「裏窓」 (Rear Window)

★★★★

1954年8月1日米国公開/カラースタンダード/112分/パラマウント配給/

製作    アルフレッド・ヒッチコック 原作    コーネル・ウールリッチ

脚本    ジョン・マイケル・ヘイズ 監督    アルフレッド・ヒッチコック

撮影    ロバート・バークス 音楽    フランツ・ワックスマン

出演-ジェームズ・ステュアート、グレース・ケリー、セルマ・リッター、ウェンデル・コーリイ、レイモンド・バー、ジュディス・イヴリン、ロス・バグダサリアン

 

前作「ダイヤルMを廻せ!」から2ヶ月後に公開されたヒッチコック作品。

主演は6年前に公開された「ロープ」のジェームズ・ステュアートと、前作「ダイヤルM・・・」に続いてのグレース・ケリー。

 

J・スチュアートはこれ以降「知りすぎていた男」「めまい」にも主演。G・ケリーも「泥棒成金」に主演と、ヒッチコックにとっては二人ともお気に入りの役者だったに違いない。

 

この映画、まずセットが凄い。

脚を骨折して動けない、スチュアートの部屋の窓から見える、正面、左右の建物が全てセットで建て込まれている。奥の道路には車が行き交い、更にその奥にはスタンドバーもある。いったいどれくらいの広さのステージだったのだろうか。

 

基本的にカメラの視点は部屋から一歩も外に出ない。そして常に標準レンズで撮影され、スチュアートが双眼鏡や望遠レンズを覗く場合のみ、大写しの視点となる。このカメラ視点が凄い。

 

それぞれの住民の描き方がよく考えられている。

正面建物の2Fには、目を楽しませてくれる若いダンサー。熱帯夜を凌ぐためベランダで寝る夫婦は、飼っている子犬を籠で3Fから下に降ろすコミカルさ。

左の窓には新婚夫婦。ハネムーンから戻ってカーテン閉めて・・・、しかし最後は妻の甘言にうんざり、仕事を辞めるやめないで大喧嘩。

右の窓には作曲家が常にピアノで旋律を奏でている。これが劇伴の要素も兼ねているのが凄い。正面1Fに住むのはハイミス女性。ロンリー・ハート婦人と名付けられた孤独な女性は、ラストには作曲家と結ばれる。

 

そしてレイモンド・バー演ずる、妻殺しの男はちょうど正面に住む。暗闇にタバコの赤い火だけが点滅する不気味さ。ラスト、ケリーが部屋に忍び込んで結婚指輪をして合図をする、それを見たレイモンド・バーが、正面を見据えるときの衝撃。スチュアートだけでなく、観客も同時に「見つかってしまった!」と衝撃を受ける。

 

ボートの中だけを舞台にした1944年の「救命艇」。そしてリアルタイムに進行するワンカット映画である1948年の「ロープ」。この2本の映画を撮ったヒッチコックだからこそ、撮ることの出来た映画だろう。

 

ケリーの登場するたびに変わる艶やかなファッションを楽しみ、上品で洗練されたセリフと、ハラハラドキドキのストーリー展開、ラストは両足骨折しましたの落ちで終わる鮮やかさ。円熟したヒッチコック・スタイルの完成形の一本となった。

 

以下Wikiより転載

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『裏窓』(Rear Window)は、1954年のアメリカ合衆国のサスペンス映画。監督はアルフレッド・ヒッチコック、出演はジェームズ・ステュアートとグレース・ケリーなど。コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)による同名の短編小説(原題は『It Had to Be Murder』)を原作とし、事故で車椅子生活を送る男がアパートの部屋の裏窓から目撃した事件の顛末を描いている。現在、パブリックドメインとなっている。AFIが選出した「アメリカ映画ベスト100」では42位にランクインした。

映画批評家によるレビュー
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「ヒッチコックはこの傑作でサスペンスの才能を存分に発揮した。」であり、76件の評論のうち高評価は99%にあたる75件で、平均点は10点満点中9.2点となっている。 Metacriticによれば、18件の評論の全てが高評価で平均点は100点満点となっている。

受賞歴
第27回アカデミー賞    監督賞    アルフレッド・ヒッチコック    ノミネート
脚色賞    ジョン・マイケル・ヘイズ   ノミネート
撮影賞(カラー部門)    ロバート・バークス   ノミネート
録音賞    ローレン・L・ライダー   ノミネート


第20回ニューヨーク映画批評家協会賞    

主演女優賞    グレース・ケリー    受賞
※『喝采』『ダイヤルMを廻せ!』の演技と合わせての受賞。

劇中、ほぼ全編にわたってカメラはジェフの部屋から出ない。舞台劇のように場所を限定したサスペンス映画は、『救命艇』や『ロープ』でもヒッチコックが挑戦したテーマである。必ずしも成功したとはいえなかった前2作での反省を踏まえ、全編にわたって緊張感の持続する上質なサスペンスに仕上がっている。
主人公ジェフが窓から落下する場面はスタントマンを使わずスチュアート本人が演じているが、本当に落下した訳ではなく、ブルーマスク合成を利用した特殊撮影である。この撮影法は後年の『めまい』でも使われた。
本作は主人公とその部屋の窓から見えるアパートの住人たちの生活風景を全員が一斉に演じ、一連の流れの中での撮影が要求されたため、実在のアパートを借りてロケーションするのではなく「全編スタジオセット撮影」という方法が採用された。したがって窓の外にひろがる隣近所のアパート群との距離、見える角度、車道を通過する自動車の種類、台数、タイミングなど、全てが完璧に計算されたものとなっており、ヒッチコック作品の中でも特に作り込みの細かい作品である。


作中ではジェフが住むアパートの住所はニューヨーク市グリニッジヴィレッジの西9丁目125番地とされているが、西9丁目に125番地は存在しない。上述の通りスタジオに再現された中庭は、クリストファー通り125番地他の裏に広がる中庭(クリストファー通り、ハドソン通り、西10丁目に囲まれている)をベースにしたもので、実際の中庭の景観は今も殆ど変わっていない。


ヒッチコックの他の作品と同様のパターンが随所に見て取れる。
★ブロンドの活動的なヒロイン
★体制側の無理解(この作品でも刑事はラストシーンまで殆ど手助けをしてくれない)
★コメディ・リリーフとなる老婦人(ここではリッター演じるステラ)
★最後のアクションの前にマクガフィン(ここでは女性が消えた理由)を明らかにしてアクションに観客を集中させる構成 …など
 

アイリッシュによれば、著作権料として支払われたのはわずかに600ドルだったとのこと。ただしアイリッシュはその額よりも、ヒッチコックが自分の住所を知っているはずなのに映画の招待券を送ってこなかったと不満を漏らしている。
 

主人公が身に付けている腕時計はTISSOTである。
 

ヒッチコックの出演シーン
隣のアパート最上階の作曲家の部屋に登場。ピアノの横で時計のネジを巻いている。