めし

★★★★

1951年(昭26)11月23日公開/モノクロスタンダード/97分/東宝/

製作:藤本真澄  原作:林芙美子  監修:川端康成  

脚本:井手俊郎、田中澄江  監督:成瀬巳喜男  撮影:玉井正夫

音楽:早坂文雄  美術:中古智

出演-原節子・上原謙・島崎雪子・二本柳寛・杉村春子・小林桂樹・杉葉子・風見章子・大泉滉・花井蘭子・中北千枝子・浦辺粂子・田中春男・山村聡・長岡輝子

 

1951年に成瀬は3本の映画を監督している。4月に公開された「銀座化粧」、8月の「舞姫」、そして11月公開のこの「めし」の3本。

 

Wikiによると、林芙美子による長編小説は1951年4月から7月まで『朝日新聞』に連載、同年6月28日の著者の急死に伴い150回の予定を97回で連載終了し、およそ3分の2を書き上げて未完の絶筆となった。そのため、映画化にあたり成瀬や脚本の田中澄江・井手俊郎によって独自の結末が付与されたが、会社から結末が離婚では困ると要望され、妻が夫のもとに戻るような終り方となったようだ。

 

大阪に住む上原謙と原節子の夫婦に、従兄弟の島崎雪子が転がり込む。若い島崎にタジタジの上原を見て、密かに嫉妬する原。ついには東京の実家へと舞い戻ってしまう。やがて出張ついでに上原が訪れ、仲直りした二人は再び大阪行きの電車に乗って戻っていく。

 

夫婦生活は、毎日食べる「めし」のようで変化に乏しく、味気ないときもあるが、「めし」がなくては人間生きてはいけない。少しづつ生活が良くなる事を願って今日も「めし」を食べて生活していこう。そんな事がテーマかと思った。

 

原節子は10月に公開された小津の「麦秋」撮影終了後、すぐにこの作品に取り掛かったと重れる。いつも陽気で笑顔満載の小津の「紀子」像と違って、少し髪を乱れさせ、生活にやつれた主婦を演じている。履いていたスカートを突然脱いでアイロンを掛けるシーンには、ドキリとした。それが昭和26年当時の、貧しさであり、家事での律儀さなのだろう。

 

また島崎が突然出す、鼻血。その鼻血が上原のシャツに付着しているのを見て、原は家を出ることになる。成瀬は他の作品でも原節子に突然の「鼻血」を出す演出をしている。この生身の生理は、小津なら絶対に描かなかったであろうと思われる。

 

原の母を演ずる杉村春子は相変わらず安定感がある。出てくるとホッとする。そして妹・杉葉子の夫役の小林桂樹が素晴らしい。一晩泊めてと図々しく転がり込んできた島崎。杉村が布団を敷こうとすると、「お母さんは朝からずっと働いているんです。布団くらい自分で引かせなさい」とキツイ一言。ずっと実家に世話になっている原の心にも突き刺さる言葉。

 

小林はこの映画の出演時は大映専属だったが、翌1952年に藤本真澄の誘いで東宝と契約。源氏鶏太原作の『三等重役』から、引き続き森繁久彌が主役を演ずる『社長シリーズ』(1956年 - 1971年)の全てに出演。真面目で頑なな秘書役など、平凡で健全な一般庶民を演じて人気を得ていく。

 

以下Wikiより転載

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『めし』は、1951年11月23日公開の日本映画である。東宝製作・配給。監督は成瀬巳喜男、主演は原節子。モノクロ、スタンダード、97分。

林芙美子の未完の絶筆となった同名小説の映画化で、後に『稲妻』『浮雲』『放浪記』などと続く、林原作・成瀬監督による映画作品の第1弾。第25回キネマ旬報ベスト・テン第2位。昭和26年度芸術祭参加作品。

原作は1951年に『朝日新聞』に連載された林芙美子の長編小説であるが、連載中に林が急逝したことにより、未完の絶筆となった。そのため、映画化にあたり成瀬や脚本の田中澄江・井手俊郎によって独自の結末が付与されたが、会社から結末が離婚では困ると要望され、妻が夫のもとに戻るような終り方にした。

当初は千葉泰樹が監督する予定だった。また、村田信三役は伊豆肇に決まっていたが、スケジュールの都合で小林桂樹に交代した。当時大映専属で仕事が減っていた小林は、この作品で東宝に貸し出されて認められたことをきっかけに移籍する。

当時の成瀬は、戦後の『浦島太郎の後裔』(1946年)前後から始まった「スランプ」と目される時期で、作品の質、興行収入共に振るわない低空飛行が続いていた。そうした中で制作されたこの作品は、林のリアリティー溢れる描写を盛り込んだ上で、「倦怠期の夫婦」という暗鬱な題材ながら軽妙な処理で親しみやすい高質のホームドラマに仕上がった。成瀬にとって、この後多くの女性映画を手掛ける嚆矢の作品で、監督としての円熟期を迎える契機となった。

公開後にはこの作品は大きな興行的成功を収め、「成瀬復活」を世間に印象付けた。作品の成功には原作のチョイス、川端康成の監修によるアレンジが奏功したことはもちろんだが、分けても主演の上原、原両名の清潔感溢れる演技の貢献は大きい。原は当時、一連の小津安二郎作品で「永遠の処女」と呼ばれる神話性を持ったスター女優であったが、この作品では市井の所帯やつれした女性を演じ、新境地を開拓している。

ただし、映画独自の結末には林文学のファンなどからは批判を受けることもあり、「この夫婦は別れるべきだった」、「林自身はそのような想定をしていた」などの意見がある。なお林自身がどのような結末を想定していたかは不明である。

また原作にも描かれる大阪の名所が数多く登場し、復興期の街の風景、観光案内としての楽しみ方も出来る作品である。

受賞歴
第25回キネマ旬報ベスト・テン 第2位
第6回毎日映画コンクール 日本映画大賞、監督賞、撮影賞、録音賞、女優演技賞(原節子)
第2回ブルーリボン賞 作品賞、脚本賞(田中澄江)、主演女優賞(原節子)、助演女優賞(杉村春子)