ことばの物語
≪かぜとかみなりー風Ⅱ・雷Ⅱ≫
風の神
中国の道教では風伯といいます。
風伯は天帝の命を四方にいる風師に伝えます。神意
は風によって伝えられ、そこに生まれた文化、習慣
を風俗といい、これが人に及んで風格となると。
風は天候を左右するので、農作物の吉凶を支配する
とされていました。これは神意ですから、凶作の時
に、神をなだめる祭祀を司るのが司(つかさ・首長)
となるのであります。
風は「凡=かぜをはらむ帆」に神格化された大鳥で、
この鳥が起こすものと考えられていました。これが
後に風雲に乗じる竜(虫)と入れ替わって、今の風と
いう字が使われるようになりました。
日本では神産みの神話で、イザナギとイザナミの間
に生まれたシナツヒコが風神でありますと。
日本書紀ではイザナミが朝露を吹き払った息から産
まれたとあります。
風は妖怪とも考えられていて、感冒に「風邪」とい
う字が当てられました。「風がしみとおる」「風に冒
される」ということであります。
古くは病全般が風の邪気に冒されると考えられてい
ました。
冬来たりなば春遠からじ
シェリーの『西風に寄す』の詩の冒頭ですね。厳し
い冬に耐え忍べばいずれ幸せな春がやってきます。
幸せばかりの人も、不幸ばかりの人もいない。
ギリシア神話では風の神の総称をアネモイといい、
道教と同じように東西南北にそれそれの風の神がい
ます。
西風はゼフュロスといい、春と初夏のそよ風を運ん
でくる温和な神で、ニンフのクロリスを誘拐して妻
にしますが、罪の償いとしてゼウスに願い出て女神
にしてもらいます。
これが花の神フローラであります。
ボッテチェリの『春・プリマヴェーラ』には、左の
隅にゼフュロスが手を伸ばし、クロリスをつかもう
としているところが描かれ、その手からクロリスは
逃げようとしています。そして、その先にフローラ
が描かれています。
南風はノトスといわれ、秋の風を運んできます。
作物を破壊するものとして恐れられています。
北風はボレアスといい、冷たい風を運ぶ粗暴な神で
あります。
東風はエウロスといいますが、特に季節的な特徴はな
く、話題には上がってきませんが、得体の知れない不
吉な神とされています。
風神の対を成すのが雷神ですね。
中国の神話では雷公といわれ、少しユーモラスなイ
メージを持たれています。多くの雷神がいて、かし
らが雷帝であります。
雷は天が人を罰する手段とされています。
姿は人頭獣身で、腹を叩いて雷をおとすといわれてい
ます。別の話では、左に蓮太鼓をもち、右手のばちで
叩いて雷を落とすと。
俵屋宗達の屏風絵『風神雷神図』はこの姿が描かれ
ています。
日本では黄泉の国に行ったイザナミの腐敗した体から
八柱の雷神が生まれたと。また、葦原中国を平定した
建御雷命は雷神でありました。
葦原中国(あしはらなかつくに)は現世で、高天原は神
の国、黄泉の国は死後の世界でありますね。
建御雷命(タケミカヅチ)は、イザナギの命が火神カグ
ツチの首を刎ねた剣の血が飛び散って生まれたとい
います。
和訓の「かみなり」は「神鳴り」からで、神が鳴らす
音ということから。
「いなずま」は「稲妻=稲の伴侶」で、稲の開花する
夏から秋に多く、雷が多い年は豊作になるといわれて
います。
ギリシア神話の主神ゼウスの武器も雷であります。
天空に住む神は天空神ですから、その威厳は雷で示
されるんでしょうね。
インド神話でも、最高神のインドラがこれに当たりま
す。また北欧神話の最高神トールも雷神であります。
アメリカインディアンの巨大鳥サンダーバートはその
羽ばたきで、雷を起こすとされます。
菅原野道真は怨念で雷と化し、京の清涼殿を襲います。
道真が藤原時平の讒訴で福岡の太宰府に左遷されて死
んだあと、天変地異やそれにかかわった人たちが次々
と、原因不明の死を遂げていきます。
例により怨霊を鎮めるために神として、北野天満宮に
祀られます。
それが天神(雷)様であります。
雷除けの呪い「くわばら、くわばら」は、道真の所領
の桑原だけには雷が落ちなかったところからでありま
すと。
ちなみに、雷様に臍を取られないように臍を隠せと
子供の頃に言われたのは、腹を抑えて地に伏せて雷を
避けるという意味であったようです。
今日一日幸運でありますように。
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
ことばの事典(講談社/日置昌一・日置英剛)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
