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頭をガツンと殴られたような衝撃。
オイラが翔くんを、嫌う…?
そんなふうに思わせてしまっていたなんて、最悪だ。
思わず身体が動く。
本能とはこれの事だ。
オイラのものだ、と考える間もなく抱きしめる。
「翔くん!」
「……さとしくん……っ!」
こどもじみた自分の態度を酷く後悔した。
その気持ちのままに、翔くんを抱きしめる。
絶対離さない、と。
ここまでの態度の懺悔を込めて。
「翔くん、ごめん、本当にごめん」
「なんで智くんがあやまるの」
「翔くんを、不安にさせちまって……」
「……俺、智くんの迷惑になっちゃったんじゃないかと思って……」
「そんなんじゃねぇ、あんな態度とって本当にかっこわりぃし、翔くんを傷つけちまって……オイラこそ、翔くんに嫌われたら生きていけねぇよ」
「智くんを嫌うなんて、ありえないよ!」
翔くんは、心底心外だと言わんばかりの勢いで否定してくれた。
その気持ちに勇気づけられる。
「その言葉、そのまんま返すぞ」
きゅっと、想いを乗せて抱きしめる。
いつの間にか翔くんの身体の力が抜けていた。
預けられた体重の重みが心地いい。
肩に乗る翔くんの頭、ふわふわの髪。
頬ずりをすれば、ふふ、と笑みが漏れるのが可愛い。
信頼されてる。
甘えてくれてる。
これって、こんなに幸せなんだ……
「智くん…なんで、なんか……そんな感じ、に、なっちゃったの?」
幸せを噛み締めていたら、翔くんからおずおずと問われた。
抱きしめた温もりに励まされて、重い口を開く。
「相葉ちゃんと翔くんがすげぇ仲良くて、いいなぁって」
「え?相葉くん?」
そりゃそうだよな。
なにがあったって、翔くんにとっては何にもない。
友達と楽しく過ごしていただけのこと。
情けなくて言いたくないけど、カッコつける方がかっこ悪い。
素直に翔くんの事が好きだってことが伝えたい。
伝わればいい。
「そ。なんか、距離も近けぇし、やたら翔くん笑ってて、楽しそうで、羨ましくて……オイラが見たことないようなカオ見せてて…相葉ちゃんに嫉妬、した。んで、翔くんには…八つ当たり。ごめん。」
ごめんと伝えて、またぎゅっとする。
こうして、触れている場所から気持ちが直接流れていけばいいのに。