霧の旗
★★★★
1965年5月28日公開/モノクロシネスコ/111分/松竹大船/
製作:脇田茂 原作:松本清張(中央公論社版) 脚本:橋本忍 監督:山田洋次
撮影:高羽哲夫 音楽:林光 美術:梅田千代夫 編集:浦岡敬一
出演-倍賞千恵子、滝沢修、新珠三千代、近藤洋介、露口茂、川津祐介、桑山正一、市原悦子、内藤武敏、三崎千恵子
松本清張原作の初めての映画化は1957年「顔」(大曽根辰保監督)。
その次が翌年に公開された野村芳太郎監督の「張り込み」。
これはキネ旬8位に入り興行的にも成功した。脚本は橋本忍で助監督は山田洋次が務めている。
「張り込み」のヒットで各社は競って清張物を製作、「共犯者」(松竹)、「影なき声」(日活)「点と線」(東映)、「かげろう絵図」(大映)、「黒い画集」(東宝)などが連続して公開されていった。
「馬鹿」シリーズ三作を終えた山田洋次は、1965年にこの松本清張原作のサスペンス「霧の旗」を監督している。カラーではなく敢えてモノクロを選択、高羽哲夫の的確なカメラ、林光の音楽も重層的に使われ、演出を助けている。
配役がドンピシャで、熊本から上京する気の強い倍賞千恵子の主人公。それに絡む高名な弁護士に滝沢修。愛人に新珠三千代。弁護士事務所の桑山正一のキャラクターも光る。
映画は復讐譚として、ラストまで貫き構成もブレない。
倍賞と滝沢が抱き合うシーンで、一瞬和解へと進むのかと思いきや、検事・内藤武敏が読む倍賞の手紙で、滝沢は弁護士を辞めざるを得ない窮地に落とされるのが、コワイ。
山田洋次の監督としての手腕は、この作品で広く認められたことだろう。
この悪女の復讐譚は人気女優から実力派女優への脱皮作品として
今までに実に9回、テレビドラマでリメイクされている。
以下Wikiより転載
------------------------------------
製作
本映画は当初東宝の企画として、橋本忍による脚本が書かれていた。しかし脚本を読んだ山田洋次が松竹に持ち込み、社長の城戸四郎と交渉の末、映画化が実現した。
山田洋次の発言によれば、「やっぱり城戸さんが「こんな犯罪ものなんて」「こんな暗い話」って、乗らないんですよね。だいぶスッタモンダしたなあ。最終的にはぼく(山田)が「もうしようがない」と思って、城戸さんのところへ行って「わかりました。サスペンスものなんてのは城戸さんはお嫌いだから、ダメだろうとぼくは最初から思ってたんです。だから、やっぱりそうだったかということで諦めます」と言ったら、「ちょっと待て。そこまでおれは心が狭い人間じゃない」と(笑)」。城戸さんってそういういいところがあったんです。「じゃあ、まあ、やるか」となって、それでようやく実現したんです」。
倍賞千恵子の柳田桐子役への起用は、「『下町の太陽』の女優に復讐させる」という橋本忍の提案を、山田洋次が採用したもの。皇居の前を桐子が歩くシーンは、脚本にはなく山田が現場で考えたが、山田は倍賞を「(無心になって)ただ歩いているというのが軽やかにできる人」と賞賛している。
打ち合わせの際、河野径子役の新珠三千代は「やりにくい」と言ったが、橋本忍は「主役は倍賞さんと滝沢(修)さんとあなたの三人。こういう場合、どうしても一人、損な役が出てきちゃうんですよ」と言い、納得させようとしたという。
興行成績
東映が本作の一ヵ月前の4月に公開した中村錦之助主演・田坂具隆監督の『冷飯とおさんとちゃん』が大コケ、早期打ち切りに遭ったのを切っ掛けに、本作と同時期に公開された三國連太郎主演・山本薩夫監督の『にっぽん泥棒物語』、山本監督『証人の椅子』(大映配給)、熊井啓監督の『日本列島』(日活配給)と、日本映画には珍しく宣伝期間もたっぷりかけ、日本映画の良心と高い評価を受けた秀作が、相次いで興行的にコケるというショッキングな事態が起きた。この煽りで本作と『ぜったい多数』(桑野みゆき主演・中村登監督)の二本立てもコケた。
原作
『霧の旗』は、松本清張の長編小説。兄の弁護を断った弁護士に対する、女性の理不尽な復讐を描く、リーガル・サスペンス。『婦人公論』に連載され(1959年7月号 - 1960年3月号、連載中の挿絵は山本正)、1961年3月に中央公論社より刊行された。
