ゆっくりしようと思っていた昼休み。
櫻井さんと一緒に過ごしたらあっという間だった。
読んでいる本の話、よく聞く音楽。
好きな服のブランドが同じだったのはめちゃくちゃ嬉しかった。
店を出て、なんとなく歩きながらおしゃべりは止まらない。
「いつも仕事帰りだけど以前あの店で相葉さんに会ったとき、私服だったことあったじゃないすか。あんとき、すっげ―おしゃれでめちゃくちゃカッコイイなって思ってました」
「いやいや、櫻井さんこそ、実はものすごいいい時計されてますよね、大人のたしなみって感じで憧れですよ」
「あはは、なんか、相葉さんにそう言ってもらえるとすげぇ嬉しいな」
「オレも、櫻井さんみたいなひとにカッコイイだなんて言ってもらえて、調子乗っちゃいますよ?」
「その言葉、そのまんまお返ししますよ?」
そうしてお互い褒め合ってなんだかおかしくて。
目を合わせて笑いあえるのが嬉しかった。
じゃあ、また、と櫻井さんは駅へ、オレは会社へと向かって別れたところで。
「あいばさーん!」
「!?」
櫻井さんが大きな声で叫ぶからびっくりして振り返れば
「あとで連絡しまーす!」
って、手を振って、それだけ言って駆け足で地下鉄への階段を降りて行ってしまった。
返事もさせてもらえずに行ってしまった櫻井さん。
姿が見えなくなった地下鉄の入口が切なく感じて。
もうこの気持ちは、無視できない。
「...ねぇ、しょーちゃん?」
【なんだ?】
「オレさ、櫻井さんのこと、好きだ」
【そっか】
「うん、なんか、こういうのって、久しぶりに...」
【久しぶりに?】
「ちょっといい、かも」
【雅紀がいい感じだと俺も幸せだ!】
どこからともなくしょーちゃんの気配がしたと思えば、ぎゅっと抱きつかれる。嬉しいって気持ちがぐいぐい入ってきて、オレは顔が緩む。傍から見ればただ独り言を言いながらニヤニヤしてる怪しいオトコだとは思うよ。だってしょーちゃんの姿はオレ以外には見えないから。でもそんなことより、しょーちゃんが喜んでくれることがオレは嬉しかった。
【恋を見つけてくれてありがとな!雅紀!】
「うん」
気持ちの向かう先が決まったらなんだかスッキリして。
午後も仕事頑張ろうって思えた。
また、左肩がふんわりとあったかくなった。