「木枯し紋次郎」
『木枯し紋次郎』(こがらしもんじろう)は、
笹沢左保作の股旅物時代小説シリーズであり、及びそのテレビドラマ化、映画化された作品である。小説は1971年から発表され、1972年からフジテレビ系列で放映された市川崑監督、中村敦夫主演のテレビドラマは、視聴率が30%を超える人気となり、主人公紋次郎の決め台詞「あっしにはかかわりのないことでござんす」は流行語となり、様々な紋次郎グッズが売り出されるほどの一大ブームとなった。
紋次郎の生地上州新田郡三日月村のモデルとなった群馬県太田市藪塚町には、木枯し紋次郎の碑、テーマパーク「三日月村」があり、1998年には紋次郎記念館「かかわりーな」が開設された。
主演-中村敦夫
原作:笹沢左保
プロデューサー:浅野英雄、阪根慶一、大岡弘光、
小嶋伸介、金子満(フジテレビ)
撮影:宮川一夫、森田富士郎、
牧浦地志、梶谷俊男
美術:西岡善信、加門良一
音楽:湯浅譲二
ナレーター:芥川隆行
主題歌:だれかが風の中で
作詞:和田夏十
作曲:小室等
編曲:寺島尚彦
唄:上条恒彦
制作:C.A.L、フジテレビ
第1部 1972年1月1日~5月27日 放送
話数 | サブタイトル | 脚本 | 監督 | 撮影 | ゲスト | 星取表 |
1 | 川留めの水は濁った | 服部 佳 久里子亭 |
市川崑 | 墨谷尚之 | 小川真由美 小池朝雄 |
★★ ★ |
寸評 | 1972年1月1日の初回放送。ニヒルで笑わない紋次郎を演ずる中村敦夫は適役。長い爪楊枝を咥え、頬の傷が目立つ。この回は小川真由美演ずる賭博師に肩入れ、その理由は死んだ姉に瓜二つだったから。小池朝雄が姉の嫁ぎ先の主人だっとは、ちょっと出来過ぎ感があった。 | |||||
2 | 地蔵峠の雨に消える | 鴨 三七 | 市川崑 | 墨谷尚之 | 宇津宮雅代 高橋長英 石山健二郎 五味龍太郎 |
★★ ★★ |
寸評 | 峠の途中で腹痛で苦しんでいる高橋長英を助ける紋次郎。死ぬ間際に手紙を預かり宇津宮雅代に届ける。実は親分の敵である紋次郎を知らせる書状で、愛人の石山健二郎に命を狙われる。よく練られた脚本で面白かった。雨の中、スローで撮った五味龍太郎一味との死闘シーンが印象的。脚本の鴨三七は市川崑の映画作品を多く手掛けている日高真也の別名。 | |||||
3 | 峠に哭いた甲州路 | 鴨 三七 久里子亭 |
市川崑 | 墨谷尚之 | 黒沢のり子 原田芳雄 加藤嘉 |
★★ ★★ |
寸評 | 排他的な村を舞台に、片足のない女・黒沢のり子と紋次郎の交情が描かれる。原田芳雄の女を殺したのが、実は黒沢だった。お嫁に行ってこの村を出るのが羨ましかったのが理由。ラスト、瀕死の黒沢を背負って、夢だった峠の向こうの村を見せてやる最後が切ない。 | |||||
4 | 女人講の闇を裂く | 服部 佳 | 窪川健造 | 武田千吉郎 | 藤村志保 大出俊 菅井一郎 北川美佳 |
★★ ★ |
寸評 | 当時の新興宗教であった「女人講」の集まりで、役人に犯された女の子供・大出俊が、20年振りに復讐する内容。悪役は菅井一郎。藤村志保は誘導する役回りであまり絡んでは来ない。 | |||||
5 | 童唄を雨に流せ | 鴨 三七 | 池広一夫 | 梶谷俊男 | 香山美子 工藤堅太郎 嵯峨善兵 藤岡重慶 |
★★ ★ |
寸評 | 大映の池広一夫監督作。金の亡者である嵯峨と、その娘・香山と夫の工藤との確執を描く。所々面白いシーンがあるが、紋次郎に100両の懸賞金が掛けられる設定が、現実離れしている。今の貨幣価値だと800万円にもなる。 | |||||
6 | 大江戸の夜を走れ | 山田隆之 | 国原俊明 | 武田千吉郎 | 安田道代 菅貫太郎 山本麟一 桜井浩子 |
★★ ★ |
寸評 | 花のお江戸で野盗を働く男の、隠し金をめぐる話。紋次郎が江戸入りを嫌う所が面白い。安田道代の色気にさすがの紋次郎も不覚にも酔って寝てしまう。最後は山本麟一ら悪党を斬り倒し、その一味の安田も自ら斬られる。 | |||||
7 | 六地蔵の影を斬る | 山田隆之 | 森一生 | 宮川一夫 | 佐藤允 北林早苗 深江章喜 蟹江敬三 |
★★ ★★ |
寸評 | 森一生監督、宮川一夫撮影の回。紋次郎と似た境遇の佐藤允との二人旅。最後には自ら刺されて死んでいく。流石の宮川一夫。印象的なカットが多い。 | |||||
