庭の百日紅が咲き出した リビングの正面では、濃桃の花が木々の中から浮かび上がって華やかだ
和室の広縁越しには、白の百日紅。庭の中央には株立ちの桃色の百日紅。 夏の庭は百日紅パレードになる
家
の中から、順番に開いていく束のような花をじっくり眺めるのは心地よいのだが、窓を開け、テラスに足を降ろせば、灼熱地獄が待っている
扉
一つで変わる天国と地獄
酷暑到来
二つの物語のタイトルは、扉の絵で始まる
古めいた女子寮の部屋のドア 中庭の棕櫚の葉陰が、扉
に映っている。(『三月の局騒ぎ』) もう一つのドア
は、重くて音を立てそうなホテルの一室
扉の上には、「天下」と書かれた部屋の名が
扉
は人、一人が入れる程開いていて、正面には年代物の布張りの椅子が見える。(『六月のぶりぶりぎっちょう』)
この作品は、前回、直木賞を受賞された万城目 学さんの『八月の御所グラウンド』に続く、シリーズ・第二弾だ
いや~、もう凄い 何が凄いって、設定が
展開が
伏線回収が
万城目ワールド全開で ……今回もやってくれましたね
……しか出てこない
前回同様、舞台は京都。 大学入学で京都にやって来た彼女
は、「北白川女子寮マンション」に入居する。寮生は「女御(にょご)」と呼ばれ、東西の建物は「棕櫚壺」・「薔薇壺」と呼ばれていた。 「三号室」は「三番局(つぼね)」……平安時代が蘇る。 退寮した先輩の先輩の「キヨ」と呼ばれる女性は、何年間、この寮で暮らしているのか
そのキヨがこっそり書いていた
「猫
の耳の中」というサイトの「清の局日記」を彼女
は見つけた
それは、枕草子に出てくる「むつかしげなるもの」の一節だった
……キヨは、清少納言
……
後にエッセイストとなった彼女は、12月、京都にやって来る
娘が走る女子全国高校駅伝を応援するためだった
……あれっ
前作『十二月の都大路上(かけ)ル』にループしていた
……
『六月のぶりぶりぎっちょう』は、さらに展開が加速する 事件発生は6月2日。ホテルのベッドで寝ていた彼
は、甲冑姿
の武士たちが刀を抜き、槍を掲げて駆け回っている姿を見る
白っぽい寝間着のような着物を着た男達
火矢が突き刺さり炎
が広がる中で、「上様
」と叫ぶ若い男の声
高校で日本史を教える滝川
は、姉妹校との合同研究発表会に出席するため、女性のソフィー・フロイス先生と京都にやって来た
京都の姉妹校のトーキチロー先生、香木店「蘭奢堂」の丹羽さん、居酒屋
「うつけ者」の大将・柴田さん。そこで知り合ったトクさん……と、登場人物が揃えば、六月二日の「本能寺の変」に繋がる
日本史の謎が詰まったこの出来事
「天下」を求めて探し回った挙句、辿り着いたものは
…… 表紙
に描かれている不可思議な階段のように、時空
を超えて、ストーリーは行きつ戻りつ…… 翻弄されっぱなしだった
もうすぐ、パリ五輪が始まり、夏の甲子園大会も始まる。 さあ、ここで「天下」をとるのは誰か
どの高校か
こちらは、ゆっくり楽しもう