お早う

★★★

1959年5月12日/カラースタンダード/94分/松竹大船/

製作    山内静夫 脚本    野田高梧・小津安二郎

撮影    厚田雄春 音楽    黛敏郎 美術 浜田辰雄

出演-三宅邦子・笠智衆・佐田啓二・久我美子・杉村春子・高橋とよ・長岡輝子・三好栄子・田中春男・沢村貞子・設楽幸嗣・島津雅彦・東野英治郎・大泉滉・殿山泰司・須賀不二男・櫻むつ子

 

前年1958年9月に公開された前作「彼岸花」から8ヶ月後に公開された小津監督作。

 

「彼岸花」公開1ヶ月後の10月、『東京物語』がロンドン映画祭でサザーランド賞を受賞、11月には小津は映画人として初めて紫綬褒章を受章。さらに翌年1959年1月には日本芸術院賞を受賞した。

 

数々の賞を受け、名実ともに日本映画界を代表する大監督になった訳だが、小津はあえて「俺はそんな高尚な人間じゃない」とばかりに、次回作は「オナラ」の映画となった。へそ曲がりの小津らしい選択だ。

 

新興住宅地を舞台に、隣近所の主婦たちとその子供。そして旦那たちの日常が描かれていく。肩の力を抜いて伸び伸びと撮られただろう作品は、久々の小津の得意とする「生まれてはみたけれど」などの子供映画のエッセンスや、市井の人達の雑多な色合いが楽しめる。

 

子役の兄弟二人、設楽幸嗣(兄)と島津雅彦(弟)が素晴らしい。

この作品以降も、設楽は「秋日和」、

島津は「浮草」「秋日和」「小早川家の秋」と、重用されていく。

 

三好栄子の出刃包丁や、高橋とよの「あんた、呼んだ?」のギャグ。杉村春子の町内費を忘れた際の、手のひら返しの三宅邦子とのやり取りにも大笑い。特に杉村は、家から家に走る姿が、その都度違う走り方を演じ分けていて、流石に舞台人だと驚嘆させられる。

 

しかし外商に転職した東野英治郎が、電化製品のパンフレットを持ってきたその日の夜には、廊下にテレビが置かれている設定は強引すぎた。

ネット注文より早いやんけ!と思ってしまった。こうしないと映画が終われないのはわかるが・・・。笠と三宅夫婦が高価なテレビ購入を即断したのも無理がある。

 

マア細かいところには目をつぶって、「オナラ」映画を楽しむのが、この映画の良い鑑賞姿勢だろう。

 

以下Wikiより転載

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『お早よう』は、小津安二郎監督による1959年(昭和34年)の日本映画で監督第50作。

概要
1958年10月、『東京物語』がロンドン映画祭でサザーランド賞を受賞。11月には小津安二郎が映画人として初めて紫綬褒章を受章。1959年1月には日本芸術院賞を受賞した。名実ともに映画界の重鎮としてみられるようになった直後に、小津が選んだのは、郊外の新興住宅地を舞台に元気な子供たちにふりまわされる大人たちをコメディタッチで描いたこの『お早よう』であった。

 

本作品では子どもたちがオナラ遊びに興じる場面が出てくるが、「オナラ」を使ったギャグは小津監督がサイレント時代から温めていたアイデアだという。

 

1959年(昭和34年)1月にロケハンをし、2月27日から4月19日まで撮影をし、5月12日に公開された。小津作品としては『彼岸花』に続いて2本目のカラー作品であり、画面における色彩の使い方に小津の遊び心が随所に感じられる。息子の中井貴一は、当作品中の佐田啓二について「小賢しくない、余計な芝居のない演技をしていて、父の出演する小津映画の中では一番好きです」と評している。