こんにちは、一ヶ月の連敗記録に終止符を打ち、久々にテニスで勝利の快感を味わいました、絶學無憂(ぜつがく・むゆう)です。

 

今回も、今アメリカの主要メディアで、右も左も一緒になって注目を集めている、新型コロナウイルスの研究室漏洩説(Lab Leak Theory)について取り上げたいと思います。この件は、私にとっても、陰謀論というものの性質について考えさせられるものです。

 

 

 

新型コロナウイルスの研究室漏洩説、というのは、世界中を揺るがしているパンデミックの原因となっている新型コロナウイルス SARS-CoV-2 は、これまでメディアが繰り返してきたように自然界のコウモリから人に伝わったのではなく、武漢にあるウイルス研究所で作られたものが事故によって流出したものだ、とする考えです。

 
ニコラス・ウェイドという、元ニューヨーク・タイムズの科学担当、元・科学誌ネイチャーの記者が、5月3日にネットに公開したかなり長い記事「COVIDの起源、手がかりを追って Origin of Covid—Following the Clues」があります。これがアメリカの主要メディアの宗旨変えにかなりの役割を果たしたのでは、と言われています。
 
内容を抜粋してご紹介します。私はウイルスの専門家ではないので、専門用語の日本語訳や解釈が必ずしも正確ではないかもしれません。また、専門家として意見を述べるということができる立場にもありません。皆さんの考える材料のために日本語で内容をお伝えしたほうがよいだろうと思いました。
 
https://nicholaswade.medium.com/origin-of-covid-following-the-clues-6f03564c038

二説の物語

二説というのは、新型コロナウイルスの起源について、自然発生説研究所漏洩説のふたつです。当初から、このふたつしかないのですね。
 
そもそも自然発生説のほうが科学的だ、論文も出ているじゃないか、というのがずっと根拠になっていたのですが、それも違うようです。
 
 

2020年の2月19日、一流の医学誌、Lancet に自然発生説の公開書簡(研究論文というよりも短い声明のようなもので英語ではレターと呼ばれる)が出ました。「新型コロナウイルスが自然界に起源を持たないとする陰謀論に対して我々は強く非難する」と述べられていました。

 

しかし、この発表時期を今になって考えれば、あまりにも早すぎるということがまず指摘できる、とウェイド氏は言います。さらに、こう指摘しています。

 

It later turned out that the Lancet letter had been organized and drafted by Peter Daszak, president of the EcoHealth Alliance of New York. Dr. Daszak’s organization funded coronavirus research at the Wuhan Institute of Virology. If the SARS2 virus had indeed escaped from research he funded, Dr. Daszak would be potentially culpable. This acute conflict of interest was not declared to the Lancet’s readers. To the contrary, the letter concluded, “We declare no competing interests.”

 

このLancetの公開書簡については、ピーター・ダザック Peter Daszakという、エコヘルス・アライアンス(非営利NGO)の会長が草稿を書いたのが後に分かっています(27人の著者のうち5人目です)。ダザック博士の組織は、武漢ウイルス研究所におけるコロナウイルス研究に」資金提供していました。新型コロナウイルスが、ダザック博士が資金提供した研究から漏洩したものであったならば、ダザック博士の罪が問われる可能性があります。このような深刻な利益相反は論文に宣言されていません。

 

利益相反というのは、論文の主張が、著者の利益と直結しているような場合、結論を歪めようとするバイアスが働く恐れがあるので、それは望ましくないし、利益相反があるならばそれをはっきりと宣言しておく(つまり読者は著者の立場を差っ引いて結論を吟味する必要がある)、というのが約束になっています。

 

また、研究所漏洩説が本当であったら、世界中のウイルス研究に対して強い非難が集中し、研究の続行が難しくなるだろう、という、ウイルス研究者一般の立場(これもまた利益相反)もウェイド氏は指摘しています。

 

もうひとつ、自然発生説を形成する上で重要な役割を果たした公開書簡(これも上と同じで、研究論文ではなくて意見書のようなもの)が、2020年3月17日、これも医学界の有力雑誌、Nature Medicineに掲載されました。「SARS-CoV-2は研究室で作られたものや、目的を持って操作されたウイルスではないということを我々の解析は明白に示している」と述べられていました。
 
