祇園囃子

★★★★

1953年8月12日公開/85分/モノクロスタンダード/大映京都/

原作:川口松太郎 脚本:依田義賢 監督:溝口健二

撮影:宮川一夫 音楽:斎藤一郎 美術:小池一美

出演-木暮実千代・若尾文子・河津清三郎・浪花千栄子・進藤英太郎・菅井一郎・田中春男・小柴幹治

 

前作「雨月物語」から4ヶ月後に公開された溝口作品。

1936年製作の「祇園の姉妹」から17年。再び祇園を舞台にして、舞妓二人を中心に構成されている。

 

ちょうど20歳の若尾文子が初々しい。35歳の木暮実千代も色っぽい。

若尾が舞妓修行して行く過程を丁寧に描きつつ、やがて初の顔見世となる。すぐに河津清三郎の専務にみそめられ、その取引相手の役所の課長・小柴幹治は、木暮を見た瞬間に気に入ってしまう。偏執狂的な小柴がコワい。

 

そして河津が強引に若尾と関係を迫り、抵抗した若尾は、何と河津の舌を噛み切る。のたうち回る河津と口元を血だらけにして泣きじゃくる若尾。溝口にしか撮れない、凄まじいシーンだった。

 

若尾の父親役で進藤英太郎と、お茶屋の女将である浪花千栄子が素晴らしい。浪花の一言で、全てのお茶の出入りが止められてしまう、その「村社会」的な祇園花街の構造がよく分かって面白かった。

 

また宮川一夫の撮影が素晴らしい。派手なクレーンショットや移動カットなどはないが、モノクロスタンダードの画面を活かした、奥行きのある構図は惚れ惚れするほどだ。

 

17年前の「祇園の姉妹」では、貧乏故に男と寝なければならない、その立場を嘆いて終りとなるが、この映画のラストは、再びお茶屋への出入りが許されて、界隈を二人して歩き始める、前向きなラストとなっている。

 

前作「雨月物語」も非常に未来を予感させるラストだったが、溝口健二自身の中で、戦前から戦後にあった、悲惨な救いのない終わり方ではない、心情的な変化があったのだろうと思われる。

 

以下Wikiより転載

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『祇園囃子』(ぎおんばやし)は、1953年に公開された溝口健二監督の日本映画作品。川口松太郎の小説が原作である。

受賞
1953年 (第4回)ブルーリボン賞
助演男優賞(進藤英太郎)
助演女優賞(浪花千栄子)
1953年 (第27回)キネマ旬報ベストテン第9位


テレビドラマ
本作を原作とするテレビドラマが、1963年3月21日と同年3月28日の2回に渡って、日本テレビ系列の『武田ロマン劇場』(武田薬品工業一社提供。木曜20:45 - 21:30)で放送された。制作は読売テレビ。

出演者は高千穂ひづる、北條きく子、徳大寺伸、江田嶋隆、中村雅子、藤尾純。