半月ほどの苺警備員が終わった
今は、大きな葉を立て、根元からはシュートが伸び出している
このシュートの向きの調整が残るだけ
その隣の畝では、キュウリが採れ始めた。こちらは、日に一度のチェックで終わる
メガサイズにならないよう、いつが食べ頃かを見るだけでいいので
よりは、ずっと楽だ
狭い菜園に欲張って植えた野菜たち。近い場所で育ちながら、種類が違えばその生長も違ってくる
人の世界もよく似ている 『川のほとりに立つ者は』(寺地 はるな)の冒頭に登場する一冊の本
が、『夜の底の川』だ。 彼女が、彼の本棚から抜き取ってきた一冊
突然、病院から彼女に、彼が意識不明の重体だという連絡が入る
付き合っていた彼の部屋を訪れた彼女は驚く
ホワイトボードとそれと向き合うように置かれた机と椅子2脚。ひらがなドリルや大きなマス目のノート。そこに書かれていた文字は、達筆な彼とは違う稚拙な文字だった
語ってはくれなかった謎
の数々だ
意識が戻らない日々の中で、彼女は、彼の友人の存在に気付く
「ぼくは、まだ将来の夢はない。やってみたい仕事はまだわからない。でも、どういう人になりたいかだったらすぐ言える。ぼくは、いっちゃんみたいになりたい。だれかが困っている時に助けてあげられる人になりたい。」 小学校の卒業文集に記したその「いっちゃん」が友人だった
ただ、彼はディスレクシアだった
「いっちゃん」は、母親の弁当屋
を手伝いながら、出会った女性に心惹かれていく
その彼女に手紙を書きたいという思いが、文字を書く練習に繋がっていく
そして、「いっちゃん」も、同じように意識不明の状態になっていた なぜそんなことに
警察も動き出す
やがて、解き明かされていく謎の中に、それぞれの心の中に秘められた哀しさがあった
他人の行動の表面的な部分だけを見て判断していると、いつか大切なことを見誤る時もあるのではないか
「川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない」 水底に沈む石の数は知らなくても、水底の石がそれぞれ違うことを知っている 尖っているものもあれば、滑らかな丸いものもある。 怒り、痛み、慈しみ・・・そして、希望
新型コロナウイルスのパンデミックだった頃を背景にえがかれたこの作品 再読してみて、あの頃の人との繋がりを思い出した