ことばの物語
<退ーしりぞく・しりぞける・タイ>
<退>というと、マイナスイメージの字ですが、これが
<退治>となると、英雄、豪傑の物語となるのであり
ます。
昨今は、白蟻退治や百足退治と、害虫駆除の専属語
みたいになっていますが、これが大百足となると、話は
違ってきます。
大昔は近江の国の三上山。
この山を七巻もする大百足がいたそうな。
琵琶湖の竜神の娘が、俵藤太こと藤原秀郷に退治を
頼みます。
首尾よく退治するのですが、余りにも大きすぎて、その
日のうちに死が全身に回らなかったと。
これには、死神も往生したことでしょうね。
♪足柄山の金太郎 熊にまたがり
おうまのけいこ・・・♪
坂田金時!
丹波の国は大江山。こちらは馬鹿でかい呑兵衛の鬼。
人呼んで大江山の酒呑童子。
源頼光率いる四天王(他は渡辺綱、碓井貞光、卜部季
武)の一員として退治に出かけます。
足柄で育ち手柄を世に残し (江戸川柳)
世界的なのは竜退治!
日本では竜ではないですが、八っの頭を持つ大蛇 八
岐大蛇。
八潮折という強烈な酒で酔わせ、クシナダ姫を
スサノウの命が退治して救います。この大蛇(おろち)の
尻尾から出てきたのが草薙剣ですね。
神代にも だますは酒と 女なり (江戸川柳)
イギリスの叙事詩『ベオウルフ』
ドイツの叙事詩『ニーベルゲンの歌』のジークフリー
ト。
古代ローマの殉教者ゲオルギウス。(イギリスの
セント・ジョージ)
みな竜退治の英雄。
英雄冒険譚のスターたち。
怪物、妖怪退治は英雄のお仕事ですね。
第一の辞書
<「退」は篆文で「彳=みち」に「日=食の省略形」
に「夊=足跡の下向きになった形」で、むかし役人
が、役所からしりぞいて家に帰り食事をするさまか
ら。>
ある国の学校では、昼食は自宅に帰って取るらし
ですね。
あり得ないことではないですが、退くの意味として
はどうですかね。
第二の辞書
<「退」はもと「日」に「夊=とまりがちな足」に「辵
=足の動作」で、足が止まって進まないこと。下へ
さがって低い所に落ち着くの意を含む>
うむ、「日」は何を意味しているのかな?
第三の辞書
<「退」の正字は「彳=十字路の形の「行」の左側で 、
少し進む」に「日=祭事用の食器」に「夊=後ろ向
きの足跡の形」で、食器に盛った供え物を引き下げ
る形。
ひく、ひきさげるの意味。>
足跡を見ただけでは、後ろ向きなのか前向きなのかわか
りませんよね。
足跡はつねに前向きですから。
そこに目標物が無い限り、後ろ向きなのかわかりません
この辞書は、もはや漢字民族学というような様相を呈し
ています。
「退」の語彙、成句は、特にこれと言うのはありませんで
した。
いずれにしても「さがる、逃げる」ってことですね。
憶良らは 今は罷(まから)む 子泣らむ
それその母も 吾を待つらむそ
(山上憶良)
宴もたけなわ。退出する不粋を粋な和歌で。
この時、憶良六十歳頃で、小さい子なんていませんよ。
「おお、そうですか。お子さんが?さあさあどうぞどうぞ。」
と皆もこの機知に笑って見送ったことでしょう。
今日一日 幸運でありますように!
誤字脱字ご容赦ください。
