鰯雲

★★

1958年(昭33)9月2日公開/カラー東宝スコープ/130分/東宝/

製作:藤本真澄、三輪礼二 原作:和田傳 脚本:橋本忍

監督:成瀬巳喜男 撮影:玉井正夫 音楽:斎藤一郎 美術:中古智、園真

出演-淡島千景・木村功・中村鴈治郎・小林桂樹・司葉子・杉村春子・新珠三千代・清川虹子・水野久美・太刀川洋一・賀原夏子・飯田蝶子・加東大介・見明凡太郎

 

成瀬は前年1957年5月公開「あらくれ」のあと、翌1958年5月に香川京子主演「杏っ子」を監督。それから1年4ヶ月後に、初のカラー作品であり横長のシネスコサイズでこの「鰯雲」を監督した。

 

初カラー映画という意気込みもあったのだろう、1年かけて神奈川県厚木の田園風景を撮影している。当時農村作家として人気だった和田傳の小説を原作にして、橋本忍が脚本を書いている。

 

内容は、戦後の農地解放に伴う、新しい時代の波に乗り切れない中村雁治郎と、長男・小林桂樹や次男・太刀川洋一との対立、そしてそれぞれの相手である、司葉子と水野久美との恋愛模様が描かれる。

 

主役は、中村の妹である未亡人・淡島千景。新聞記者の木村功と知り合い、すぐに不倫関係となる。男手なく一人で、田畑を耕運機で日々耕す淡島に、不倫する時間的余裕があるのか疑問だが、お話はこの2つが同時進行で進んでいく。

 

その他、太いパトロンを持つ新珠三千代、中村の二番目の妻である杉村春子との再会とかが描かれるが、2時間10分はとても長かった。

 

日本の地主制度を解体した農地改革は、既に遠い出来事で、登場人物たちの悩みは実感できない。

 

成瀬、初のカラー作品だが、「色」に対するこだわりはほとんどないよう。ただ淡島の着る着物が、農村の未亡人としてはとても高価な代物だったのが、かなり不自然ではあった。