桜満開の今日、朝から友人と地元の史跡巡りのウォーキングに参加した ……3時間歩き通せるか…… 不安だらけのスタートだったが、歩きながら目に入る桜はどれも絵に描いたような美しさだった 地域で暮らしていながら、その地域の歴史や街道、小道など、あまりに知らないことに気付いた 案内してくださった郷土史に詳しい方の説明を聞いては、「そうなんだ」と頭の中に入れていく 話は、時に秀吉や家康の時代に遡る。碑に刻まれた元号には、「天明」の文字も残る 天下普請の築城の際に、各藩から献上された石垣にはそれぞれの藩の刻紋が残る。実際には使われなかった「残念石」の一部が、お寺の参道脇に刻紋を表にして残っていた
長い歳月が経っても、刻み込まれた歴史の一片は現代に残る 石という素材ではなく、木を彫る 木版画を芸術として位置づけた棟方志功をえがいた作品が
『板上に咲く』(原田 マハ)だ。
サブタイトルは、『Beyond Van Gogh』 ゴッホに魅せらて、彼を追い続けた生涯だった
神社の守り札か、聖画のようにゴッホの絵を部屋に飾り、見つめていた毎日 ゴッホの燃えるようなひまわりや太陽や星々は、志功にとっての創作エネルギーになった 「ワも燃える絵、描ぐ。ワも絵描いで燃える」は、口癖だった。
志功は情熱の炎を抱え続ける存在だったが、この物語で燃えているのは、妻・チヤも同じだ この時代にあって、チヤは自立するために看護婦の道選び、一人暮らしを始めた。そこで出会ったのが棟方志功だった。結婚し、一人上京していた彼を追って、チヤは自分に意思で、幼子を連れ上京する。志功が「もう少し、暮らしが安定するまで待っていて欲しい」と言うのを押し切ったのだ ある家族の居候となった一家だが、二人の向かう道はブレない 生活苦から絵の具が買えないとなると、志功は墨で表現できる木版画へと舵を切る やがて、民藝運動の中心となった河井寛次郎や濱田庄司、柳宗悦などと出会い、互いに共鳴しあうのを確認すると、志功の創作意欲は加速していった
太平洋戦争を挟み激動する時代にあっても、黙々と大作を彫り続けた活力が、物語を通して伝わってくる一冊だ
この3月で、青森の「棟方志功記念館」が閉館したという 家族旅行で、東北・北海道に行った時、この記念館にも立ち寄った。 展示されている「二菩薩釈迦十大弟子」などの大作の数々に圧倒された記憶がある 収蔵されている作品は青森県立美術館へと移ったそうだ。 それは、次のステージに進む一つの過程なのかもしれない