「潤さーん、同じのお代わりくださーい」


「相葉さん、ちょっとペース早いですよ。飲むのいっかいおやすみして、なんか食べません?」

「んー...そうだね、食べとこうかな。このままじゃ持たないかも」

「どうしたんすか?珍しく結構飲んじゃって。櫻井さんが一緒ならまだしも、ひとりでって」

「あは、そうそう、そうなの、櫻井さんが一緒ならよかったんだけどねぇ」




そう。

まだ、櫻井さんは来ない。
連絡も、なし。


店のマスター潤さんは、苦笑いしながらフードメニューを渡してくれた。


それを受け取っても、何か選ぶ気持ちになれず、結局



「はあぁぁぁ...」



と、ため息をついてしまうのだ。



「めずらしいなぁ、相葉さんがそんな感じ。話、聞きますよ?」

「話すほどのハナシもないんだよね、これが」



と、空になったグラスと交換でくれたドリンクは綺麗な赤い色。



「これ、なに?」

「飲みすぎの人に出すジュース」

「ちょっとぉ、オレまだ飲めるよー?」

「だぁめ。そんなヤケ酒みたいにうちのビール飲んでほしくないから」



と、さすがの、潤さん。
ヤケ酒、か。




「...うん、だよね、ごめん、潤さん」

「いいえ、わかっていただけたら。だかららほら、こっちの赤いの飲んで」

「はーい」




ひとくち含めば程よい酸味と甘みが広がって、すごくおいしい。
おもわずグビグビ飲み干してしまう。



「おお、いい飲みっぷり」

「これうまいね。もう一杯ほしいかも」

「ハイハイ、いくらでもお出ししますよ」



そういって、またキレイな赤いジュースを受け取って、ふと。



「櫻井さんみたいだな...」


と、おもわず零れてしまった。



「まるほどね...待ち人は翔さんか」

「あー...うん、そう。待ち人来らず、です。えへへ」

「無理して笑わなくていいですよ。あの人も忙しいからねぇ、今日は...どうかな」

「...来てくれるって言ってたんだけどなぁ...」


と、赤いジュースをまた口に含んであの人の、昼間の笑顔を思い出した。
甘さより、酸っぱさを強く感じて、切なくなって。

また深く


「はぁぁあーあああぁぁ....」


と、悲壮感漂う溜息にならないよう、わざと大きめな声でごまかした。