★★

1953年4月29日公開/モノクロスタンダード/96分/東宝

製作-藤本真澄 原作:林芙美子 『茶色の目』 脚本:井手俊郎

撮影:玉井正夫 音楽:斎藤一郎 美術:中古智

出演:上原謙・高峰三枝子・谷津子・三国連太郎・中北千枝子・伊豆肇・新珠三千代・高杉早苗・石黒達也・塩沢登代路

 

前作「夫婦」から約3ヶ月後に公開された成瀬作品。「夫婦」と同じ上原謙を主役にして、倦怠期の夫婦を描いている。

 

妻役の高峰三枝子がちょっとミスキャスのよう。派手な顔つきは化粧のせいもあるだろうが、とても結婚10年の女房には見えない。「めし」の原節子には、そんな違和感はまったく無かった。美貌を持つ原節子だが、ちゃんと疲れた女房を演じていた。

 

成瀬の演出は、その高峰に、歯についた食べ物のカスを取らせたり、お茶を飲んだあとブクブク口の中を掃除させたり、およそ下品な演出をしている。多分フェミニストであろう成瀬にとっては、とても意外だった。

 

反面、上原謙が浮気する相手、丹阿弥谷津子がとても綺麗だ。子持ちの設定で何度が上原とデートを重ねて、やがて結ばれる。当時の実年齢は29歳、4年後の1957年に同じ俳優の金子信雄と結婚している。

 

この映画の欠点は浮気された高峰の感情が、全く変化しないところ。常に自己中心的で、被害者意識しか持たず、旦那が何故浮気したか考えようともしない。なので題名は「妻」だが、この妻にはまったく見ていて感情移入できない。

 

ラスト近く、高峰は丹阿弥の居所を探し当てて、直接対決となる。高峰は一方的に丹阿弥を非難するだけで丹阿弥は逃げ帰る。そしてラストシークエンス。夫婦それぞれのモノローグが入って、離婚するのかしないのかよく分からないままでエンドマークとなる。

 

とても消化不良の映画だった。