こんにちは。
日々の臨床で、高齢の患者さんやご家族から「最近物忘れが増えて不安」「このまま介護が必要な状態になったらどうしよう」といったご相談を受ける機会が増えていませんか?
超高齢社会を迎えた現在、要支援・要介護状態になる患者さんは増加の一途をたどっています。
患者さんが最期まで自分らしく元気に過ごすためには、「介護状態になってから対応する」のではなく、「要介護になる前段階でいかに防ぐか」という予防の視点が極めて重要です。
厚生労働省の調査などによると、要介護状態となる主な原因の割合(パーセンテージ)は以下のようになっています。
・認知症:約18%〜20%(要介護になる原因の第1位)
・脳卒中(脳血管疾患):約16%
・高齢による衰弱(フレイル):約13%
・骨折・転倒:約12%
・関節疾患:約11%
このデータが示す通り、介護状態に陥る最大の原因は「認知症」です。
認知症は一度進行してしまうと、病識の低下やセルフケア継続の難しさから、改善や維持の難易度が大きく上がってしまいます。
しかし、健常な状態と認知症の中間段階である「MCI(軽度認知障害)」の段階であれば話は別です。
MCIの段階では、患者さんご本人の「認知症になりたくない」「仕事を続けたい」という意識が高く、生活習慣の改善や鍼灸治療にも積極的に取り組んでいただけます。
このMCIの段階で適切なアプローチを行うことで、認知症への進行を防ぎ、健常な状態へ回復・維持できる可能性が十分にあります。
東洋医学的にも、認知機能に関わる「心(神明を司る)」や、脳髄を養う「腎」のバランスを整え、頭部(椎骨動脈など)へのアプローチで脳血流を改善することで、認知機能の維持・向上が期待できます。
また、臨床現場で見落としがちなのが「薬剤誘発性認知障害」です。睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬などの長期服用や多剤併用が、認知機能の低下を引き起こすケースがあります。
こうした薬剤を使わなくて済むように、根本原因となる不眠症やうつ病への鍼灸治療が重要です。
これからの時代、単に痛みを抑えるだけでなく、認知症・MCIをはじめとする予防医療や認知機能の維持・向上にまで踏み込める鍼灸師が必要とされていくでしょう。
五枢会代表 武藤由香子