ある晩、テレビのリモコンを何気なくいじっていると、懐かしい歌が耳に入ってきた
加山雄三さんの「君といつまでも」だった
87歳となられた今、出演されることはなかったが、番組では、石井竜也さんがカバーして歌っている姿があった
そのワンフレーズ、「~やさしく この僕のしとねに しておくれ~
」 「しとね」と言うその言葉を、今はどれだけの人が理解できるだろうか
もう、今では使われなくなった日本語
があった
「歌は世につれ、世は歌につれ」 ……音楽とともに耳に入ってくる言葉の情報や情景を、今の私は、もうその場で処理しきれなくなっている
リリース前のMVだけで分からなければ、CDに付いている歌詞カードで言葉を確かめることが多い
曲
の第一印象は、まず聴覚・視覚に入ってくる
バラードが一番
だというわけではないのだが、メロディーが先か
詞が先か
音楽の創り手ではないが、メロディーラインが先に飛び込んでくるように感じている
そして、言葉数の多さも気になる
時とともに歌い手もめまぐるしくかわっていく現実がある
『魂の歌が聞こえるか』(真保 裕一)は、そんな新たなスターを見出す物語だ
何気なく送られてきた地方の音楽グループのデモ・テープを聴いた途端、担当者は「これだ
」と、鋭さを放つ原石を見つけた
興奮に震える
彼らを探し求めて、辿り着いた地方都市で出会った彼らには、素顔をさらせない事情があった なかなか明かされない事実と、どうしても彼らの音楽活動
を支えて、世に出したい担当者
条件付きの難しい交渉を経て、正式契約が交わされ、デビュー曲が決まった
「大河が海へそそぐ時まで」と言う曲だった
売れなくなったベテラン歌手と、会社が力を入れて売り出そうとするグループの対比。グループの若者たちの心の奥にある葛藤
と互いを想う気持ち
今の音楽業界にも存在しそうな物語だった
音楽を聴く手段もいろいろ増えた近年。CDが売れなくなる時代がやってきている
音楽の海原へとそそぐ大河の一滴
の中で、記憶に残り、歌い継がれていく曲
に、これからどれだけであえることだろう