もう一人の伝令 | 老後へGO!

もう一人の伝令

扉座のお芝居

「最後の伝令 菊谷栄物語」を見てきました。

 

初演は2019年で

その時の感想がこちら↓

扉座さんのお芝居は

再演時にはわりと手が入って

印象が変わったりするんですが

それだけではなく

今回は世界情勢も当時とは変わり

今まさに戦争が起きている中で

時代は違っても

出征していく人の想いを描いたこの舞台

見え方も受け取り方も

前回と大きく変わりました。

 

主役の菊谷栄も含めた兵士たちが

とても身近に思えたのです。

 

今までドラマや映画で見てきた出征前夜は

どこか特別に引き立てられていて

それゆえに自分の感覚的に遠く感じたのが

この舞台のそれは

日常の延長線というか

普通の人々がその日が来て旅立っていくという

ある一日を切り取ったごく普通のもので

だからこそ身近に感じて

より深く理解できたような気がします。

 

今回も菊谷栄を演じる有馬自由さんと

記者を演じる草野とおるさんが

あまりにも自然で

1937年の青森にいるようでした。

 

そして仲居を演じていた中原三千代さん

着物での所作が馴染んでいて

年季の入ったプロの仲居にしか見えません。

しかもあの時代の戦争未亡人で

ずっと仲居をやっていたという背景までもが

表情や口調からも透けて見えます。

 

少し重たげな内容なので

笑うようなところはないかなと思っていたんですが

菊谷の友人である島内を演じていた岡森諦さんの

 

「さぞ……暗かろう」

 

の一言に耐えきれず噴き出してしまいました。

(観客の心がひとつになってました笑

さすがの間でした。

 

レビューシーンはかなり華やかで

タップダンスにフレンチカンカン

エノケンの歌によるショーまであって

盛りだくさん!

小さめの劇場だったので

ちょっとぎゅうぎゅう詰めでしたがあせる

大きな舞台だったら

大人数のフレンチカンカン見てみたかったなぁ。

 

タイトルにもなっている伝令は

菊谷の元に劇団仲間の思いを届ける

ダンサーの女の子のことだとは思いますが

壬子には

最後に流れる

伊奈かっぺいさんの柔らかく静かなナレーションこそが

最後の伝令なのではないかと感じられました。

 

 

今の時代

たくさんの方に見てもらいたいお芝居です。

 

来週からは紀伊國屋ホールにて

東京公演も始まりますので

ご興味がおありの方は是非!