古い実験方法で遺伝子操作を行えば、人為的な操作の痕跡がたしかにウイルスゲノムの配列に残りますが、“no-see-um” や “シームレス と呼ばれる新しい方法であれば、明白な痕跡は残さずにゲノム配列の操作ができます。連続継代と呼ばれる別の方法では、培養細胞から別の培養細胞へとウイルスが繰り返し伝えられますが、これも痕跡を残しません。これらの方法が使われたなら、遺伝子配列から、人為的な操作があったか、なかったかを判断することはできない、とニコラス・ウェイド氏はこのレターを批判しています。
 
 
まず一点目。SARS-CoV-2のスパイク・タンパク質は、ヒトのACE2受容体に強く結合しますが、レターの著者らは、物理的な計算によって算出されるベストな結合様式(スパイク・タンパク質とACE2は、鍵と鍵穴のようにピタリとハマって結合するのですが、それが最高の理想的な鍵になってない、というわけです)とは異なっているので、SARS-CoV-2のスパイク・タンパク質の配列は、自然選択によるもので人為的な操作で作られたものではないと主張しています。
 
この議論は、人為的な操作を行う場合は必ず最高の結合様式になるように選ぶ「だろう」という推測に基づいたものである点をウェイド氏は指摘しています。特に、連続継代を使った場合、培養細胞から培養細胞へとウイルスが伝わる間に、自然選択によって、より強い結合を持つウイルスが選ばれるので、実際の作業はぜんぶ成り行き任せの自然選択であって、理想的な最高のフィッティングを実現することなど期待できない、とウェイド氏はこのレターを批判しています。
 
 
第二に、コロナウイルスはRNAウイルスですが、RNAは実験室で扱うには不安定なので、ウイルスゲノムをDNAに変換してから遺伝子操作を行い、完成してからRNAに戻すという方法がとられます。科学論文では、ほんの数種類のDNAのバックボーン(DNAでできた入れ物のようなもので、この中に目的のDNA断片を挿入して実験を行う)がこのような操作に用いられてきているので、人為的に遺伝子配列を操作した場合は、このときに使用したDNAのバックボーンの断片が残存するはずだ、というのが著者らの主張です。
 
しかし、DNAバックボーンを作ること自体は非常に簡単なので(いちいち自分で作る目的が無いから普通はやらないだけ)、痕跡が残らないように独自のDNAバックボーンを使用して遺伝子操作をすることは明らかに可能だ、とウェイド氏はこのレターを批判しています。
 
 
かなり専門的な内容なので、一般の読者の方は???となっているかもしれません。非常に影響力のある雑誌に掲載されてはいるものの、いずれも、新しい科学的なデータなどは一切ありません。「人為的な操作だったらきっとこうなってるだろうと専門家である我々は考えるけれど、そうなってないじゃないか」という推測と言いますか、意見に過ぎません。さらに、ウェイド氏の指摘するように、これらレターの主張には穴があるようです。「科学的、というより、きわめて政治的」だとウェイド氏は批判しています。
 
 

自然発生説への疑い

世界保健機構(WHO)の調査団が2月に中国を訪問しましたが、このときの調査団の活動は中国共産党によって厳しく管理されていました。このときの調査団の一員が、上でも名前の出てきた、ピーター・ダザック博士です。
 
もう一度確認すると、彼がトップを務めるエコヘルス・アライアンスという非営利NGOが、米政府から得た研究資金を武漢ウイルス研究所へ送っていました。つまり、お金を出しているスポンサーのような立場の人が、WHOの調査団の一員として参加し、盛んに発言していたのです。これも明らかに利益相反と言えます。
 
彼はこの調査の前も、後も、研究所漏洩説はあり得ない、と繰り返していました。ところが、一方で、このときの調査の結果、自然発生説の証拠も全く見つからなかった、と言います。
 
SARSとMERSでは、自然界から人間に感染するに至った痕跡が見つかっている(SARS1のときは約4ヶ月で発見)のに対して、SARS-CoV-2については、もう15ヶ月も経つのに、これがまったく出てきていないそうです。
 
