そこに、そっと店のドアが開いた。


聞こえてきたのは、待ち焦がれたあの人がオレを呼ぶ声。




「あぁ...!相葉さん!」

「さくらいさん...?」


と、アタマを上げればドアの方を振り向く間もなく駆け寄ってきて、オレの顔を覗き込む。



「大丈夫ですか!?具合悪い??」


「あ...だいじょうぶ、デス」

「ホントに?...ごめん、連絡できなくて、スマホの充電なくなっちゃって、今日は出先から直帰だったんだけど、こんな時に限って充電器も会社に忘れてきちゃって、でも取りに戻るより向かった方がいいなって思ったら、電車が止まっててマジ勘弁してよって...」



息もつかぬ勢いでオレに一生懸命言い訳をしてくれてる。

それをうんうんと聞いていたら、ハタ、と。



「あぁ、俺何言ってんだ」



眉をハの字に下げて、優しく俺をみつめて



「相葉さん、ごめん、おまたせ」


って。


だからオレも



「うん、まってました、ずっと」


って、素直に言えた。







「翔さん、お疲れ様です。何飲みますか?」


潤さんから促されて、櫻井さんはオレの飲み物を見る。


「相葉さんは何飲んでるんですか......あっ!!!」


「え、なんですか?急に大きな声出して」

「ちょっと!コレ!?コレ飲まされてんの!?」



コレ、とは、あの赤いジュース。



「あ、ハイ、潤さんに『やけ酒するならこれ飲め』って」

「は?やけ酒!?相葉さん、なんかヤな事あったんですか?」

「嫌な事っていうか...」

「うん、俺でよかったら話聞くから、こんなの飲まないでよ」

「あー...ハイ、でもオレも、あんまいい飲み方してなかったから、コレ出してもらえて助かったというか」



と、飲みすぎなオレを潤さんが気遣ってくれたことを伝えたら。




「マジかよ...なぁ、潤、どういうつもりだよ」

「え?だって、翔さん来ないし、相葉さんがなんか辛そうだったから、気分を変えてあげたいなって思って」

「だからって、コレはないだろ、え、まさか、潤がそういうつもりで?」

「それはどうでしょう。相葉さんがその気なら、僕は大歓迎ですから」



2人がいつの間にか『翔さん』『潤』と親しげに呼び合っていて、オレのわからない話で揉めている。



「あのー...お二人は、なんのお話を...」

「相葉さん!潤はいいやつだけど、こんなものに惑わされてってことだったら、俺、全力で阻止するからね」

「えっと、こんなものって、このジュースがなんなんですか...?」