北北西に進路を取れ (North by Northwest)

★★★★

1959年8月6日米国公開/カラービスタ/136分/MGM/

製作    アルフレッド・ヒッチコック 脚本    アーネスト・レーマン

監督    アルフレッド・ヒッチコック 撮影    ロバート・バークス

音楽    バーナード・ハーマン 編集    ジョージ・トマシーニ

出演-ケーリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント、ジェームズ・メイソン、マーティン・ランドー、レオ・G・キャロル、ジェシー・ロイス・ランディ

 

ヒッチコック監督の前作「めまい」から、1年3ヶ月後に公開された娯楽サスペンス映画の傑作。「知りすぎていた男」や「間違えられた男」などの、一般市民が犯罪組織に巻き込まれ、孤軍奮闘していく姿を、多くの見せ場とともに描く。

 

ヒッチコック映画には珍しく原作がない。アカデミー脚本賞にもノミネートされた、アーネスト・レーマンのオリジナル脚本が素晴らしい。とにかく映画的な視覚的な見せ場が、これでもかと詰め込まれている。1962年から始まる「007」シリーズにも多大な影響を与えただろうと推測される。

 

ケーリー・グラントが、突然一味に誘拐され、酩酊状態にして崖から転落させようとする。何とか逃れ、国連本部で殺人の濡れ衣を着せられ、シカゴ行き寝台列車で、相手役・エヴァ・マリー・セイントと出会う。

そして広大な平原で会う約束を取り付ける。ただっ広い道路一本に佇むグラント。遠くには農薬散布の飛行機が。それが突然グラントに襲いかかり、最後にはタンクローリーに衝突、難を逃れる。

そしてオークションのシーン。周りを悪人たちに囲まれて八方塞がり状態。グラントはオークションの値を吊り上げて騒ぎを起こし、警察を呼ばれて脱出。その後にCIAのレオ・G・キャロルに状況を説明される。

 

ラストはおとり捜査に協力するエヴァを助けに、

歴代大統領の顔が岩に刻まれたラシュモア山へ。

崖下に降りていく二人を襲う悪人たちを転落させて、グラントはエヴァの手を取って引き上げると、寝台列車のベッドの上へと、あざやかに切り替わり、まるで男根のように列車がトンネルに入って行き、「The End」となる。

 

グラントとエヴァが食堂車で出会い、その後の寝台車のシーン。セックス後らしい二人の甘い会話が語られるのだが、ヒッチコック映画にしては印象が薄い。

「汚名」でのラブシーンや「泥棒成金」「めまい」なと数々の官能的なラブシーンを撮ってきたわけだが、このシーンは照明が暗く、また同時録音での余分な音が入りすぎているようで、まったく良くなかったのが残念だ。

 

以下よりWikiより転載

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『北北西に進路を取れ』(原題:North by Northwest)は、1959年のアメリカ合衆国のスパイスリラー映画。監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はアーネスト・レーマン、主演はケーリー・グラント。タイトル・シーケンスはソール・バスによるもので、キネティック・タイポグラフィを本格的に使用した最初の作品であるとみなされている。製作会社はメトロ・ゴールドウィン・メイヤー。テクニカラー、ビスタビジョン作品。

原題 North by Northwest について
「North by NorthWest」という方位は現実には存在しない。全周を32方位に分割した時の方位の呼び方[注 1]では、北北西(北からの角度・中間値337.5度)は、North-NorthWest(NNW)である。北西微西(同303.75度)は NorthWest by West(NWbW)、北西微北(同326.25度)は NorthWest by North(NWbN)、北微西(同348.75度)は North by West(NbW)である。

1960年に来日したヒッチコックは「そんな方向はないのだから、そうしたことを言い出すほど主人公はとり乱している」という意味だと、当時「ヒッチコック・マガジン」に掲載された座談会で語っていた。

