こんにちは、絶學無憂です。

 

私が常々セラピー業界・スピ業界に関して危機感を覚えているようなことがよく出ている事例があったので、取り上げてみます。

 

数年前の記事ですが、こういうものがありました。ご面倒ですが、リンク先の記事をまずはお読みください。そうして頂かないとちょっと話ができないので。

 

輪廻転生が実在することが量子論で判明! 専門医「死後、あなたの意識は次の人の脳に張り付く」

https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201702_post_12259/?fbclid=IwAR2K0tP5so8Zv5nnlErLgftU6ci97vI8KqSQKk3klqbEv4qad4sxdtFnmc0

 

センセーショナルなタイトルの記事ですが、お読みになられてどう思われたでしょうか?

 

やっと量子論で輪廻転生が判明される時代が来たか!

 

と思われた方、いらっしゃいますか?
 
 
もし、そう思われた方は、残念ですが、科学リテラシーが相当低い、と申し上げざるを得ません。ここでいう「科学リテラシー」とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、「個人としての意思決定、市民的・文化的な問題への参与、経済の生産性向上に必要な、科学的概念・手法に対する知識と理解」つまり、科学についてその内容を批判的に理解する能力のことです。科学リテラシーが低い、というのは、科学に関する内容を鵜呑みにしやすい、つまり騙されやすい、というのと同じような意味です。
 
はい、こう書かれることで不快に思われる方が結構おられるだろうというのは承知していますが、まさにここが私の指摘したいところなので、もう少しお付き合いください。
 
実はこれはオリジナルの英語の記事が同定できるようになっています。こちらです。
ジム・タッカー氏は、この記事に紹介されている通り、前世の記憶に関する研究の第一人者です。同じくバージニア大学の先達イアン・スティーブンソン(ジム・タッカーは、イアン・スティーブンソンの後継者に当たる)と共に、それまで噂レベルでしかなかった前世の記憶について詳細な研究を行い、ほとんど反駁が不可能なような事例を見つけてきたことで知られます。
 
その点では別にこの日本語の記事は問題ありません。
 
じゃあ、何が問題あるのかと言うと、ズバリ、タイトルそのものですね。

輪廻転生が実在することが量子論で判明

これは、明らかに誤りです。

 

輪廻転生の実在を示したのは、タッカー氏の前世の記憶を持つ子どもたちへの調査研究であって、量子論がそれを判明したわけではありません

 

前世の記憶を持つ子どもたちの存在については疑いようがない(と思われる)事例があるが、一体どうやってそれを理解すればよいかという解釈の部分で、タッカー氏は量子論そのもの、というより量子論から出てきたロバート・ランザ博士の「生命中心主義(biocentrism)」の考え方・理論を採用しており、「意識は肉体の死後も生き残り、次の宿主の意識として活動する」のだろうと考えているというのが記事の内容です。

 

よろしいでしょうか、この考え・理論の部分については、別に何も判明していないのです。これは「私は神を信じている」というのと同じような話で、「考え」に過ぎません。量子力学の実験が、「意識は肉体の死後も生き残り、次の宿主の意識として活動する」と示したわけではありません。

 

ちなみにこの「生命中心主義」を唱えた当のロバート・ランザ博士も、傑出した幹細胞の研究者だそうですが、量子力学の研究をしているわけではありません。したがって、彼の「生命中心主義」も、「こうなってるんじゃないかなと僕は思うよ」という「考え」・「理論」であって、量子力学の科学的な実験で検証されたものではない、と見るべきです。正しいかもしれないし、間違っているかもしれない、ということです。

 

 

危機感を覚えたというのは、これがFacebookで投稿されたら90人もの人が「いいね!」を押していたという事実です。この人たちがもしも「量子論で輪廻転生が判明された」というように理解して「いいね!」を押していたのだとしたら、ちょっと問題だと思い、記事を書きました。

 

 

このケースは、オリジナルの英語の記事が見つけられるようになっているのでまだ良心的なほうですが、「死後、あなたの意識は次の人の脳に張り付く」などと書いてあったら、まず疑いから入るのが態度としては「正しい」でしょうし、「輪廻転生が実在することが量子論で判明」というのも、まず見た瞬間に「ホンマかいな?」と思って頂くべきです。

 

