あらくれ

★★★★

1957年(昭32)5月22日公開/モノクロスタンダード/121分/東宝/

製作    田中友幸 原作    徳田秋声 脚本    水木洋子 監督    成瀬巳喜男

撮影    玉井正夫 音楽    斎藤一郎 美術 河東安英

出演-高峰秀子・上原謙・森雅之・加東大介・三浦光子・東野英治郎・宮口精二・志村喬・清川玉枝・中北千枝子・千石規子・高堂国典・賀原夏子・丹阿弥谷津子・仲代達矢・左卜全・田中春男・沢村貞子・坂本武・岸輝子・中村是好

 

前作「流れる」から半年後に公開された成瀬の新作。

この年、1957年の監督作はこの1作のみ。

 

原作は1915年(大正4年)に、徳田秋声が『読売新聞』紙上に連載した小説であり、自然主義文学者の徳田が写実的に描いた女の一代記。

 

高峰秀子演ずる主人公は、東京近郊の農家の養女として育ち、勧められる結婚を拒絶して家を飛び出し、やがて缶詰屋の上原謙と結婚、そして上原の浮気が発覚して離婚、地方の旅館で働き出しその経営者であり既婚者・森雅之と関係を持ち、やがて実直な洋服屋・加東大介と結婚。しかし幼馴染である三浦光子が、加東に囲われていることを知り逆上、加東を追い出し、店の使用人である仲代達矢と共に独立を画策する所で終わって行く。

 

この映画、当時の映倫から成人指定を受けた。つまり18歳未満は見られない。特別にエロシーン等はないのだが、とにかく高峰演ずる主人公が勝ち気な女で、すぐに旦那と取っ組み合いの大喧嘩をする。これが少年少女には悪影響があると判断されての成人指定だろうか?。

 

高峰秀子と上原謙の喧嘩。

高峰と森雅之。この二人はお互い好きあっていて喧嘩はしない。

ただ森は妻帯者なので結婚はできない。

そんな中、まじめで実直な加東大介と出会い、

洋服屋を開業。最初はうまくいくが、

加東が小唄の師匠、丹阿弥谷津子とうまくやっている所を目撃、

高峰は嫉妬に狂い、ホースで加東を水浸しに。

最後は加東の妾である、幼馴染の三浦の家に乗り込んで、

取っ組み合いの大喧嘩を繰り広げる。

ラストは、加東を閉め出して、

使用人である仲代をパートナーにして店を独立する画策をし、

雨の中、歩き去っていく後ろ姿で「終」となる。

 

前年の3本の連作と比べると、ラストシーンがイマイチだった。

しかし、自由奔放に生きる高峰秀子の姿は爽快であり、成人指定をされた事実を考えれば、女性自立の時代を先取りした、映画の一本だったのかもしれない。

 

以下Wiliより転載

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『あらくれ』は、徳田秋声の同名小説を原作として、1957年(昭和32年)に成瀬巳喜男が監督し、東宝が製作・配給して公開した日本の長篇劇映画である。

主人公・お島を当時満33歳の高峰秀子が演じた。設定は原作どおりだが、ストーリー展開を脚本の水木洋子が大幅に改変している。奔放な女性の生き様を描く本作を、当時の「映画倫理管理委員会」(新映倫、現在の映画倫理委員会)は成人映画に指定し、18歳未満の鑑賞を制限した。


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