ことばの物語
≪せんたくー洗・濯≫
「むかしむかし、お爺さんは山に柴刈に、お婆さんは川
に洗濯に行きました。・・・・」
そう、昔々はどの国でも川で洗濯をしていました。
浅瀬で足でふんだり、河原の石に水に浸した衣類を置
いて、棒でたたいたりして汚れを落としていました。
盥(たらい)が使われるようになると、井戸端が洗濯場と
なり、お母さんたちの社交場となりました。
これが井戸端会議でありますね。
明治期に洗濯板(鋸のように凸凹に彫られた板)が入っ
て、その板に固形の洗濯石鹸を使って、ゴジゴシとこ
すって洗っていました。
私の子供の頃はまだこのスタイルでありました。
和服が普段着であった時代には、上着の着物は貴重で
年に一度くらいしか洗濯をしなかったようです。そのため、
臭いけしとして、着物に香をたく習慣があったといいます。
(現代の老人が老人集を消すために香水を使うのは同じ
発想ですね。フッフッフ・・・)
洗剤は植物の浸水液(さねかずら・さいかち)や灰を使って
いたようです。
洗ーあらう・セン
字の成り立ちは「氵=水」に「先=あらうの意」で、水であ
らうの意味。金文では「止の下に舟」で、水盤で足を洗う
さまをあらわす。
〖洗足〗
「足を洗う」というと、悪事やよくない仕事をやめて、正業
つくという意味から、さらに現在の仕事をやめるという意
味で用いられますが、もとは仏教からで、托鉢の修行僧
が、寺にもとって泥の付いた足をあらうことで、世俗の煩
悩を洗い去るという意味を含めたものでありました。
〖洗足池〗
東京大田区の南千束(せんぞく)に「洗足池」がありますが、
もとは「千束池」と表記されていたそうです。これが洗足
となったのは、日蓮聖人が病気治療のため身延山か
ら常陸に向かう途中で、ここに立ち寄り足を洗ったと
いう言い伝えからだそうです。
ちなみに、「千束」という地名は、この地域では千束の
稲が免税されていた所という意からであります。
〖洗耳〗
「耳を洗う」というと、世俗の汚れたことを聞いて耳を洗
い清めるという意味で、次の故事によります。
「許由巣父(きょゆうそうほ)」とも言われます。
<故事>
聖人と仰がれている尭帝が許由に帝位を譲ろうと言っ
たところ、汚れたことを聞いたと言って、潁川(えいせん)
で耳を洗い山に隠れてしまった。
その川にに牛を連れてやってきた巣父は、許由のこの
話を聞いて、こんなところで汚れた水を牛に飲ませるわ
けにはいかないと言って、上流に行って牛に水を飲ませ
たという。(荘子)
濯ーあらう・すすぐ・タク
字の成り立ちは「氵=水」に「翟=おどりあがる」で、水
中から衣類をあげるようにして、あらうの意を表す。
※翟は「羽+隹(とり)」で、鳥の羽根が高く上がっている
情景から、高く上がるという意味をもつ。
濯纓濯足(たくえいたくそく)
自分の主張に固執せず時世に合わせた生き方をする
こと。
中国戦国時代の屈原の「楚辞=漁父の辞」の一節。
<自分の信念を貫こうとして、時の政府を追放され、
憔悴している屈原に、老いた猟師が慰めとして次
のように言います。
「滄浪の水清(す)まば以って我が纓(えい:冠の紐)」
濯うべし。滄浪の水濁らば以って我が足を濯うべし。>
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社) 字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版
