ことばの物語
≪ほねー骨・歹≫
〖死の舞踏〗
数体の骸骨が踊っている絵があります。
これは中世(14~15世紀)ヨーロッパで流布した寓意
を表したもので「ダンス・マカブル」と言われます。
死は古くから骸骨の姿で表されていました。
疫病が流行すると、人々は死の恐怖から集団舞踏が
現象が現れたようです。
特に、14世紀末のヨーロッパを席巻したペスト流行は
半狂乱的集団舞踏があちらこちらで起ったと。
この時いわれたことが「死を思え(メメント・モリ)」とい
うことでありました。
「ダンス・マカブル」の絵画の主な主題は「死は万人
を襲う」というもので、その寓意としてさまざまな階層、
さまざまな年齢の者たちが、骸骨と輪になって踊る
姿が描かれました。
〖骨〗ーほね・コツ
字の成り立ちは「冎=咼の原字で関節の部分のほね」
に「月=肉月」で、肉体の核となるほね。
[補]
別説では
①「冎」は、肉を削り取りった頭部を備えた人の骨の
意味を表す。(理科室の骸骨ですね。)
②関節の受けの部分を描いたもので、穴にはまって
回転する関節の骨。
【字義】
骨は肉体の核をなすもので、硬い物であるところか
らつぎの意味を持ちます。
・物事を組み立てる芯になるもの。→骨子
・人柄の品格。→気骨・硬骨漢
・からだ・からだつき。→骨相・老骨
[日本独自の意味]
・物事をうまくやるためのやり方の大切な点。
・苦労・手数。→骨折り・骨惜しみ
骨は和訓で「かわら」ともいうそうですが、調べてみ
るとサンスクリット語の「カパーラ(迦波羅)」からのよ
うです。意味は「皿・鉢・骨・頭骸骨・甲冑」ということ。
屋根の「かわら」も同源とされるようです。
骸ーむくろ・ガイ
死人の骨でなきがら、むくろの意味。
字の成り立ちは「骨」に「亥=核に通じ、果実の中心
の堅い部分」で、肉体の中心の堅い部分の意。
和訓の「むくろ」は他に躯・身という字があり、死体の
ことで、特に胴体を指します。
髄ーズイ
字の成り立ちは「骨」に「迶=柔らかく従う」で、
骨の外枠に従うゼラチン状の中身。→骨髄
脳髄・・・脳みそ。物事の最も大切なところ。要点。
髑髏(どくろ)
されこうべ(しゃれこうべ)。白骨化した人の頭部。
和訓の「されこうべ」の語源は「晒(さ)れ頭(こうべ)」
からであります。
髑は「骨」に「蜀=それだけがぽつんと残る」で、
風雨に晒されて白くなった頭骨。
※ちなみに色の「白」は、頭蓋骨の象形であります。
あのまっしろな骨からですね。
髏は「骨」に「婁=とぎれることなく続く」で、骨だけが
連なる。とくに、されこうべの意味。
〖歹〗ーがつ偏
崩れた骨の残骨で、死に関する字ができています。
字は「肉の削ぎ落とされた人の白骨死体の象形」。
死ーしぬ・シ
字の成り立ちは「歹=死体」に「ヒ=人」。
「ヒ」について数説がありました。
①人が変化した形。
②人が逆さになった形で、非日常の出来事を表す。
③人が拝んでいる姿。
④遺族が殯(かりもがり)の済んだ骨を集める姿。
[参]古くは死体を一時的に草むらに棄てて
風化させ、残骨となった時、その骨を拾って
ほうむるのを「葬」といいます。(複葬)
殯ー(かり)もがり
字の成り立ちは「歹」に「賓=客人(まろうど)」で、
人の死体を埋める前に、死の世界からの客として
納棺しておくこと。
和訓の「もがり」は「喪(も)上(あ)がり」ということから
だそうです。
※虎落笛(もがりぶえ)の「もがり」は、筋違い
編んだ柵(矢来)で、冬の烈風が吹き付けると
「ピューピュー」と音が出ます。
葬ーほうむる・ソウ
字の成り立ちは「ー(むしろ)に死体を置いた艸(草)むら」
で、草の中に死体を置くさまから、ほうむるの意味。
※『礼記』に「葬は蔵なり」とあると。つまり、草の中に
隠し置くということであるようです。
古代においては、死体は一時的に草むらに棄てら
れ、風化して残骨となった時に、その骨を拾って
「ほうむる」ことを「葬」といいました。(複葬)
中国では土葬が主であったと。
埋葬は「土に死体を埋める」ということですね。
残(殘)ーのこる・のこす・ザン
字の成り立ちは「歹=死体」に「戔=戈(ほこ)・長い柄の
ついた刃物」で、刃物で切り取って小さくなった残り
の骨。
小さく少ないの意を含む。
※昔の中国で、謀反人に対する刑罰から生まれた字だ
そうです。それは、凌遅刑(りょうちけい)といわれるもの
で、ひとおもいに殺すのではなく、何度も刃物を振り下ろ
し、細切れにして徐々に殺すというものでありました。
殊ーたつ・こと・シュ
字の成り立ちは「歹=死」に「朱=株の略」で、木の切株
のように、真横に切断する胴切りで殺すこと。
特別の極刑であるところから、特殊の意味が派生した
もの。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
