アパッチ砦(Fort Apache)
★★★★★

1948年(昭23)3月9日米国公開/モノクロスタンダード/125分/RKO配給

製作:ジョン・フォード、メリアン・C・クーパー

原作:ジェームズ・ワーナー・ベラ 脚本:フランク・S・ニュージェント 

監督:ジョン・フォード 撮影:アーチー・スタウト 

音楽:リチャード・ヘイグマン 美術:ジェームズ・バセヴィ
出演-ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、シャーリー・テンプル、ワード・ボンド、ジョン・エイガー、ヴィクター・マクラグレン、ペドロ・アルメンダリス、ジョージ・オブライエン、アンナ・リー

 

前作「逃亡者」から八ヶ月後に公開されたフォード監督作。いわゆる「騎兵隊三部作」の一作目。戦前からフォード作品の主役を多く演じてきたヘンリー・フォンダと、ジョン・ウェインの初共演作。

 

流れ的には「コレヒドール戦記」を汲むものだと感じた。第二次世界大戦に従軍したフォードは多くの戦場ドキュメンタリーを撮った。知り合いも多く戦死していっただろう。戦友たちへの勇気を讃え、哀悼の念を捧げたのが「コレヒドール戦記」だった。

 

この「アパッチ砦」では、年代を開拓時代に移し、規律厳しい軍隊での友情や恋愛を盛り込み、国民を守るために死んでいった勇気ある兵士たちへの鎮魂がテーマとなっている。

 

終盤近くのダンスシーンが忘れられない。

構成的にはなくても繋がるのだが、姿勢を正して婦人をエスコートして何列もの隊列を組んで動き回るその姿。翌日にはアパッチ族との戦いでそのほとんどが戦死していく。フォードは、死者たちへのはなむけとしてこのダンスシーンを撮ったような気がする。

 

アパッチとの激戦も忘れがたい。

ウェインの警告を命令違反と判断し、補給隊へと降格させるフォンダ。自分の娘が愛している下士官と共に前線を離脱させたのは、この時点でフォンダは自分の死を覚悟していたのだろう。

 

前線の部隊が全滅し、アパッチの酋長が旗を持ってウェインの居る補給部隊に近づいてくる。その時の立ち上る土煙がまた素晴らしい。風向きなども含めて偶然の産物だろうが、その自然現象をそのまま取り込み、詩的な情景までに昇華させている。

 

フォードはサイレントの時代から、自分のイメージに合う天気待ちなどせず、目まぐるしく変わる天候を作品内に積極的に取り入れて、自分のものにしていった。ロケ隊が次の場所への移動中、雲の感じが素晴らしいと感じたら、即、撮影の準備をさせ、土を盛った前に役者を立たせ、何か口をもぐもぐ動かしてろと指示、カメラは遠くから雲を取り入れた大ロングを狙って撮影。それは見事な、友人の埋葬シーンになったそうだ。

 

ラストシーン。ウェインはフォンダの口癖、「他に質問はあるか?」を受け継ぎ、薄給で命を賭ける兵士たちを讃えて終わっていく。それは大戦で死んでいった名も無い兵士たちへのレクイエムでもあったのだろう。

 

以下Wikiより転載

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『アパッチ砦』(Fort Apache)は、1948年製作のアメリカ映画。ジョン・フォード監督作品。

概要
ジェームズ・ワーナー・ベラの原作をもとに製作された、ジョン・フォードの作品の中で知られている西部劇映画で、『騎兵隊三部作』の第一作。カスター中佐率いる第七騎兵隊の全滅(リトルビッグホーンの戦い)をモデルにしており、後年の三部作の2作『黄色いリボン』、『リオ・グランデの砦』と比較すると、若干毛色の違う作品でもある。
功を焦る現場の実情を知らない司令官の無謀な作戦によって、軍隊が壊滅していくという筋書きは、後の黒澤明監督の『影武者』など、後年の作品に大きな影響を及ぼした。