
漢字そのものは「欄干を折る」ということですが、これ
が「厳しく意見すること」という意味になったのは、次
の故事によるものであります。
<中国の前漢の成帝の時、張禹(ちょうう)という教導
する役の者が皇帝の非を正すどころか、こびへつらっ
て皇帝の寵愛を受け権勢をほしいままにしていました。
たまりかねた硬骨漢の朱雲は、皇帝に拝謁を求め「御
物の剣を拝借し、佞臣ひとりの首を刎ねてその一党の
見せしめにしようと存じます」と言うと「その者は誰が」
と皇帝が問うと「張禹」と答えました。
皇帝は「師と仰ぐ張禹を侮辱するとは何事か。そちの
その罪は許さない」と言って、臣下に引きずり出させ
ようとしますが、朱雲は欄干にしがみつきなおも諫
め、ついにその欄干が折れてしまいます。・・・・・・
この頑張りに皇帝は朱雲を許し、忠臣の鏡として欄干
は直すことなくそのままにしておかせたといいます。>
<仏教語>
〖我慢〗
普通耐え忍ぶこととして用いられますが、仏教語で
「慢心」することで、自分を上に見て他人を軽んずるこ
とでありました。この「慢」は「我を慢心する」ということ
で、排除すべきことでありました。この意味合いから、
真逆の「忍耐」という意味に使われるようになったよ
うですね。
仏教では「慢に七慢有り」と分析しています。
①慢ー自分より劣った者に対して、自分か優れて
い るとおごり高ぶること。
(驕れる者久しからずですね。)
②過慢ー自分と同等の者に対し、自分の方が勝れ
ていると思い、自分より優れている者に対
して、自分と同等と思うこと。
③慢過慢ー自分より優れている者に対し、逆に自分
の方が勝れていると思うこと。
(過慢、慢過慢。よく酔っぱらいが呂律の回らな
い舌で言いますね、「あんなの大したことない。
俺にやらせるとちょちょいのちょいだ。」なんて)
④卑慢ー慢過慢の裏返しで、自分より優れている段
違いの者に対して、自分はほんのちょつと劣っ
ているだけと思うこと。
⑤我慢ー先ほどの「我を慢心する」とは少し違っている
ようですが、仏教の無我の理がわからず、自分
ありと思い自我に執着すること。
(「我が強い」「我を張る」なんていいますね。)
⑥増上慢ーまだ悟りを開いていない者が、自分はす
でに悟ったとうぬぼれること。
⑦邪慢ー自分には徳がないのに、逆に徳があると錯
覚すること。
(上長であるために、ごまをすって部下が寄ってくる
のを、自分を慕って寄ってくると勘違いする者、多
くありのませんか。)
<漢字の勉強>
佞ーへつらう・ネイ
俗字が「侫」。
「仁=近づき親しむ」に「女」で、女が慣れ親しむの意味
から、転じてへつらうの意味。
佞臣(ねいしん)というと、口先うまくこびへつらう家来、
心の好くない家来(腹黒家来)のことです。
※「仁」が人ずきがよく親切な意を表すのに対して、
「侫」は口先が巧みで、人当たりはよいが、心中は知
られないの意味を表します。
(表面は「仁」と同じように見えて、腹の中は大違いで
ありますね。
最も大罪とされるものはこのような「偽善」であります。
政治家、宗教家の偽善は、国を滅ぼしかねませんね。)
臣ーおみ・シン・ジン
「しっかりと見開いた目の象形」で、賢い家来の意味。
和訓の「おみ」は「大身」からで、大臣の職に選びださ
れた貴族階級の「姓=かばね」で、大化の改新以後は
第六の位となります。
(補)
殷王朝では王子の子を「小臣」といい、神に仕える
べき者とされました。理由はよくわからないようですが、
この神職の為に、目を針でつぶし盲目にして神に仕
えるものを「臣」と呼び、神に仕える意味からのちに
君に仕える家来との意味になりましたと。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