映画『張込み』の製作以降、松本清張と面識のあった橋本忍の発言によれば、当時著者は、アラブ人男性のフランス人医師に対する復讐を描くフランス映画『眼には眼を』を観て、今度はこういう(趣向)のを書きたいとさかんに言っており、そうした発言ののちに著者が本作を執筆したとされている。
本作は単行本化の際、最終回連載部分に原稿用紙30枚分の加筆がなされた。特に大塚の懇願に対する桐子の態度の描写や、第二の殺人に関する大塚の推理部分、桐子が検事に宛てて送った手紙の部分が大幅に加筆、精緻化された。
☆映画でのリメイク
1977年12月17日公開「霧の旗」東宝配給
監督 西河克己 脚本 服部佳
出演者 山口百恵、三浦友和、三國連太郎
1977年12月17日公開。製作・配給は東宝。西河克己監督。山口百恵映画主演作品。現在はDVD化されている(ただし今日では不適切な表現が多く"ピー音"で処理されており、不完全版となっている)。
8億8900万円の配給収入を記録、1978年(昭和53年)の邦画配給収入ランキングの第8位となった。
本映画は山口百恵と三浦友和の通算7作目の共演作品であり、監督の西河克己は、『伊豆の踊子』をはじめ、多くの作品でメガホンを取ってきたが、本作が百恵映画としては最後の監督作品となった。
西河は当初、百恵に悪女を演じさせるのはまだ早いと考え、柳田桐子役を演じることに反対していた。しかし、百恵は強くこだわり、「歌にもいろんなレパートリーがあるように、映画の私の役柄にもこういうのがあってもいいんじゃないか」と答えた。西河は百恵の演技の中で「ウソのつき方」に注目、百恵が大塚弁護士、阿部啓一、取り調べの刑事、それぞれに対して、「ウソをつく時の胸算用」を表情を変えながら細かく表現し、これが細かな演技指導によるものではなく、もともと本人がもっている人間的迫力が出たのだと、西河は評価している。
原作と比べて、三浦友和が演じる阿部啓一の登場場面が多いことが特徴の一つとなっており、原作にはない阿部と桐子の恋愛感情が描かれている。三浦はできるだけ原作に近くなるように「恋人らしくない」セリフ回しを心がけたとされている。また、三國連太郎は、1969年版テレビドラマに続いて、2度目の大塚弁護士役を演じている。
同時上映
『惑星大戦争』監督:福田純。主演:森田健作、浅野ゆう子、宮内洋。
☆テレビドラマでのリメイク
1967年版「霧の旗」
脚本 須川栄三
演出 奈良井仁一
出演者 芦田伸介、広瀬みさ、草笛光子
「霧の旗」 1969年度連続ドラマ
脚本 大野靖子
演出 宇留田俊夫
出演者 栗原小巻、三國連太郎、菅貫太郎
制作 フジテレビ
第7回ギャラクシー賞、第10回期間奨励賞受賞作。
1972年版「霧の旗」
ジャンル テレビドラマ
脚本 石堂淑朗
演出 大原誠
出演者 植木まり子、森雅之、岡田茉莉子
制作 NHK
第12回日本テレフィルム技術賞・奨励賞受賞作品
1983年版「松本清張の霧の旗」
脚本 市川森一
演出 せんぼんよしこ
出演者 大竹しのぶ、二谷英明、小林薫
1991年版「松本清張作家活動40年記念 霧の旗」
脚本 橋本綾
演出 出目昌伸
出演者 安田成美、田村高廣、大和田獏
1997年版「松本清張スペシャル 霧の旗」
脚本 古田求
演出 富永卓二
出演者 仲代達矢、若村麻由美、三浦浩一
2003年版「松本清張サスペンス特別企画 霧の旗」
脚本 石原武龍
演出 脇田時三
出演者 古谷一行、星野真里、風間トオル
2010年版「生誕100年記念 松本清張ドラマスペシャル 霧の旗」
脚本 中園健司
監督 重光亨彦
出演者 市川海老蔵、相武紗季、東貴博
2014年版「松本清張 霧の旗」
脚本 浅野妙子
監督 藤田明二
出演者 堀北真希、椎名桔平、高橋克実
「松本清張二夜連続ドラマスペシャル」の第二夜として放映。今作では、柳田正夫は桐子の兄ではなく弟で、知的障害者という設定となっている。障害ゆえに純粋な心を持つ弟を、桐子が半ば生き甲斐としていたことが、復讐への強い動機となっている。結末は原作とは若干異なる。視聴率12.8%。本作はDVD化はされていないが後にネット配信は行われている。