「山椒大夫」

★★★★

1954年3月31日公開/モノクロスタンダード/124分/大映京都/

製作:永田雅一  原作:森鴎外  脚本:八尋不二、依田義賢

監督:溝口健二  撮影:宮川一夫  音楽:早坂文雄  美術:伊藤熹朔

出演:田中絹代・花柳喜章・香川京子・進藤英太郎・河野秋武・浪花千栄子・清水将夫・毛利菊江・三津田健

 

前作「祇園囃子」から約7ヶ月後に公開された溝口監督作品。

ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞している。溝口は「西鶴一代女」「雨月物語」に続いて3年連続でのヴェネツィア国際映画祭に入賞となった。

 

平安朝の末期、安寿と厨子王の兄妹が、山椒大夫の奴隷として売られ、過酷な日々を送る。10年後、妹の助けで兄は逃げ出すが、妹は入水自殺を遂げる。やがて兄は丹後の国守となり、山椒大夫を国外追放にして奴隷たちを解放する。そして兄は佐渡にいる盲目の母と再会を果たす。

 

幼い頃の厨子王を、当時13歳の津川雅彦が演じている。大人になってからは花柳喜章が演じているのだが、これが似ていない。正直に言って大人の厨子王は今ひとつ。

 

安寿は香川京子だが、兄の行方を秘匿するために入水自殺するのがおかしい。

兄の花柳は逃げる時に、香川に国分寺に行くと告げる。香川は自分が捕まったあとに拷問に耐えきれず、その寺の名を明かしてしまうことを懸念して湖に入水自殺する。しかし、追ってはすぐに国分寺へ乗り込んで行く。寺には山椒大夫の長男で出家した河野秋武がおり、花柳はその河野に匿われるのだから、香川の自殺は無駄死にとなっている。

 

山椒大夫を演ずる進藤英太郎のメーキャップが凄い。一度見たら忘れられない。また毛利菊江の悪玉の巫女も良い。あと、兄妹の父は清水将夫が演じているのだが、関白役の三津田健が、見分けがつかないほどに似ている。最初に関白が画面に出てきたときは、清水将夫の二役なのかと思ってしまった。それほどよく似ている。

 

話の流れとして、兄の厨子王が関白に直訴した事からその身分が判明、父と同じ丹後守となるのは、少々出来すぎた感がある。

 

ラストの、佐渡ヶ島の浜辺での、宮川一夫のクレーン撮影の絶妙な動きが素晴らしい。わざわざ大型クレーンを佐渡ヶ島まで運んで撮ってのだろう。

 

それと早坂文雄の音楽の使い方が、二つの旋律を同時にダブらせる聞かせ方が新鮮だった。溝口は「残菊物語」では頭とケツ以外、効果音のみで音楽を一切使わなかったり、「西鶴一代女」では、映画の時代に使用されていた楽器のみで音楽を作曲したり、かなり「音」へのこだわりが強い。

 

以下Wikiより転載

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「山椒大夫」は1954年3月31日公開。大映製作・配給の溝口健二監督作品。ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得するなど、海外でも高く評価され、溝口の代表作のひとつとなった。
 

依田義賢と八尋不二が共同で脚色し、溝口が監督した。厨子王と安寿の設定が『姉弟』から『兄妹』に変更しているなど細部に変更がある。本作は海外でも高く評価され、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得、溝口は『西鶴一代女』『雨月物語』に次いで3年連続でヴェネツィア国際映画祭に入賞した。ほか、国内ではキネマ旬報ベストテン第9位にランクインされた。ラストの海のシーンはジャン=リュック・ゴダールが『軽蔑』『気狂いピエロ』で再現したほどである。