女の座

★★★

1962年1月14日公開/モノクロシネスコ/111分/東宝/

製作:藤本真澄、菅英久 脚本:井手俊郎、松山善三 監督:成瀬巳喜男

撮影:安本淳 音楽:斎藤一郎 美術:中古智

出演-高峰秀子・笠智衆・杉村春子・草笛光子・小林桂樹・司葉子・三益愛子・宝田明・丹阿弥谷津子・大沢健三郎・淡路恵子・三橋達也・星由里子・夏木陽介・加東大介

 

成瀬巳喜男は1960年10月に「秋立ちぬ」が公開され、1961年5月に高峰秀子主演「妻として女として」が公開、そして1961年1月に「女の座」公開となっている。

 

1958年の淡島千景主演「鰯雲」で初カラーを手掛けて以来、モノクロ作品とカラー作品の混在が続いたが、このモノクロ作品「女の座」以降、遺作となった1967年「乱れ雲」以外の5本がすべてモノクロ映画となっている。

予算があるとかないとかではなく、成瀬自身の意向が働いているのだろう。

 

内容は雑貨屋を営む一家のお話で、個性強い草笛光子とか三益愛子・司葉子・星由里子たちの色恋沙汰が描かれていく。

 

母・杉村春子の前夫との子供・宝田明との突然の再会。そして草笛がゾッコンになり、しかし宝田の方は、一家の長男の妻であり、子持ちの未亡人となった高峰秀子に惹かれていく。

 

女性映画の名手と言われた成瀬だが、この映画の軽佻浮薄な宝田や、若い女と駆け落ちしてノコノコ戻ってきた加東大介、鹿児島弁丸出しのお調子者の三橋達也など、ダメ男ぶりの描き方もとても面白い。

 

ただラストに、高峰の子供、「風立ちぬ」で好演していた大沢健三郎の鉄道自殺は、唐突でとても説得力がない。大ラスは再びの日常が始まっていくのだが、夫に次いで子も亡くした高峰に、ほとんど何の変化もないのが、成瀬らしいといえばそうだが、「東京物語」のテーマとダブる所もあって、物足りなかった。