こんにちは。
五枢会の武藤です。

超高齢社会となった現在、健康寿命を延ばすことは医療・介護の大きな課題となっています。
その中で近年特に注目されているのが「フレイル」です。
フレイルは適切な介入によって改善が期待できる状態であり、鍼灸治療が大いに力を発揮できる分野でもあります。
今回はフレイルの概念と鍼灸治療のポイントについて解説します。

【フレイルとは】
フレイル(Frailty)とは、「加齢に伴い心身の活力が低下し、健康な状態と要介護状態の中間にある状態」を指します。
健康な高齢者が年齢を重ねるにつれて筋力や体力、認知機能、社会活動性などが低下し、徐々にフレイルの状態になります。
代表的な評価項目として以下の5つがあります。
・体重減少
・疲れやすい
・筋力低下
・歩行速度の低下
・身体活動量の低下
これらの項目が増えるほど要介護状態へ移行するリスクが高くなります。

【フレイルは改善可能な状態】
フレイルの重要な特徴は「可逆性がある」ということです。
要介護状態になってからでは改善が難しくなることが少なくありませんが、フレイルの段階で適切な介入を行うことで健康な状態へ戻る可能性があります。
そのため早期発見・早期治療が極めて重要です。
高齢者の患者さんで、
・最近疲れやすくなった
・歩く速度が遅くなった
・外出が減った
・筋力が落ちた
・食欲が低下した
などの訴えがある場合は、フレイルを疑う必要があります。

【東洋医学から見たフレイル】
東洋医学的にフレイルの患者さんを診ると、脾虚証と腎虚証が合併していることが非常に多く見られます。
脾は後天の本と呼ばれ、食物から気血を生成する働きを担います。
脾虚になると、
・筋力低下
・易疲労
・食欲不振
・活動量低下
などが出現します。
一方、腎は先天の本であり、生命力や成長・老化を司ります。
腎虚になると、
・足腰の衰え
・歩行能力低下
・骨粗鬆症
・認知機能低下
・聴力低下
などの症状が現れます。
フレイルでは加齢による腎虚を基盤として、さらに脾虚が加わることで全身の活力が低下しているケースが多く見られます。

【鍼灸治療のポイント】
フレイルの患者さんでは局所症状だけでなく、全身状態の改善を目標に治療を組み立てることが重要です。
まずは脾虚・腎虚の改善を基本とします。
脾虚に対しては中脘、地機。脾兪などを活用し、消化吸収機能や気血の産生を高めます。
腎虚に対しては関元、腎兪、湧泉などを用いて生命力や回復力を高めていきます。
さらに変形性股関節症・変形性膝関節症・外反母趾など下肢に疾患がある場合はそれらの治療を行うことで歩行状態の改善が期待できます。

【まとめ】
フレイルは健康な状態と要介護状態の中間に位置する重要な病態です。
しかし、フレイルの段階で適切な介入を行えば改善する可能性があります。
東洋医学的には脾虚証と腎虚証の合併が多く見られ、脾腎を補う治療が重要となります。
今後ますます高齢化が進む中で、フレイルへの対応は鍼灸師に求められる重要な役割の一つになるでしょう。
ぜひ日々の臨床でフレイルの視点を取り入れてみてください。

五枢会
武藤由香子