8 | 一里塚に風を断つ | 山田隆之 | 大洲斉 | 森田富士郎 | 扇千景 土屋嘉男 二木てるみ 川合伸旺 |
★★ ★ |
寸評 | シリーズ第一話から助監督をしていた大洲斉の監督作。撮影は同じ大映京都出身の森田富次郎。紋次郎が毒にやられ、それを助けた町医者・川合伸旺が実は悪いやつだったのお話。恋女房・鳳千景を信じ続ける土屋嘉男が適役。 | |||||
9 | 湯煙に月は砕けた | 大野靖子 | 池広一夫 | 梶谷俊男 | 扇ひろ子 岸久美子 長谷川明男 井上昭文 |
★★ ★★ |
寸評 | 脚の皿を傷つけた紋次郎が湯治客として逗留中に、悪漢一味に襲われる回。扇ひろ子が良い。渡したかんざしを楊枝で木に刺すラストも心に残る。 | |||||
10 | 土煙に絵馬が舞う | 大藪郁子 | 手銭弘喜 | 梶谷俊男 | 常田富士男 宮口二朗 青柳美枝子 |
★★ ★ |
寸評 | 石立鉄男主演のドラマを多く監督した手銭弘喜監督作。子供視点での構成だが今ひとつ。悪役を演ずる常田富士男が印象に残る。この回から主題歌「だれかが風の中で」の上條恒彦のヴォーカルが新録音となっている。個人的にはあまり力まない以前のヴォーカルのほうが良かった。 | |||||
11 | 龍胆は夕映えに降った | 鴨 三七 久里子亭 |
大洲斉 | 森田富士郎 | 川地民夫 近藤宏 下元勉 |
★★ ★★ |
寸評 | シリーズ物が一度は使う定番、偽物・紋次郎のお話。大洲斉の演出と森田富士郎のカメラは見応えあり。マントを使っての剣戟シーンが面白い。紋次郎の出番が少ないがそれが逆に良かった。 | |||||
12 | 木枯しの音に消えた | 服部 佳 | 出目昌伸 | 武田千吉郎 | 十朱幸代 荒木一郎 戸浦六宏 左とん平 大滝秀治 |
★★ ★★★ |
寸評 | 監督は東宝出身の出目昌伸。紋次郎の楊枝のエピソードが明かされる回で十朱幸代をはじめ演技陣が充実している。ラストの「あんたの事は忘れもしなければ、思い出しもしねぇ」が素晴らしい。 | |||||
13 | 見かえり峠の落日 | 服部 佳 | 窪川健造 | 梶谷俊男 | 市原悦子 曽我廼家明蝶 小松方正 |
★★ ★ |
寸評 | 前話と同じ脚本家なので期待したが、整合性取れない流れが目立つ回となった。市原悦子が紋次郎を誘惑するシーンのみ、素晴らしい。もっと他の役どころで市原を使えばよかった。 | |||||
14 | 水神祭に死を呼んだ | 大藪郁子 | 国原俊明 | 森田富士郎 | 赤座美代子 田崎潤 南原宏治 寺田農 |
★★ ★ |
寸評 | 50両の金を馬鹿正直に届けた紋次郎が争いに巻き込まれる。田崎潤がかつての無法者を演じているがちょっと説得力ない。 | |||||
15 | 背を陽に向けた房州路 | 大藪郁子 | 土屋啓之助 | 木村公明 | 光川環世 浜田寅彦 草野大悟 石山雄大 |
★★ ★★ |
寸評 | 百姓たちの小賢しさがテーマの回。謀略に乗せられてしまう、ラスト紋次郎の虚しさが良い。またロケの風景をよく活かしている。 | |||||
16 | 月夜に吼えた遠州路 | 鴨 三七 | 太田昭和 | 武田千吉郎 | 郷鍈治 明石勤 早川雄三 有川由紀 |
★★ ★★ |
寸評 | 親分殺しの濡れ衣を着せられた紋次郎。シマを持つ三人の子分たちが紋次郎を狙う。結局一番人の良さそうな子分が、親分殺しの下手人だった。 | |||||
17 | 無縁仏に明日をみた | 白坂依志夫 大藪郁子 |
土屋啓之助 | 木村公明 | 野川由美子 稲葉義男 穂積隆信 |
★★ ★ |
寸評 | 脚本は増村保造監督の脚本を多く手掛けた白坂依志夫。しかし今ひとつ。野川由美子の役柄があまりにも酷い。子役が上手いのでこちらの話を膨らませればよかった。 | |||||
18 | 流れ舟は帰らず | 大野靖子 久里子亭 |
市川崑 | 墨谷尚之 | 吉田日出子 村松英子 上條恒彦 |
★★ ★★ |
寸評 | 市川崑演出の最終回。宛て書きされたであろう吉田日出子の存在感が圧倒的。上條恒彦の殺陣シーンも光る。ラストの炎上する橋の見所もあり面白い。主題歌のヴォーカルが再び最初のバージョンに戻されている。 |