我が家にしては珍しく、朝からテレビがつけっぱなしになってしまったWBCの決勝戦 握った拳に力が入ってしまい、「心臓に悪いわ」と言いながら、なかなかテレビの前から離れられなかった 急ぎ足で用事を済ませてはテレビの前へ・・・を、何回繰り返したことだろう 終わってみれば、日本での試合も含めて、息を詰めて見守る試合ばかりだったような気がする
マイアミでの準決勝のメキシコ戦は、息詰まるような展開だった 1点を追う9回裏、ツーベースヒットを打った大谷選手が、2塁ベース上で見せたあのポーズは忘れられない ヘルメットを投げ捨て、雄叫びをあげ ベンチを鼓舞した あの仕草にチームメイトはどれだけ励まされたことだろうか そして、決勝戦の9回のマウンドにあがった彼が、ダブルプレーの後、マイク・トラウトと向かい合った時にはベンチのみんなの姿が目に入っていた ベンチでは皆が総立ちになり、前のめりで、いつ飛びだしてもいい体勢をとっていた それは、大谷選手がプレッシャーの中で強く思っていた「優勝」することへの大きな後押しになったのではないだろうか
先制点を取られる試合が多かったように思えた今大会 「逆転してみせる」という意気込みは、チームの結束力が強ければ強いほど、実現への大きなエネルギーになる
仲間の支えが、不可能に思えたものを逆転させる大きな原動力となった小説がある。 『逆転のバラッド』(宇佐美 まこと)だ
雨が激しく降る夜、若い銀行員が橋から転落してなくなった。 そこでうまれた疑問を、単身赴任中の新聞記者と彼が通う銭湯の関係者たちが追っていくというストーリーだ
やがて、浮きぼりにされてきたのは、裏社会の権力と金の問題だった。 金のない中高年の男たちが、真実は何か誠意とは何か それぞれの立場で力を合わせ、謎を解き明かしていくのだった
ラストシーン、仲間が残したかすかな記憶を手がかりに向かったのは、人の住まなくなった山奥の村。そこに咲く見事な桜の古木を見上げて、残りの仲間は甘いものを口に含んだような幸福を感じたのだった
今、桜が満開だ ベンチから飛び出してきた選手たちのように駆け足の春がやってきている