肩こりは鍼灸院で最もよく見られる訴えの一つです。
「ただの肩こりだから、局所をほぐせばすぐ良くなる」
もし、そう思っているなら、それは大きな誤解かもしれません。
実は、局所治療だけではまったく改善しない肩こりが存在します。
その背景には、単なる筋緊張ではない深い病証が隠れていることがあります。
■ 重症の脾虚証がある肩こり
重度の脾虚証を持つ患者は、筋肉を支える力そのものが弱くなっています。
筋力低下によって、肩や背部の筋肉が疲弊し、慢性的な重だるさや痛みにつながります。
このタイプの肩こりは、局所の鍼だけでは効果が長続きせず、脾虚証そのものの改善が最優先となります。
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■ 精神疾患が背景にある肩こり
うつ病や不安障害など、精神的な問題を抱える患者の中には、頸椎の可動性が著しく悪化している方が多くいます。
この場合、重要なのは頸椎のローテーション(回旋)を整える治療です。
特に上部頸椎の回旋制限を緩めることで、局所の血流や神経伝達が改善され、肩こりの軽減につながります。
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■ パーキンソン病に伴う肩こり
パーキンソン病の患者では、筋肉のこわばり(筋固縮)により肩こりが慢性化しています。
このようなケースでは、局所取穴だけでなく、遠隔取穴との組み合わせが効果的です。
たとえば、下肢や手の経絡を利用した調整により、肩部の症状が緩和されやすくなります。
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「肩こり=軽症」と思い込むことで、見逃される病態は少なくありません。
見た目は同じ“肩こり”でも、その背後にある体の状態や病証はさまざまです。
肩だけにとらわれず、全身の状態を見極める目を持つこと——それが、卓越した治療家への一歩になるのではないでしょうか。
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