おそらく記事のアクセス数を増やそうという「盛る」意識が(当ブログでもこの盛る意識がたびたびトラブルを起こしていますが)このようなタイトルを付けさせたのだと思いますが、他はともかく、科学を語る場合は、「盛る」という行為について極力注意するべきです。事実を曲げてしまっては科学的調査の意味が失われます。

 

バージニア大学のジム・タッカー氏の仕事については邦訳の書籍も出ていますので、興味のある方は御覧ください。私も読みたいと思いつつまだ読んでいません。

 


 

彼の師匠に当たるイアン・スティーブンソンの本も紹介しておきます。

 

 

日本国内では、このテーマでは産婦人科医の池川明先生が盛んに発言・出版されています。産婦人科のお医者さんが空き時間に調べたことなので、タッカーや、スティーブンソンの学問的な仕事に比べると厳密性には欠けますが、愛に溢れたメッセージに癒やされる人も多いでしょう。

 

 

ところで、私が個人的にどう考えているかも申し添えますと、ま、大部分がバシャールの語ることに由来しているんで、たいしてオリジナルな考えではないですが、

 

  1. 意識は脳の産物ではない
  2. 唯一の意識が『クラウド』上にあって、端末である脳を使ってその意識の一部と交信している
  3. そもそも物質界、あるいは宇宙全体が、もともとは『クラウド』上の唯一の意識から作られた、ある種の仮想現実である
  4. 量子論の示す奇妙な世界観は、おそらく物質界が意識から生じているということに由来する
 
量子論と相対性理論について一般書を読んでイロハを学んだところですが、上のような仮説のもとに、アインシュタインの理論や、量子論の発展を見ていくとゾクゾクするほど面白いですね。物理学はめちゃめちゃおもしろいです。
 
興味深いのは現在の脳と意識の研究で名が知られる人のほとんどは、一番初めから意識は脳の産物であると仮定した上で、「どうやって神経活動が意識を生み出すのか?」という問いの立て方をしており、「意識は脳の産物ではない」という可能性を検討すらしません。意外にも哲学者ですらそういう傾向があるようです。
 
最初の前提が大きく間違っていたら正しい答えが導かれる可能性は低いと思うのですが。
 
「意識は脳の産物ではない」と考える根拠のひとつはタッカー氏のような前世の記憶の研究です。他には幽体離脱の研究というのもあります。
 
逆に「意識は脳の産物である」という信念の根拠となっているのは、脳損傷で意識障害が起きるという単純な事実と、この世には物質しか存在しないという唯物主義とがあると思います。
 
少し前までは想像するのが難しかったかもしれませんが、今の時代であれば、「脳損傷で、意識障害が起きる」というのが「脳が意識を作っている」という根拠にはならない、というのは受け入れやすいでしょう。あなたの携帯電話が壊れたら、インターネットには繋がらず情報が得られませんが、あなたの携帯電話がインターネットを作っていたんでしょうか?違いますね?携帯電話は端末であって、インターネットはあなたの携帯電話が壊れても存在し続け、情報はクラウドにあったのです。
 
唯物主義に立ってしまうと、「前世の記憶」はあり得ない、だからジム・タッカー氏の研究のような不都合なものは無視するのが一番、となってしまいます。
 
 
ちょっと脱線気味になったので、元へ戻して締めくくります。
 
今回の記事で言いたかったことは、スピ関係に詳しい人、非物質的なアプローチのセラピストの方は、科学リテラシーをもっと高めて頂きたいということです。そうでなければ、この人たちはサイエンスを理解できない人たちなんだと思われてしまい、一向に科学者サイドから相手にされないでしょう。
 
スピ関係に詳しい人、非物質的なアプローチのセラピストの方に多いのは、物質主義的だと言ってサイエンスを批判・敬遠しがちだということです。
 
ところが、その反面、自分たちがやっているような目に見えないエネルギーを使ったセラピーが本物だと認められたい、つまり承認欲求が強いので、今回取り上げたニュース記事のようないい加減な言葉遣いにコロッと騙されやすいのです。
 
これは悪循環を生んでいます。ここにも極性というものが働いているように思います。
 
科学的なものについて、もしネガティブ感情を抱いているならばまず解放した上で、理解を深めていけるとよいのではないかと思います。