観光地、京都 観光客が見上げているのは、唯一残る平安京の遺構・東寺の五重塔か
観光ガイドさんの小旗の前に並んだ人の列には、新撰組の隊服を着た男性や外国人観光客の姿もある。かと思うと、大阪のくいだおれ人形そっくりの人間(足元には太鼓もある)、鹿の姿も鎧兜の武将の姿もある 中央で写真を撮っているのは修学旅行生たちだ
そんな表紙からワクワク感がしてならないのが、『うえから京都』(篠 友子)だ
読み進めていくうちに、このワクワク感がかつて読んだ本とよく似ているのに気づいた 万城目 学さんの『プリンセス・トヨトミ』や『鴨川ホルモー』の匂いだった 独特の世界観があって(こちらの方が、より現実的だが)、映像化したらおもしろいだろうなあと思えるものだった。
東京に都が移ってから、政治・経済の中心もすべて東京に移ってしまった もう一度、京都に都を戻し日本の中心となっていこうと画策する京都府知事の部屋から物語は始まる が、京都だけでは東京に対抗できない大阪・兵庫を含めた京阪神のトップがなんとか協力してやらなければと そこで、交渉役として呼ばれたのは、高知県職員の坂本龍子だった
「都道府県あるある」でよく取り上げられるのが、「隣の県には負けていない」というマウントの取り合いだ
いつも、歴史を盾に上から目線の京都と、現実主義で口の悪い大阪。両者のバランスを窺う兵庫。笑いの止まらない「あるある」小説 上から目線の京都がいかにして大阪・兵庫とタッグを組んで首都分散構想を取り上げてもらうことができるのか 滋賀や奈良も加わり、互いの思惑がしのぎを削る エピローグまで一気に駆け抜けて読み終えた一冊だった
年明けの新聞を読んでいたら、文化庁の京都移転の特集を見つけた 今年3月末、京都での業務が開始される 小説と現実の近さを感じた