自身の年齢が高齢になると、「自分が死んだとき、残された家族への負担が少しでも軽くなるように」と自分が死んだときに備えてできることは準備しておきたいと考えるかたも少なくありません。
実際、年金受給者が亡くなったとき、遺族から「年金を受け取っている人が亡くなったら、死亡届を出さないと年金の不正受給になってしまうのでは?」「残された遺族には何か年金が出るのだろうか」といった相談を受けます。
今回は、年金を受け取っている人が亡くなったときに必要な手続きや、生きているうちに準備できることを解説していきます。
(注意)今回のささやきはボリュームが多いです。頑張ってついてきてください!
年金を受け取っていたかたが死亡したときに必要な手続きは3種類
年金を受け取っていたかたが死亡した場合、年金に関する手続きは大きく3つあります。
知らずにいると不正受給を引き起こす原因にもなりかねませんが、それぞれの手続きの方法を把握しておけば、そういったトラブルを避けられますね。
年金をもらっていたかたが亡くなった後に行う手続きは
- 年金受給権者死亡届の提出
- 未支給年金の請求
- 遺族年金の請求
の3つです。
ただし、「死亡届の提出」と「遺族年金の請求」は、手続きが必要ない場合もあります。
では、それぞれの手続きの詳細を見ていきましょう。
年金受給権者死亡届
年金の受給者が亡くなったときは、亡くなったかたが住んでいた地域の役所に死亡届を提出します。
しかし、役所への死亡届の提出だけでは年金の支給は止まりません。年金事務所に「年金受給権者死亡届」を提出する必要があります。
ただし、日本年金機構に住民票コードか、亡くなったかたのマイナンバーが登録されていれば、年金受給権者死亡届の提出は必要ありません。
住民票コードが登録されているかどうかは、年金振込通知書にある「住民票コード収録状況欄」で確認できます。登録されていると「収録済」と書いてあります。
年金受給権者死亡届の提出期限は短い
年金受給権者死亡届は、提出期限が非常に短いです。国民年金、厚生年金、共済年金でそれぞれ期限が違うため注意しましょう。
国民年金は死亡した日から14日以内
厚生年金と共済年金は死亡日から10日以内
となっています。
忘れると死亡後も年金が支給されてしまいます。期限内に提出できるよう速やかに手続きしましょう。
死亡届の提出が遅れると年金を返さなければならない
年金受給権者死亡届を提出せずに放置すると、不正受給につながる恐れがあります。なぜなら、死亡届が受理されるまでは生きていると見なされ、年金が支給され続けるからです。
不正受給分の返還請求が発生しないように必ず期限内に手続きしましょう。
死亡届の提出に必要なもの
- 亡くなったかたの年金証書(提出が可能な場合)
- 住民票
- 死亡診断書
- 戸籍謄本 など
年金受給権者死亡届と一緒に本人が他界したことを証明できる書類を添付して提出しましょう。
未支給年金の請求
年金受給者が亡くなったとき、そのかたと生計を共にしていた遺族がいれば「未支給年金」の請求ができます。
年金は2か月に1度、偶数月の15日に前月、前々月の分が振り込まれる後払いの形をとっています。なので、年金受給者が亡くなると、どのタイミングで亡くなっても未支給年金は発生します。生計同一者がいるときは、忘れず未支給年金を請求しましょう。
未支給年金を請求できる人
未支給年金は、遺族であれば誰でも受け取れるわけではありません。受け取る権利があるのは、大前提として年金受給者が亡くなったときに生計を同じくしていた人です。
生計同一者が複数いるときは、
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他の3親等内の親族
の順番で請求できます。子供が3人いる、など同じ順位で複数いるときは誰か一人が代表して請求します。
未支給年金の請求に必要なもの
- 未支給年金請求書
- 亡くなったかたの基礎年金番号が分かるもの
- 請求者の預金通帳
- 亡くなった人と請求者の関係が分かる戸籍
- 亡くなったかたと請求者が生計を一つにしていたことが分かる書類(亡くなったかたの住民票除票と請求者の世帯全員の住民票 など)
- 生計同一関係に関する申立書(亡くなったかたと請求者が別世帯のとき)
ちなみに、亡くなったかたのマイナンバーが日本年金機構に登録されていて、かつ請求者のマイナンバーを請求書に書くことで住民票の除票や請求者の世帯全員の住民票を省けます。
提出先は受け取っていた年金の種類で異なる
未支給年金請求書の提出先は、生前に受け取っていた年金の種類によって異なります。亡くなったかたが受け取っていた年金の種類を確認して提出しましょう。
- 老齢基礎年金なら年金事務所
- 共済年金なら担当の共済組合
ちなみに老齢基礎年金の未支給年金請求書は、市役所でも提出できます。
手続きの期限は死亡後5年以内