また、ヒッチコックはピーター・ボグダノヴィッチによるインタビューの中では、「『三十九夜』のアメリカ版を撮ろうとずっと考えていた。一種のファンタジーだ。タイトルがこの映画の全体を象徴している …コンパスには“north by northwest”などというものは存在しない。自由な抽象芸術に近いことを映画製作でやろうとすると、思うままにファンタジーを用いることになる。それこそ私が扱っている分野だ。私は現実の一面を扱うようなことはしない。」と語っている。

シェイクスピアの『ハムレット』第2幕第2場のハムレットの以下のセリフ、
I am but mad north-north-west: when the wind is southerly, I know a hawk from a handsaw.
(私は北北西の風の時に限って理性を失ってしまう。南風の時には判断力があるのだ)
に由来しているという説がある。

作品の評価
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「手に汗握るサスペンスで、映像的にも象徴的な、このヒッチコック後期の傑作は後に続く数え切れないほど多くのアクションスリラーの基礎を築いた。」であり、79件の評論のうち高評価は99%にあたる78件で、平均点は10点満点中9.1点となっている。Metacriticによれば、16件の評論の全てが高評価で、平均点は100点満点中98点となっている。

受賞歴
第32回アカデミー賞(1959年)において3部門にノミネートされた。

脚本賞:アーネスト・レーマン
美術賞 (カラー部門):ウィリアム・A・ホーニング、ロバート・ボイル、メリル・パイ、ヘンリー・グレース、フランク・マクケルビー
編集賞:ジョージ・トマシーニ


1960年エドガー賞の映画脚本部門でアーネスト・レーマンが最優秀賞を受賞した。

トリビア
恒例のヒッチコック監督のカメオ出演、本作では冒頭のクレジットタイトルの最後、発車直前のバスに乗ろうとした男性がドアを閉められてしまうシーンに登場する。なお、ヒッチコックが女装して列車の乗客として出演しているという説があるが、この女性客を演じているのは『裏窓』にも彫刻家の役で出演したジェスリン・ファクス(Jesslyn Fax)である。
食堂車のシーンで、ケンドールが“I never discuss love on an empty stomach”(私は空腹で愛を論じたことがない)と言っているが、もともとのセリフは“I never make love on an empty stomach”(私は空腹でセックスしたことがない)であり、彼女の唇の動きもそうなっている。過激すぎるセリフとして声だけ差し替えられた。


ソーンヒルが農薬を散布する軽飛行機に襲われる有名なシーンは、カリフォルニア州ベーカーズフィールドで撮影された。飛行機はボーイング・ステアマン モデル75でアメリカ軍が第二次世界大戦中に練習機として導入し、終戦後は民間に払い下げられたため、実際に農薬を散布する農業機として利用されていた。


この映画の中のミスの1つがメイキングで明らかにされている。ラシュモア山のカフェテリアでケンドールがソーンヒルを拳銃で撃つ場面、ケンドールが発砲する「前」に、画面右手の奥にいる少年が両手で耳をふさいでしまっている(1h45m30s)。何度もリハーサルを繰り返したのが原因のようで、進行役のエヴァ・マリー・セイントは「なぜこのテイクが残されたのかは謎です」と語っている。


ラストシーンで、ソーンヒルとケンドールが寝台車の中で抱き合った後、列車がトンネルの中に入っていく。ヒッチコックは「あれはこれまでわたしが撮った映画のなかでもいちばん猥褻なショットだ…列車は男根のシンボルだ」と語っている。


ジェームズ・ステュアートはソーンヒル役を熱望していたが、ヒッチコックは婉曲に断ったという。ヒッチコックは、『めまい』がヒットしなかったのはジェームズ・ステュアートがラヴ・ストーリーを演じるには年を取りすぎていたからと考えていたようで、『北北西に進路を取れ』はスパイ・アクション映画ではあるが、ラヴ・ストーリーが大きな位置を占めているため、ジェームズ・ステュアートよりも年長ではあるが若々しいケイリー・グラントを選んだのだろうとトリュフォーは推察している。