鶴八鶴次郎

★★★★★

1938年9月29日公開/モノクロ/スタンダード/89分/東宝

製作-森田信雄 原作-川口松太郎 脚色・監督-成瀬巳喜男

撮影-伊藤武夫 装置-久保一雄 音楽-飯田信夫

出演-長谷川一夫・山田五十鈴・藤原鎌足・三島雅夫・大川平八郎・清川玉枝

 

溝口健二との共作が多い川口松太郎が原作。川口はこの作品で第一回直木賞を受けている。

 

大正時代の東京が舞台。鶴八・山田五十鈴、鶴次郎・長谷川一夫演ずる、新内の名コンビがいた。新内とは二人一組で、2挺  の三味線を弾き合わせながら新内節を語って聞かせるもの。二人は若くして名人会に出るほどの実力を持っていた。二人は心の中ではお互いに尊敬し好意を抱き合っていたが、芸への熱意から頻繁に喧嘩する。やがて山田は料亭へ嫁ぎ、長谷川は地方のどさ回りで酒浸りの毎日。2年後、世話役の藤原鎌足や、興行師の三島雅夫の尽力で、再び名人会に出ることとなった。さらに帝劇出演も決まりそうだ。山田は久しぶりの舞台で、自分には新内しかないと決意、離縁してこれからも長谷川とコンビを組みたいと願う。しかし長谷川は、山田に喧嘩を吹っかけまたもや喧嘩別れとなる。ラストシーン。居酒屋で長谷川は藤原を相手に杯を傾ける。山田には離縁してほしくなかったから、わざと喧嘩をしたと心情を語る長谷川。地方のどさ回りの経験からいずれ人気も凋落、惨めな日々を暮らすことになる。俺にとって山田は生涯唯一の惚れた女だ。山田を不幸にはしたくなかった・・・。

 

長谷川一夫、山田五十鈴ともに素晴らしい。丁々発止のやりとりが絶品の面白さ。同じ言葉を繰り返すシーンはどこか小津風でもある。脇の藤原鎌足、三島雅夫もまた素晴らしく活き活きと描かれる。

適材適所にはまった役柄は見ているだけで至福のときだ。

しかしこの作品、キネ旬のベストテンに入っていない。

こんな面白い映画が入ってないとは・・・驚きだ。