悲しい奇跡。 | ブナの気楽な人生のすすめ。

ブナの気楽な人生のすすめ。

こころのせかいのイラストレーター。
今日よりほんのちょっとだけ、気楽な明日を迎えられるようなお話をお伝えしてみます。


1月30日火曜日、
13時過ぎに午前診察終わって帰ってきて

お母さんとテレビ電話して
ばあちゃんの様子見て大泣きして
何を思ったかこれが最期かもしれんと思って
そのテレビ電話を画面録画しておいた


録画時間の合計時間が
大好きなおばちゃんの誕生日やった




ほんで1時間ほどお昼ごはん食べたりゆっくり休んでて
明日午前診察だけやし昼から日帰りでもいいから
ばあちゃんち行こ!ばあちゃんに会いたい!
でも念のためすぐ出れる準備しとこ思って
ゴソゴソしてたらお母さんからテレビ電話で
血圧下がってきてる、足にチアノーゼ出始めてる
早かったら夕方かもって連絡あって血の気引いた。
先生に電話したら行ってきーって言うてくれた。
14時45分に出発。


急いで車走らせた。1時間半。
どうしよう、間に合わへんかったらどうしよう
でも待って、もう上から見てるんやろ?
おばちゃんと一緒に、みんなで見てくれてんねやろ?
私が向かってるの知っててくれてるやろ?
私のこと家着くまで守っててや
ばあちゃん、私あたま撫でてほしい
ばあちゃん、私のほっぺた包んでほしい
ばあちゃん、ばあちゃん、ばあちゃん
なんで私こんなにもばあちゃん大好きやねんやろ


私を守るようにダンプカー
目の前に999
358と何台もすれ違う
道中でっかい龍のかたちの雲3つ
真ん中は特に立派な龍
これ、絶対おばちゃんとじいちゃんとばあちゃんや


とにかく奇跡を信じた。


16時半前にばあちゃんちついて
ばあちゃんに飛びついた。
顎で呼吸し始めてた
顔、からだの左側下にして寝てた
右ほほに自分の顔すり寄せたらもうほっぺ冷たくなってた
足先も冷たくなってきてた
指先も冷たくなってきてた
いよいよやった。逃げられんかった。
もうその瞬間を迎えるしかなかった。

泣きながらばあちゃんのそばにいた。
そしたら1回だけばあちゃんの目が開いた。
筋肉の痙攣やって人は言うけど
私はばあちゃんが私の顔見てくれたと思った。
涙でボロボロの顔やったから心配させたくなくて

「ばあちゃん見て、私笑えるで」

って泣きながら笑った。
もっかい目あけて欲しかった。


「ばあちゃん、もしお空に帰ったら合図してよ」
「おばちゃんに会えたら合図してよ」
「そうやなぁ電気、パッパッてさせて」


って声かけた。


とりあえず晩ごはん食べた(こんなときでもご飯…)
それでもなお、ばあちゃんのうめく声は聞こえる
まだしんどいんかな、つらいな、ばあちゃん
急いで風呂入った(こんなときでも風呂…)
19時過ぎた。
ばあちゃんはもう、私が着いた頃より顎で呼吸してた。
まさにいつ呼吸止まってもおかしくなかった。
できるだけ声かけた。


「ばあちゃん、また家族になろな」
「ばあちゃん、私またばあちゃんとおばちゃんと
お母さんと兄ちゃんとお父さんで家族になりたいわ。
絶対なろうな」
「ばあちゃん、私が死ぬときは、ばあちゃんと
おばちゃんとお母さんと兄ちゃんと
お父さんで迎えに来てな、さみしいから」



19時半すぎくらいにおばの旦那さん(おじちゃん)
従姉妹送っていってばあちゃんち戻ってきた
おじちゃん戻ってきたら一段と呼吸少なくなった
そのあと5人でばあちゃん囲んで静かに見てた


そのあと20時09分くらいやったと思う
私のお父さんが来てくれて
「こっちこっち!早く!」って手招きして
お父さんがばあちゃんまで駆け寄って
「あぁ、お義母さん」って声かけたら
ばあちゃん急に顎で呼吸すんのやめて
口動かし始めて、なんか喋ってた
ほんまに口がパクパクパク…って動いた


そのあと呼吸止まった。
動かんようになった。


おばちゃんが聴診器あてた(看護師)

「もう心臓止まっとるわ」


みんな泣いた。

「ばあちゃんお疲れさま」って大泣きしながら声かけた
「大好きやで」って大泣きしながら声かけた
「やっぱりいやや、いかんといて」って
大泣きしながら声かけた


お父さんも泣いてた。




そこからはバタバタすぎた。

兄ちゃんは悲しむ暇もなく
病院やら葬儀場やら区長やらにに電話して

おばちゃん(看護師)とお母さんはエンゼルケア
髪の毛洗って身体中キレイにして着物着せて

私はばあちゃんの化粧担当
下地塗ってファンデーションつけて
眉毛かいてアイラインひいて
最後はばあちゃんに譲ったYSLの真っ赤な紅

「ばあちゃん死んだらこれで紅ひいてや」

ばあちゃん、約束守ったよ。


化粧、めっちゃいろんな人が褒めてくれたよ。
かわいらしい化粧してもろて、って
ほんまにかわいらしい、って
病で床に伏してるように思えへん、若いなぁって

あんまり可愛いし死んでるように見えへんし
今にも起きて喋りだしそうな顔やった。




21時半過ぎに
訪問医の先生と訪問看護師の人も来てくれて
死亡確認も終わった


「こんな大勢の家族に看取ってもらえるなんて
なかなか無いことですよ」

「幸せですね」


私もそう思う。


お風呂入っといたけどなんかもう暑くて汗びっしょりで
あかん着替えようと思ってじいちゃんの部屋で
電気つけてひとりで着替えてたら

一回電気パッてなった。

パッていうか、フワァ、みたいな消えかけるみたいな。



「ばあちゃん、もしお空に帰ったら合図してよ」
「おばちゃんに会えたら合図してよ」
「そうやなぁ電気、パッパッてさせて」



ウソ、まじで?

ばあちゃん。

まじで合図くれた。




ほんでそのあとは葬儀屋の人が来てくれて
ばあちゃん寝かせてくれた
その布団が私好みの勿忘草色で、
私好みの銀のラメラメがちりばめてあって
私の大好きな蝶々がたくさん舞ってた
こんなことってあるんや


そのあとは兄ちゃんとおばちゃんと私で葬儀の相談
葬儀屋の人帰ったらもう日付跨いでた。

しばらくばあちゃんのそばで寝転んでた。


夜は私がばあちゃんのベッドで寝た。
めっちゃ変な感じした。
さっきまでばあちゃん寝てたのに。
ずっとずっと何年もばあちゃんここで寝てたのに。
もうおらんねや…

そのあとめちゃくちゃノートに書いた。書きなぐった。


夢でいいから会いたい。
夢に出てきてよ、ばあちゃん、って思いながら寝た。



夢には出てきてくれへんかった。


朝起きたらばあちゃん死んだの夢じゃなかった。