自然発生説の証拠が探せど出てこない、となれば、もうひとつの研究所漏洩説をまじめに取り上げるのが自然な考え方です。
 
ウイルス研究者が遺伝子操作の技術を手に入れて以来、あるウイルスが元の宿主からヒトへジャンプするしやすさを調べることによって、未来に起こりうるパンデミック先回りして対策を取ることができる、とウイルス研究者は主張しました。このために、危険な動物ウイルスを改造して人間に感染しやすくするような実験が正当化されてきました。
 
この方針のもとで、1918年のインフルエンザウイルスが復元され、ほとんど絶滅したポリオウイルスが、論文のゲノム配列情報だけから復元できることが示され、天然痘ウイルスの遺伝子が他のウイルスに導入されたりしてきました。
 
これらの実験は、機能獲得実験(gain-of-function research)と呼ばれます。コロナウイルスの場合は、スパイク・タンパク質(図の赤い三角形の突起状の構造物)が、このウイルスがどの細胞に感染できるかをほぼ決定するため、特に注目されていました。
 
 
SARS1やMERSの流行の後で、コウモリのコロナウイルスへの関心が高まり、ウイルス研究者は、コウモリのコロナウイルスが人に感染するようになるためには、スパイク・タンパク質にどのような変異が必要か、というのを調べ始めました。
 
武漢ウイルス研究所の石正麗博士は、バット・レディ(bat lady 蝙蝠女、コウモリ女)という異名を取る、コウモリのウイルス研究の第一人者です。雲南省にある、コウモリが蔓延る洞窟に何度もチームを送り込んで、百種類ほどのコウモリ・コロナウイルスを収集しました。
 
 
Nature Medicineのこの論文のネット版には、但し書きがついていました。
2020年3月30日、編集部の注意書き。この記事が、COVID-19を引き起こした新型コロナウイルスは人為的に作り出されたとする未確定の理論の根拠として用いられていることを編集部は知っている。このが正しいことを示す証拠はなく、科学者は動物がもっともあり得る起源だと信じている。
 
石正麗博士は、著名なコロナウイルス研究者のノース・カロライナ大学のラルフ・S・バリクとチームを組み、Nature Medicine という一流雑誌に論文を2015年に発表しています。「コウモリのコロナウイルスがヒトに感染する可能性を調べるため」コウモリのコロナウイルスの感染能力をより高めてヒトの細胞を攻撃するようにするのが目的でした。このために、SARS1ウイルスのスパイク・タンパク質を、コウモリ・コロナウイルスの一種 SHC014-CoV のものに置き換えました。こうして作られたウイルスは、培養されたヒトの気道上皮細胞に感染することが試験管内で示されました。
 
このウイルスは、二種類のウイルス由来の部品から合成されたのでキメラ・ウイルスと呼ばれました。
 
もし、SARS-CoV-2ウイルスが石正麗の研究室で作られたのならば、SHC014-CoV/SARS1 キメラ・ウイルスがその祖先型、あるいはプロトタイプだったと言えるでしょう。
 
バリク博士と石正麗博士は、将来起こり得る、動物ウイルスのヒトへの感染を予見する利点が、リスクを上回ると主張しました。この機能獲得実験におけるリスクと利点については多く議論されたようですが、実際にコロナウイルス・パンデミックが起こった今から思えば、コロナウイルス・パンデミックを予防する上で、機能獲得実験が果たした役割はゼロだ、とウェイド氏は批判しています。さらにもし、SARS-CoV-2が研究室で作られたのならば、そのリスクは大惨事であったとも述べています。
 
 
続きます。
 
よければ、いいね!や感想をお願いします。
 
  • 私、絶學無憂は、テキストチャットと遠隔レイキによる手軽な感情解放セッションをココナラで受け付けています。
  • Zoomを使った、本当に使えるレイキのオンライン個人講座も開いております。ココナラでのセッションでやっているのと同じ技術を伝授いたします。zetsugaku.muyu アットマーク gmail.com までもしくは Facebook でご相談ください。
  • その他、込み入ったご相談がおありの方は、Zoomでのオンライン個人セッションも受け付けていますので、zetsugaku.muyu アットマーク gmail.com まで、もしくは Facebook でご相談ください。