今回は超高齢社会で患者数が増加している「認知症」についてお伝えします。
認知症は高齢化に伴い急増している疾患の一つです。
厚生労働省の推計では、高齢者の約5人に1人が認知症になる可能性があるとされています。
鍼灸院においても、認知症や軽度認知障害(MCI)の患者さんを診る機会は今後ますます増えていくでしょう。

【認知症とは】
認知症とは、一度正常に発達した認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態をいいます。
主な症状としては、
・物忘れが増える
・同じことを何度も聞く
・日時や場所が分からなくなる
・判断力が低下する
・段取りが悪くなる
・感情のコントロールが難しくなる
などがあります。

認知症の原因としては、
・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
などが知られています。
特にアルツハイマー型認知症は全体の約半数以上を占めるといわれています。

【軽度認知障害(MCI)とは】
軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)は、健常な状態と認知症の中間段階と考えられています。
物忘れなどの認知機能低下は認められるものの、日常生活には大きな支障がない状態です。

具体的には、
・人の名前が出にくい
・約束を忘れることが増える
・仕事の段取りに時間がかかる
・同じ質問を繰り返す
・買い物で買い忘れや買い間違いが増える
などが見られます。

MCIの段階で適切な介入を行うことで、認知症への進行を遅らせたり、改善したりできる可能性があります。
そのため、鍼灸師が関わる意義は非常に大きいと考えています。

【MCIと認知症では治療の難易度が異なる】
現在、私は軽度認知障害の患者さんに対して鍼灸治療を行っています。
臨床経験上、MCIの患者さんは、

「仕事を続けたい」
「認知症になりたくない」
「家族に迷惑をかけたくない」
という思いが強く、治療へのモチベーションが高い傾向があります。
そのため生活習慣の改善やセルフケアにも積極的に取り組まれ、治療効果が得られやすい印象があります。

一方、認知症が進行すると病識が低下することも多く、治療への意欲が乏しくなる傾向があります。
また、生活指導やセルフケアの継続も難しくなるため、治療効果が得られにくくなります。
このことからも、早期発見・早期介入の重要性が分かります。

【認知症に対する鍼灸治療】
認知症やMCIに対する鍼灸治療では、

・脳血流の改善
・神経伝達物質の分泌促進
・睡眠の質の改善
などを目的に治療を行います。

特にアルツハイマー型認知症では、記憶に関与する神経伝達物質であるアセチルコリンの低下が知られています。
鍼刺激は脳血流を改善し、アセチルコリンをはじめとする神経伝達物質の分泌を促進することが報告されています。
臨床では心経・心包経・腎経を中心に治療を行います。

東洋医学的には、
心は「神明」を司る
とされ、精神活動や認知機能と深く関係しています。

また、腎は「脳髄を養う」と考えられており、高齢者の認知機能低下では腎虚を伴うことが少なくありません。

さらに椎骨動脈へのアプローチを行い、海馬を含めた脳循環の改善も図っていきます。

【仕事を継続できるようになった症例】
現在治療中の軽度認知障害の患者さんの中には、
「仕事を続けられるか不安だった」
という方がいらっしゃいました。

認知機能の低下により業務遂行能力が落ち、このままでは退職も考えなければならない状況でした。
しかし鍼灸治療を継続することで認知機能が改善し、現在も仕事を継続できています。

軽度認知障害の段階で介入し、社会参加や就労を維持できるよう支援することは、本人だけでなく家族や社会全体にとっても非常に価値の高いことだと思います。

今後、超高齢社会の進展とともに認知症やMCIの患者さんはさらに増加していきます。
鍼灸師が早期から関わり、認知機能の維持・改善に貢献できる可能性は大きいのではないでしょうか。

【PS】
脳神経鍼灸では、頭痛・めまい・自律神経失調症だけでなく、認知症や軽度認知障害に対する治療法についても学ぶことができます。
超高齢社会で求められる鍼灸師を目指したい方は、ぜひご参加ください。

詳しくは以下のページをご覧下さい。

https://muto-shinkyu.biz/lp/202606cnacu/