早春

★★

1956年(昭31)1月29日公開/モノクロスタンダード/144分/松竹/

製作    山内静夫 脚本    野田高梧、小津安二郎 監督    小津安二郎

撮影    厚田雄春 音楽    斎藤高順 美術 浜田辰雄
出演-池部良・淡島千景・岸恵子・高橋貞二・須賀不二男・田中春男・浦辺粂子・中北千枝子・杉村春子・山村聡・笠智衆・三井弘次・加東大介・宮口精二・三宅邦子・中村伸郎・長岡輝子

 

前作「東京物語」から2年4ヶ月ぶりの小津監督作。

 

Wikiによると

「1953年『東京物語』を完成後、翌54年8月、次回作の構想を練るべく、蓼科高原にある野田高梧の別荘に入って『早春』の着想を得たが、同年の9月以降、田中絹代の監督作『月は上りぬ』をめぐる騒動の中で田中を全面的にバックアップしたため、小津の映画制作は進まなかった。55年1月に『月は上りぬ』は公開にこぎつけ、55年3月、茅ケ崎館で再び『早春』のシナリオに取り掛かかる。そして6月に完成、7月にロケハンを行い、8月に撮影開始。12月29日に撮影を終え、1956年(昭和31年)1月29日に『早春』の公開となった」

 

小津映画初出演となる池部良と、淡島千景が夫婦役、浮気相手が岸恵子。物語はサラリーマン人生の悲哀と、池部の不倫を疑う妻の猜疑心の、2つが主軸となって進んでいく。結局、どちらのテーマも中途半端で終わってしまい、小津作品としてはつまらない出来上がり。

 

何を考えているのかよく分からない池部と、一人部屋でむっつりして夫の帰りを待つ淡島の冷淡な表情のみが印象に残り、後味が悪い。岸恵子も何故か美しくなく、腰が軽い女にしか見えず精彩に欠ける。

 

逆に脇役、友人関係の、とっぽい高橋貞二やら、須賀不二男、大阪弁丸出しの田中春男などの役者が光る。淡島の母親役の浦辺粂子や、相変わらずの上手い演技の杉村春子、その旦那の宮口精二も良い。杉村の夫の浮気話の流れから、自ら鰹節を黙々と削る宮口のカットには大笑いさせられた。

 

池部と同時入社の友人が病に倒れ、結局死んでいくが、何故にこの役を登場させたのか?お葬式のシーンには、斎藤高順の軽音楽がずっと流れていて違和感がありまくり。

 

戦友たちの宴会で歌う「ツーツーレロレロ」や、送別会で歌う「蛍の光」の合唱シーンが、見ていてツラかった。フルコーラスを聞かせられても何も出てこない。

 

「麦秋」や「東京物語」よりも長尺である、2時間24分の上映時間が終わっても、感慨も何も無い。脚本執筆が一度中断となったせいか、推敲が足りない印象を持ったのが正直な所。

 

以下Wikiより転載

---------------------------------------------------------------

『早春』は、1956年(昭和31年)に公開された日本映画である。小津安二郎監督の第47作目。

概要
東宝のスター俳優池部良と淡島千景を主演に、『君の名は』で一躍松竹の看板女優となった岸惠子を迎えて新味を出した作品。戦後からようやく立ち直りつつある東京を舞台に、若いサラリーマン夫婦の危機と再生、2人をめぐる人間模様を描く。池部と岸にとっては唯一出演した小津作品であり、同じようなキャストを使い続けた小津にとっては異例であった。

高度経済成長前の東京のゆったりした風景のなかに、戦争を生き延びた若い友人達の関係、夫婦関係のデリカシー、サラリーマン生活、波乱の後で東京を離れ再出発する若夫婦の姿を描く。家族をテーマにするいわゆる「小津調」からは少し逸れた作風だが、後ろ向きの作品ではない。

1947年(昭和22年)『長屋紳士録』から年1作ペースで映画を作り上げていた小津は、1953年に『東京物語』を完成。翌1954年8月、次回作の構想を練るべく、蓼科高原にある野田高梧の別荘(通称「雲呼荘」)に入った。同地で『早春』の着想を得たが、同年の9月以降、田中絹代の監督作『月は上りぬ』をめぐる騒動の中で田中を全面的にバックアップしたため、『月は上りぬ』は1955年1月の公開にこぎつけたが、小津の映画制作は進まなかった。1955年3月、茅ケ崎館で再び『早春』のシナリオに取り掛かって6月に完成。7月にロケハンを行い、8月に撮影に取り掛かった。12月29日に撮影を終え、1956年(昭和31年)1月29日に『早春』が公開された。

小津にとって1954年・1955年は戦後初の制作空白期間となった。ちなみに、1956年の『早春』以降も、1962年の遺作『秋刀魚の味』まで基本的に年1本ペースが守られている。なお、1959年のみ『お早よう』『浮草』の2本が公開された。2時間24分という上映時間は、小津の現存作品では最長である(散在作品も含めれば、1931年製作の『美人哀愁』が158分で最長である)。本作から、小津が私淑して戦後はともに仕事をした里見弴の息子、山内静夫が製作に名を連ねている。

エピソード
本作で岸惠子を気に入った小津は、次回作『東京暮色』の明子役に岸をキャスティングするつもりであったが、岸の『雪国』の撮影が長引いたために断念し、代わりに有馬稲子を起用した。


戦友たちの再会した場面で正二(池部良)が平山(三井弘次)、坂本(加東大介)らと歌う「ツーツーレロレロ」という歌は「シャンラン節」という俗謡である。