未支給年金は自動的に遺族に支給されるわけではありません。請求を行うことで受け取れる仕組みになっており、死亡してから5年以内に手続きが必要です。うっかり忘れてしまうと未支給分を受け取れなくなってしまうため、できるだけ早く請求しましょう。
遺族年金の請求
年金を受け取っていたかたが生計維持者だった場合、その人が亡くなると残された家族の生活が苦しくなることもあります。そういった人たちの生活を支えるために、遺族年金という年金があります。
ただし、遺族年金を請求できる人は非常に限られます。
遺族年金の種類
遺族年金には、
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生(共済)年金
の2種類があります。
故人が生計を維持していて国民年金の未納額が一定のラインを越えていなかった場合、18歳以下の子がいれば遺族基礎年金が給付されます。また、亡くなったかたが厚生年金に加入していたら、子どもがいるかどうかにかかわらず遺族厚生年金がもらえます。
遺族基礎年金
- 国民年金の被保険者である間に死亡したとき。
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満のかたで、日本国内に住所を有していたかたが死亡したとき。
- 老齢基礎年金の受給権者であったかたが死亡したとき。
- 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたかたが死亡したとき。
上のいずれかに当てはまるかたが亡くなると、そのかたに生計維持されていた家族に遺族基礎年金が出る場合があります。
遺族基礎年金を受け取れる人
- 18歳以下の子がいる配偶者
- 18歳以下の子(親がいない場合)
(注意)子供が障害等級の1級、2級であれば20歳まで支給されます。
遺族基礎年金は、子供がいなければ対象外ということですね。ちなみに遺族基礎年金をもらっている人が結婚すれば、遺族基礎年金は受給できなくなります。
遺族厚生年金
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき。
- 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき。
- 障害厚生(共済)年金1級・2級を受け取っているかたが、死亡したとき。
- 老齢厚生年金の受給権者であったかたが死亡したとき。
- 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしたかたが死亡したとき。
上のいずれかに当てはまるかたが亡くなったとき、そのかたに生計を維持されていた遺族は遺族厚生年金を請求できます。
遺族厚生年金を請求できる人
- 子(18歳未満)のある妻、子のある55歳以上の夫
- 子(18歳未満)
- 子(18歳未満)のいない妻
- 子(18歳未満)のいない55歳以上の夫
- 55歳以上の父母
- 孫
- 55歳以上の祖父母
請求順位もこの順番となります。遺族基礎年金は子供がいないと受け取れませんでしたが、遺族厚生年金は子供がいなくても請求できます。ちなみに、子供が障害等級1級・2級の場合、20歳まで対象です。
遺族年金の請求に必要なもの
- 遺族年金請求書
- 亡くなったかたの基礎年金番号が分かるもの
- 請求者の機ぞねんきんばんごうが分かるもの
- 請求者の預金通帳
- 亡くなった人と請求者の関係が分かる戸籍
- 死亡診断書
- 亡くなったかたと請求者が生計を一つにしていたことが分かる書類(亡くなったかたの住民票除票と請求者の世帯全員の住民票 など)
- 生計同一関係に関する申立書(亡くなったかたと請求者が別世帯のとき)
ちなみに、亡くなったかたのマイナンバーが日本年金機構に登録されていて、かつ請求者のマイナンバーを請求書に書くことで住民票の除票や請求者の世帯全員の住民票を省けます。
遺族年金の手続きは市役所ではできません
未支給年金請求書の提出先は、生前に受け取っていた年金の種類によって異なります。亡くなったかたが受け取っていた年金の種類を確認して提出しましょう。
- 老齢厚生年金なら年金事務所
- 老齢共済年金なら担当の共済組合
遺族年金の手続きは市役所ではできないのでご注意ください。
生前準備しておくと良いこと
正直、年金の手続きは亡くなってから必要な書類を集めるので、生きているうちにできることは多くありません。
しかし、年金受給者が亡くなったときは必ず亡くなったかたの基礎年金番号が必要となります。
なので、
自分の年金証書(自分の受け取っている年金の種類を確認しておく)
基礎年金番号が分かるもの
自分のマイナンバーが分かるもの(マイナンバーカード)
などを準備しておくと良いでしょう。
年金を受給しているかたは、亡くなったときどんな手続きが必要になるのか把握しておくことが大切です。残された家族が困らないよう、できることはしっかり準備しておきたいですね。