今日は、なぜ急に家で待つように言われたのか、その謎を酒の肴に飲んでいたが、いつの間にかソファーでウトウトしてしまっていた。



「しょーちゃん、しょーちゃん、ただいま」


「・・・ん」

「先に寝ちゃだめだよって言ったのに」

「あいばくんが・・・遅いから・・・」

「フフ、そっか、ごめんね、待ちくたびれちゃったかな」

「ん、まってた」




甘えたように言えば、あたたかな感触が俺の肩先に触れた。

その違和感に意識が急浮上。




「・・・アレ?・・・え、なんで!?」


いつの間にか風呂上りに来ていたシャツが脱がされ、素肌の肩から鎖骨へ、相葉くんの舌が這う。



「え、ちょ・・んっ・・・と、あいばくん・・・」

「可愛い寝顔を犯すのもいいけど、やっぱりしょーちゃんの反応欲しいから」



と、えらく物騒なことを言ってくれる。


「犯すって・・・何言ってんだよ・・・ぅうわっ!ちょ!相葉くん!!」

「あ、ごめん、怖がらないで?ただ、オレ的にはそれくらいの心意気なんだってこと」



と真顔で言いつつ、俺を肩へ担ぎ上げて寝室へ向かう。
振り落とされないようにしがみつくしかない俺は、せめての反論。


「いやいや、こえーって!この態勢もその心意気も!!」

「そ?心配しないでよ、最高に気持ち良くしてあげるから」

「そりゃ望むところではあるけども・・・って、そうじゃなくて!なぁ!相葉くん!?」

「なぁに?」

「なぁにじゃねーわ!」


と、俺の抵抗をまったく意に介さず、なんと歩きながら俺が履いているスウェットのズボンを下着ごと脱がされる。


「おい、マジでなんなんだよ!」

「今日はなんと言われようと、しょーちゃんには『わかってもらう』から」

「なにを!」



ドサリとベッドに降ろされ、



「オレが、どれだけしょーちゃんの事を欲しいと思ってるか」

「・・・俺が、欲しい?」

「ほらぁ、もう、やっぱりそうじゃん。わかってないよアナタ」

「いやいや、こんな仕打ちされて何をわかれと?」

「オレの、愛・・・は、受け取ってもらえないのは分かった。だから、逆に、奪うんだよ、しょーちゃんの全部」

「俺の、全部?」

「うん。全部」



これまで乱暴に扱われたことは一度もなかった。

常に俺の様子を伺い、時に攻め、時に引き、俺が快感に溺れていることが、彼の満足なのだと思っていた。


与える側の充足感、とでもいうような。

その彼が、「奪う」と。



一体何をするというんだ、という、戸惑いと、絶対に俺を傷つけることはないという信頼が、なぜか俺を高揚させる。



「フフ、しょーちゃん、目が潤んで色っぽいね」

「こんな扱いされて怖ぇこと言われたら涙も出るわ!」

「ごめんね、でも」



と、次の言葉を継がず、代わりとばかりに強引に始まるキス。舌をねじ込まれ、口内で暴れる相葉くんの感触に早まる鼓動。息が吸えないせいでもあるし、異常な高揚感のせいでもあり。

おもわず相葉くんに腕を回してしがみつくようにカラダを引き寄せてしまう。




「んっ・・・ハァ、ん、あい、ば、くん・・・」

「しょ、ちゃ・・・ん、かわい・・・」



相葉くんは俺の背を片手で支えながら、カラダを起こし、俺がさっきまで身に着けていたスウェットのズボンを手繰り寄せ、俺から身体を離したかと思えば、驚くことに俺の腕を縛り上げた。ご丁寧にベッドのフレームに括りつけてくれたもんだから、抵抗のしようがない。



「まてまてまて!これは、無理だろ」


およそ力加減のない今の相葉くんには俺の抵抗は敵わない。


だからせめて、何が相葉くんをこんな行動に走らせているのかを確認したかった。

なのに。



「え?」

「え、じゃねーって。・・・なぁ、相葉くん、俺、こんなことされるほど、なんか怒らせるようなことした?」

「・・・」

「相葉くん?」


相葉くんは呆れたような、悲しそうな、複雑な表情で俺を見て、軽くため息をついた。