せっかくの休日なのに朝からおかしなことに巻き込まれた。
なんて。
『せっかく』なんて言ったところで、どうせ暇な週末。予定もなく、適当に家事をして、時には昼間から飲み始めるような。
だから、暇つぶしにしてはちょっとファンタジーすぎるけど、この不思議な展開に乗ってみる気持ちになった。
するとまず天使くんはオレに『俺の名前をつけろ』と言った。
「は?なんで?」
「契約の儀式だ。俺は人間から名を貰う。その名を受け入れた時から、名をつけた人間は俺の主となる。そして俺はその人間の下僕(しもべ)だ」
「いやいや、下僕はないだろ、なんかもっと言い方ないの?」
「俺たち天使にとってはまったく当たり前なのに、これまで主となった人間たちは『俺は下僕だ』と伝えたら、みんなそう言った『それはないよ』って」
「まぁ、そう簡単にその設定を受け入れるヤツはいないと思うよ」
そもそも、天使だってハナシも簡単に受け入れる人間もそうそう多くはないだろうし。
……そう考えると、この子は天使との契約を受け入れるだろう人物をちゃんと選んでるってことか。
「じゃあ、下僕がイヤなら盟友。それなら受け入れやすいらしいからな」
「それも堅苦しいなぁ…まぁいいけど。しかし、名前ねぇ…」
コーヒーを飲みながら、ぼんやり考えてみる。
名前、か。
これまで飼い犬に名前をつけたことくらいしかない。
この名づけが契約の儀式だというなら、思いつきでつけるわけにもいかないよな、なんて考えていたら。
「そんなに悩まなくていいよ。俺とお前がお互いを認識できればなんでもいいんだ」
「なんでもって...そうはいっても名前って、大事だとおもうんだけどなぁ」
「それなら、お前の好きなものにしろ。今までも、主が好きなアニメキャラとかアイドルの名前なんかを付けてもらってた。俺の名を呼ぶことが嬉しそうで、俺もその名に込められた想いを受け取ることができて、すげぇ幸せだったぞ」
好きなアイドルかぁ、特にいないけど...
と、思いを馳せた先に、ある人が思い浮かんだ。