こんにちは。
五枢会の武藤です。
「咳が出る」と聞くと、まず呼吸器の問題を考える方が多いと思います。
もちろん、咳の多くは風邪をはじめとする呼吸器疾患で見られます。
特に咳が長引く場合には、喘息や咳喘息なども考える必要があります。
しかし、咳の原因は呼吸器だけとは限りません。
例えば、逆流性食道炎(胃食道逆流症)でも咳が出ることがあります。
そのため、咳を治療する際に大切なのは、
「咳に効く経穴はどこか?」
と考える前に、
「なぜ、この患者さんは咳をしているのか?」
を見極めることです。
■ 同じ「咳」でも原因が違えば治療も変わる
咳という症状だけを見て治療穴を選ぶと、十分な効果が得られないことがあります。
まず、
・風邪などの呼吸器疾患による咳なのか
・喘息など気道の問題による咳なのか
・逆流性食道炎による咳なのか
原因を考えることが重要です。
問診では、咳が出る時間帯や状況にも注目します。
・風邪の後から咳が続いている
・夜間や早朝に咳が出やすい
・運動や冷気で咳が出る
・食後や横になった時に咳が出る
・胸やけや酸っぱいものが上がってくる感じがある
このような情報が、原因を見極めるヒントになります。
■ 呼吸器症状による咳
風邪や喘息など、呼吸器症状として咳が出ている場合には、私は尺沢・照海などを中心に治療します。
尺沢は肺経の合水穴であり、咳をはじめとする呼吸器症状に用いる重要な経穴です。
また、照海も咽喉部や呼吸器症状に応用できる経穴です。
呼吸器由来の咳では、咳だけを見るのではなく、
・痰の有無
・痰の性状
・呼吸の状態
・咽喉部の違和感
・胸部症状
なども確認しながら治療を組み立てます。
■ 逆流性食道炎による咳
一方、逆流性食道炎(胃食道逆流症)による咳では、呼吸器を中心とした治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。
この場合、私は「降濁作用の低下」ととらえて治療します。
本来、下方へ降りるべきものが十分に降りず、上逆することで、咳などの症状が現れていると考えます。
治療では、
・内関
・公孫
を中心に用います。
内関と公孫は、胸部から心窩部にかけての症状に応用しやすい組み合わせです。
食後や臥位で咳が悪化する場合、胸やけや呑酸などを伴う場合には、呼吸器だけでなく逆流性食道炎の可能性も考える必要があります。
■ 症状ではなく「原因」を治療する
「咳」という一つの症状でも、その背景にある原因は同じではありません。
呼吸器症状による咳であれば、
尺沢・照海などを中心に治療する。
逆流性食道炎による咳であれば、
降濁作用の低下ととらえ、内関・公孫などを中心に治療する。
このように、同じ症状であっても原因によって治療法は変わります。
鍼灸臨床では、
「この症状には、このツボ」
という単純な対応だけでは、治りにくい症例があります。
大切なのは、
「この症状は、どこから来ているのか?」
を考えることです。
症状の原因を見極め、それに合わせて治療を組み立てる。
これが、治療効果を高めるための重要なポイントだと思います。
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五枢会代表
武藤由香子
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