妻の心

★★★★

1956年5月3日公開/モノクロスタンダード/101分/東宝/

製作    藤本真澄、金子正且 脚本    井手俊郎 監督    成瀬巳喜男

撮影 玉井正夫 音楽    斎藤一郎 美術 中古智

出演-高峰秀子・小林桂樹・三船敏郎・三好栄子・千秋実・中北千枝子・杉葉子・根岸明美・田中春男・花園蘭子・加東大介・沢村貞子・塩沢登代路

 

前作「驟雨」から4ヶ月後に公開された成瀬監督作。

この時期、監督として絶好調の時期だったらしく、今回の作品もとても面白い。

 

前年1月に公開された「浮雲」以来の高峰秀子主演。夫が「驟雨」にも出ていた小林桂樹で、心寄せる相手が三船敏郎。義理の母役の三好栄子や、長男・千秋実と妻・中北千枝子と、それぞれ役柄にピタリとハマっており、安定感がある。

 

家族間の微妙な距離感の変化を、フェードアウトを多用して描き出している。フェードアウトの手法は前作「驟雨」でも多かったが、さらに画面に余韻を残していく効果が際立って、磨きがかかっている。

 

突然の雨で食堂に足止めされる、高峰と三船。その雰囲気から突然、三船の激情が口元から漏れようとする。高峰はそれをおののいて待ち受ける。が、寸前に他人が入ってきて、元の状態へと戻されてしまう。

 

高峰は、三船の妹である杉葉子に、三船との関係は誤解を招くからもう会わないと宣言、帰り道に夫である小林と出会う。二人並んで家へと帰る途中、通行人に「・・・お揃いで・・・」と声をかけられる。それをきっかけにして二人の関係は雪解けへと向かっていく。

 

やはり「夫婦円満」は良いものだと、ほのぼのとした感情で映画を見終えた。

絶妙の間の演出と、編集テクニックを駆使した、成瀬巳喜男の円熟した職人芸を見ることができる。