早朝の散歩も少ししやすくなった。 頬を撫でる風の気配が違う 涼しさと心地よさを感じさせるものに変わってきた
早朝に歩くのは人だけではない。異常な暑さのこの夏は、犬の散歩をする人とたくさん出会った。 すれ違う犬を目で追ってみるのは、犬好きに共通のことなのだろうか 犬種がいろいろあるように、犬の性格もさまざまだ。 視線が合うと、「おはよう ところであなたはだあれ」とばかりに、気にして近寄ろうとする犬 「ねえねえ、あの人のところに行っていい」と、飼い主を見上げ、確認をとろうとする犬 一瞬、「あれは誰だっけ」と考え込んでしまい、脚が止まる犬 犬にも、犬好きな人間というのは感じられるのか、飼い主の傍らにいる犬に吠えられたことはない
犬や猫のストレートな感情表現や行動に、人は癒やされてきた。
家族はあっても、犬だけが心を許せる相手だった少女 物語にえがかれるのは、そんな背景を持つ少女だった。
『リラの花咲くけものみち』(藤岡 陽子)の主人公・聡里(さとり)は、その複雑な家庭環境を、離れて暮らす祖母に救い出されたのだった。
自分に寄り添ってくれた愛犬とともに、祖母の家で暮らすうちに、気持ちを受け止めてくれた生き物と向き合う獣医師を志すようになる そうして入った北海道の大学でであう生き物や人に支えられ、成長していった
ナナカマド、ハリエンジュ、ラベンダー、クリスマスローズ、白樺、ライラック・・・・・・ 北海道の大自然を彩る植物が、物語の各章に登場し、花言葉や植生が何気なく会話の中で語られる これも、このストーリーを支える大きな背景になっている
冬の間、雪の下で静かに春を待つ宿根草のクリスマスローズ。寒さに耐える強さをもったその花に、主人公の「今」が重なる
どんな場所でも丈夫に育ち、枝には棘が葉や樹皮、果実には毒のあるハリエンジュ。「外敵が自分や自分の大切な人たちを傷つけようとしたら、毒をもって制することができるような人間になりたい」と言い切った友人 互いに刺激を受けながら、挫折を経験して成長していく姿が伝わってくる 大自然、生き物全ての命の尊さに自分の世界も拡がっていくように思えた一冊だった
我が家の百日紅は、例年、咲き始めるのが遅い。 今年は空に向かって伸び上がるように花盛りを迎えている。 「雄弁」という花言葉のように、暑かった夏を主張している。