新たな年が始まり・・・あっという間に時が経つ
・・・いつまでもお正月気分ではいられない・・・と思うものの、寒さも相まって動きは鈍い ボケーッと部屋に飾ってあるお正月仕様の小物に、ついつい目がいく
羽子板、手鞠、凧・・・かつて、お正月の風景にあっただろう物が、今ではインテリア小物でしかなくなっている かつては、近所の子どもたちがカイトを手にしていたのを見ていた。が、それは一昔前の話になってしまった
阿波名物の「大凧揚げ」のプロローグから物語は始まる
速い潮流と遅い潮流がぶつかり渦を巻く、鳴門の渦潮。 それを見て育ち、父が創業した会社の50周年事業として何をするか・・・そうだ、大きな凧を揚げよう 鳴門の空にとどまり、視線を集めつつも存在を示すもの それが、陶板画であり、陶板画の美術館だった
『われ去りしとも美は朽ちず』(玉岡 かおる)を読み始めてすぐわかった
「実話に基づく小説」とあったが、ちょうど、10年前に行った美術館だった
広大な敷地に、睡蓮の池があり、モネが描いたように朱色の太鼓橋が架かっていた。そして、圧巻は、そのまままるごと環境展示されたシスティーナ礼拝堂だった
ミケランジェロの天井の陶板複製画も首が痛くなるほど見上げていた
小説でえがかれるのは、系列の陶板会社が大きなサイズの陶板を試行錯誤しながら完成させ、名画陶板を作り上げていく過程に至る苦悩であり、世界の名画の著交渉交渉の問題だった
途方もない歳月の中で、開館を見届けることが叶わなかった関係者の息づかいもえがかれる
ポンペイの遺跡からは、きれいな形でその当時の物が発掘された。
そんなふうに、三千年後も文化遺産の「今」を残したい そのためには、絵画の「今」をそのまま陶板に写し取り、後世に伝えたいという熱情が渦巻いていた
エル・グレコの祭壇衝立復元、「ヴィーナスの誕生」、「モナ・リザ」、「最後の晩餐」etc.・・・歴史に残る絵画の数々を集めてきたストーリーは、お正月のお重に詰められたおせち料理のように贅沢さと手間を感じるものだった(?)
広大な敷地の美術館を堪能したくて旅程が押してしまい、帰りのフェリーの出航ギリギリの時間になって、冷や汗をかいたことも旅の思い出のひとつだ