「サラリーマン忠臣蔵」

★★★★

1960年12月25日公開/カラーシネスコ/100分/東宝/

製作    藤本真澄 原案    井原康男(井手俊郎+笠原良三+戸板康二+田波靖男)

脚本    笠原良三 監督    杉江敏男 撮影    完倉泰一 音楽    神津善行

出演-森繁久彌・三船敏郎・東野英治郎・加東大介・小林桂樹・司葉子・宝田明・有島一郎・山茶花究・三橋達也・団令子・草笛光子・夏木陽介・中島そのみ・柳永二郎・志村喬

 

前年1959年に公開された「社長太平記」から約1年後に公開された、社長シリーズ8作目。東宝サラリーマン映画100本記念らしく、登場時、森繁は社長ではなく専務となっている。

 

4年前の1956年に発表された経済白書の序文に「もはや戦後ではない」の言葉が書かれて流行語となり、1958年の12月には、映画館入場者数は11億2,745万人と最高を記録、映画館数は1960年に7,457館,邦画の新作封切本数は547本にも及んだ。産業としての映画はピークを迎え、東京オリンピック開催4年前のイケイケドンドンの社会情勢の中、この映画は封切られた。キャッチコピーは「10年に一度の顔合せ!人気スタア総出演」。

 

題名からも分かるように「忠臣蔵」をサラリーマン世界に置き換えた内容。

池部良(浅野)を二代目社長として尊敬する専務の森繁久彌(大石)は、ヨーロッパ出張へ旅立つ。親会社である銀行頭取の東野英治郎(吉良)は、池部と結婚の約束を交わす、芸者・新珠三千代にぞっこんだが暗に拒否られている。財閥のレセプションが開かれた廊下で、東野は池部に「芸者道楽の色気違い」と罵詈雑言を放つ。激怒した池部は東野を殴り倒す。

 

池部は頭を冷やすために山へとドライブ。が運転を誤り事故死してしまう。森繁が急遽帰国、後任の社長人事が議論されるが、何と東野が社長の椅子へと座ることとなる。前社長の秘書をしていた宝田明は東野と対立、辞表を提出。次々と辞めていく社員の中、森繁は動かず、東野の命令に素直に従う。

 

そして新社長の歓迎会。森繁は余興として、赤穂浪士の格好をして「四十七士」の吟舞を舞う。このシーンは元々声の良い森繁の歌声が、詩吟をまったく知らない私にとっても、心に響くものがあった。そして剣を抜いて舞い、東野の眼前に切っ先を突き出す。

東野の腰巾着である有島一郎に「無礼じゃないか」と言われ、無礼も承知、私は新会社を設立するので辞めますと、辞表を提出。待ってましたと部長の加東大介、運転手の小林桂樹ほか賛同する社員たちも次々に辞表を出し、ともに宴会場を後にして前編の終りとなる。

 

東野英治郎の憎ったらしさ100倍の悪役ぶりが素晴らしい。東野以外には考えられないほどの適役だ。質実剛健な三船敏郎も良い感じ。三木のり平が出ていないのが残念だが、映画としてはとても良く出来ている。やはり日本人の心には「忠臣蔵」的な忠誠心が奥深く潜んでいるようだ。
 

3ヶ月後に公開された続編も楽しみだ。

 

以下Wikiより転載

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『サラリーマン忠臣蔵』は、1960年12月25日に公開された日本映画。監督は杉江敏男、主演は森繁久彌。製作は東宝。カラー。東宝スコープ。100分。
キャッチコピーは「10年に一度の顔合せ!人気スタア総出演」。

概要
「東宝サラリーマン映画100本記念作品」と銘打って作られた作品で、題名に「社長」の名は入っていないが、『社長シリーズ』の1本である(第8作)。しかしストーリーの展開上、本作では森繁は専務、加東大介は部長、小林桂樹は社長運転手と、いつもの設定とは異なっており、またこの時期小林の恋人役だった司葉子は、小林の妹役で登場する。

本作は「仮名手本忠臣蔵」をモチーフにしており、「刃傷松の廊下」のシーンをロビー内で起こる暴力事件で行うなど、様々な所に「忠臣蔵」のパロディがある。またストーリーの関係上、正続で1本の話となっているが、これは第1作の『へそくり社長』正続(1956年。監督:千葉泰樹)以来のことである。

原案は「井原康男」と名義されているが、これはブレーン担当の「井手俊郎」「笠原良三」(本作の脚本)「戸板康二」「田波靖男」の合成ペンネームである。

出演者は「100本記念作品」に相応しく、三船敏郎・池部良(本作のみ)などといった大物が出演、更に東宝の人気俳優陣が登場している。なお『社長シリーズ』常連の三木のり平と英百合子は、正続編とも登場しない(これは唯一)。

1980年代前半までは放送に恵まれず、意外に知られていない作品だったが、1985年12月7日放送のTBSの土曜朝の映画枠『土曜映画招待席』で、次回(同年12月14日)放送の続編『続サラリーマン忠臣蔵』と共に放送したところ好評となり、その後のCS放送「日本映画専門チャンネル」では、12月になると正続合わせて頻繁に放送、その内容が知られるようになった。

同時上映
『サザエさんとエプロンおばさん』
原作:長谷川町子/脚本:笠原良三、蓮池義雄/主演:江利チエミ/宝塚映画作品
『サザエさん』シリーズ第9作。